「1周」にこそロマンがある|ぐるっと巡る旅の魅力
一周するって、なんでこんなに気持ちいいんだろう?

サイクリングを少し続けていると、「どこかをぐるっと一周してみたいな」という思いが自然と湧いてきます。
それは、ただの移動とは違う“達成感のある旅”への第一歩。
行ったことのない土地をぐるりと巡って、また同じ場所に戻ってくる。これだけでひとつの物語が完結するような満足感があります。スタートとゴールが同じだからこそ安心できるし、最後まで走りきった時の「やりきった感」もひとしおです。
最近では「◯◯イチ」と呼ばれる一周コースが全国に広がっていて、たとえば琵琶湖なら「ビワイチ」、霞ヶ浦は「カスイチ」、淡路島なら「アワイチ」など、気軽に会話できるネーミングも人気の理由です。
距離もスタイルも自由自在。誰でも“一周旅”の主役になれる
一周といっても、16kmほどの諏訪湖から、1000kmを超える四国一周までさまざま。
初心者向けの平坦ルートもあれば、ヒルクライム要素のあるチャレンジルートもあり、レベルや好みに合わせて自由に選べます。
さらに最近では「サイクルボール」のような一周達成型のイベントや、国が認定する「ナショナルサイクルルート」などもあり、記録や証が残る楽しさも加わりました。各地でローカルグルメや温泉に出会えるのも、一周旅ならではの特権です。
次に走る「◯◯イチ」は、どこにする?
この特集では、日本各地の魅力的な一周サイクリングルートを目的別に紹介していきます。
「まずは気軽に一周してみたい」という初心者の方から、「次は本格的なロングライドに挑戦したい!」という中級者以上の方まで、きっと気になるコースが見つかるはず。
さあ、“自分だけの一周旅”を探しに出かけましょう。
サイクルボール認定ルート|達成感を集めて走る全国一周チャレンジ
コース名 | 体力 | 技術 | 距離目安 | ひと言コメント |
---|---|---|---|---|
ビワイチ(滋賀) | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | 約150〜200km | 一周サイクリングの定番ルート |
カスイチ(茨城) | ★★☆☆☆ | ★☆☆☆☆ | 約90km | 初心者にぴったりの平坦コース |
ハマイチ(浜名湖) | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | 約70km(ほぼフラット) | 湖と温泉を楽しむ癒しの周回旅 |
チバイチ(千葉) | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | 約190km | 海沿い絶景と長距離チャレンジ |
ワンイチ(東京湾) | ★★★★☆ | ★★★★☆ | 約160〜180km | 都市と海を巡る異色の一周ルート |
イズイチ(伊豆半島) | ★★★★★ | ★★★★☆ | 約230km | 起伏と絶景が連続する本格派ルート |
アワイチ(淡路島) | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | 約150km | 海・峠・グルメのバランスが絶妙 |
ビワイチ|サイクルボールの王道、一周の原点

日本で最も有名な一周ルートといえば、滋賀県の琵琶湖一周=ビワイチ。
約150kmとボリュームはありますが、コースの大半が平坦で、サイクリング道の整備も進んでいます。
初心者は「北湖のみ(キタビワイチ)」からスタートして、段階的にフルチャレンジを目指すのもおすすめです。
カスイチ|景色もアクセスも◎な初心者向けルート

茨城県の霞ヶ浦一周=カスイチは、サイクルボールの中でも最も敷居が低く、距離約90km・起伏少なめ。
「湖をぐるっと走る爽快感」と「常磐線でのアクセスの良さ」がポイントで、関東からの日帰りライドにも最適。
自転車道の整備も進んでいて、道に迷いにくいのも安心材料です。
ハマイチ|浜名湖の景色と温泉を満喫
静岡県の浜名湖一周=ハマイチは、約70kmと短めながら、海と湖の両方を感じられる絶景ルート。
浜名湖周辺には温泉宿やグルメスポットも豊富で、サイクリング+癒しを両立させたい人にぴったりです。
アップダウンは少なめなので、久々のロングライドにもおすすめ。
チバイチ|190kmの長距離×海沿いアドベンチャー

千葉県を一周するチバイチは、約190kmとボリューム満点。
コースは海沿いが多く、変化に富んだ景色が楽しめる一方で、交通量が多い区間や起伏もあり、初心者にはややハード。
輪行と組み合わせて2日間で完走するなど、無理のないプランがおすすめです。
ワンイチ|都市を巡る“異色の一周”体験

東京湾一周=ワンイチは、工場地帯、ベイエリア、漁村など、都市と自然が交差する不思議なルート。
全長160〜180kmで、一部はフェリーを使う選択肢もあり。都市部特有の信号・交通量に注意しつつ、非日常感を味わえます。
「景色より地形と達成感!」という方に刺さるコースです。
イズイチ|伊豆半島を巡る本格チャレンジコース
伊豆半島一周=イズイチは、アップダウンの連続するチャレンジ系ルート。
距離は約230km、獲得標高も大きいため、完走にはしっかりとした体力と装備が必要です。
ただし、海と山の絶景に囲まれながらのライドは圧巻。「いつかは走りたい」と言われる理由がわかります。
アワイチ|海岸美と地形のバランスが絶妙

淡路島一周=アワイチは、関西を代表する人気ルート。全長約150kmで、前半にアップダウンが集中し、後半は比較的フラット。
海沿いの道から見える鳴門海峡や夕暮れの海が美しく、旅の満足度も高め。
一泊して温泉とグルメも楽しむプランが人気です。
その他の魅力的な一周コース|旅情を味わう絶景ルート
サイクルボールには含まれていないものの、全国には“ぐるっと一周”の達成感を味わえる魅力的なルートがまだまだ存在します。
ここでは、旅情あふれる絶景コースや、自分のペースで楽しめる周回ルートを5つご紹介。
のんびり派も、本気派も、自分にぴったりの「もうひとつの一周旅」がきっと見つかります。
コース名 | 体力 | 技術 | 距離目安 | ひと言コメント |
---|---|---|---|---|
三浦半島一周 | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | 約90km | 絶景とグルメが楽しめる海岸ライド |
中禅寺湖一周 | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | 約25km(起伏多) | 紅葉の名所を巡る山上の湖畔道 |
諏訪湖一周(スワイチ) | ★★☆☆☆ | ★☆☆☆☆ | 約16km | 温泉街を走るコンパクトな湖畔コース |
大山一周(ダイイチ) | ★★★★☆ | ★★★★☆ | 約110km | 神話の山を仰ぐ静かな周回ルート |
四国一周(シコイチ) | ★★★★★ | ★★★★☆ | 約1000km | 人生を変えるスケールの絶景旅 |
三浦半島一周|海とグルメを満喫する手軽な絶景ルート

神奈川県の三浦半島をぐるっと巡るこのルートは、約90kmの手頃な距離と海沿いの変化に富んだ景色が魅力。
三崎のまぐろや葉山のパン屋など、グルメスポットも豊富で、サイクリング旅の楽しさを凝縮したような一周旅です。
適度なアップダウンもあり、初心者から中級者まで気持ちよく走れます。
中禅寺湖一周|紅葉の絶景と湖畔の静けさに包まれて

栃木・日光の山上にある中禅寺湖は、標高約1,200mに位置する湖。一周約25kmと距離は短いものの、アップダウンが多く走りごたえあり。
特に秋は、湖と山が織りなす紅葉のコントラストが絶景で、走るたびに立ち止まりたくなるスポットが続きます。
自然を感じながらじっくり走りたい人にぴったり。
諏訪湖一周|温泉街をめぐるコンパクトな湖畔旅

長野県の諏訪湖は一周16kmほどの初心者向け周回コース。
湖沿いには自転車道が整備されていて、走りやすさも抜群。温泉地ならではの観光・グルメとの組み合わせも楽しめます。
「初めての一周旅」や家族サイクリングにもおすすめの、安心感ある癒しルートです。
大山一周(ダイイチ)|神話と自然が交差する山陰の静かな旅

鳥取県の名峰・大山をぐるっと一周する約110kmのルート。
交通量が少なく、山陰ならではの神話的な風景と静けさが心に残るコースです。
起伏はありますが、自然と向き合う静かなサイクリング旅を求める人にはぴったりの“隠れイチ”です。
四国一周(シコイチ)|走ることでしか見えない景色がある

約1,000kmの超ロングルート。四国の海岸線・岬・山々を巡る“人生レベルの一周旅”です。
1週間以上かけて走る人も多く、しっかりとした準備と計画が求められますが、その分、得られるものも大きい。
私も高校卒業直後に挑戦した思い出の旅で、今でも心に残る「一周体験」になっています。
ナショナルサイクルルートに認定された一周・海岸ルート
国土交通省が選定する「ナショナルサイクルルート(NCR)」は、地域を代表する観光資源と優れたサイクリング環境が整ったコースに与えられる公式な称号です。
観光地との連携やインフラ整備も進んでおり、初めてのサイクル旅でも安心して楽しめるのが特徴。ここでは、その中でも「一周」や「海沿い」に関わる代表的なルートをご紹介します。
コース名 | 体力 | 技術 | 距離目安 | ひと言コメント |
---|---|---|---|---|
ビワイチ(滋賀) | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | 約150〜200km | 一周旅の代表格。整備も信頼性も抜群 |
カスイチ(茨城) | ★★☆☆☆ | ★☆☆☆☆ | 約90km | 湖畔の平坦道。初心者でも安心 |
しまなみ海道(広島〜愛媛) | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | 約80〜90km | 海と島をつなぐ“サイクリングの聖地” |
太平洋岸自転車道 | ★★★★★ | ★★★★☆ | 約1400km(区間可) | 日本横断スケールのロングチャレンジ |
富山湾岸サイクリング | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | 約100km | 海と山の同時絶景。立山連峰が美しい |
トカプチ400(北海道) | ★★★★★ | ★★★☆☆ | 約400km | 北海道らしい広大な風景とローカル感を満喫 |
ビワイチ(滋賀)|日本一の湖をぐるっと巡る王道ルート

ナショナルサイクルルート第1号に選ばれた、日本を代表する一周ルート。
初心者は「北湖」から、経験者はフル一周に挑戦するのがおすすめ。
ルート整備・情報発信・サポート体制すべてが高水準です。
カスイチ(茨城)|サイクリングロードが整備された平坦な湖畔周回

つくば霞ヶ浦りんりんロードの一部として認定されたこのコースは、初心者でも安心して走れる平坦な湖畔道。
沿線には温泉や観光地もあり、1日ゆったりと楽しめる関東近郊の人気ルートです。
しまなみ海道(広島〜愛媛)|瀬戸内の島々をつなぐ海の道

NCRの中でも圧倒的な人気を誇るルート。
今治〜尾道間は直線走行が定番ですが、フェリーや島内道路を活用すれば周回コース的な楽しみ方も可能。
サイクリングの聖地と呼ばれるだけあり、走りやすさ・眺望・観光の三拍子が揃っています。
太平洋岸自転車道(千葉〜和歌山)|1400kmにおよぶ“日本横断ルート”

全長1,487kmというスケールを誇る、日本最大級のロングライドルート。
すべてを走破するには10日以上かかりますが、区間ごとに走ることで徐々に“自転車日本縦断”を達成できる夢のあるコースです。
富山湾岸サイクリングコース|立山連峰と海が同時に楽しめる贅沢ルート

海越しにそびえる立山連峰の絶景と、整備されたサイクリングインフラが特徴の富山湾岸ルート。
一周コースとは少し違いますが、“往復で海岸を巡る”という意味では一周旅的な楽しさもあり、景観重視派には特におすすめです。
トカプチ400(北海道)|丘陵地帯とローカル風景に出会う旅
北海道十勝エリアをぐるりと回る約400kmの周回型ロングコース。
雄大な自然と素朴な農村風景の中を走り抜けるスタイルは、本州とは一味違った“北海道らしい一周旅”を楽しませてくれます。
一周ライドの成功ポイント|装備と計画で完走率アップ
一周ライドには独特の達成感がありますが、「ぐるっと戻ってくる」ためにはそれなりの準備も必要です。
ここでは、完走率をグッと上げるためのコツや、実際に走る際に気をつけておきたいポイントを紹介します。
コース選びは“距離”より“自分に合うか”で決めよう
「せっかくだから長めに走りたい」という気持ちも大事ですが、体力や経験に見合ったルート選びが完走への第一歩です。
初心者なら「諏訪湖」「カスイチ」などの平坦短距離から、慣れてきたら「チバイチ」「アワイチ」「ビワイチ」のような中距離へ。
「アップダウンが多い」「信号が多い」「補給しにくい」など、数字には現れにくいポイントにも注意して選びましょう。
装備は“軽く・確実に”。輪行も選択肢に入れておこう
距離が長くなると、装備が重くなる=疲れやすくなる。
基本は「必要最低限+安全装備」で軽量化を意識しましょう。補給食・パンク修理キット・ライト・モバイルバッテリーはマスト。
また、急な体調不良や天候変化に備えて、輪行袋を持っておくと撤退ルートが確保できて安心です。特に一周コースは途中で電車に戻るのが難しいことも多いため、保険として有効です。

計画と体調管理が最大の攻略ポイント
「後半バテた」「想定より補給できなかった」とならないよう、前日までにルート確認+コンビニや補給ポイントを事前チェックしておくと安心です。
また、走行前にきちんと睡眠をとり、空腹や脱水にならないようにこまめな補給を心がけましょう。
途中で「今日はここまででいい」と思えるような余裕のある計画が、結果的に楽しく走り切る秘訣になります。
このように、コース選び・装備・計画の3点を抑えることで、一周旅の成功率はぐっと上がります。
「次も走りたい」と思えるような気持ちいい完走を目指しましょう。
さあ“自分だけの一周旅”を見つけよう
「一周してみたい」——その気持ちがあれば、もう一周ライドの旅は始まっています。
今回紹介したルートには、初心者でも挑戦しやすい平坦な湖畔コースから、何日もかけて走破する超ロングルートまで、さまざまなスタイルがあります。
共通しているのは、「ぐるっと回って、また元の場所に戻ってくる」という明確なゴールがあること。そして、そこにたどり着いたときの達成感は、何度経験しても格別です。
一周旅は、距離やスピードを競うものではありません。
その土地ならではの景色、匂い、風、出会いを感じながら、自分のペースで楽しめるのが一周旅のいちばんの魅力です。
たとえ途中で輪行したり、ショートカットしたりしても、それはそれで“自分だけの一周”なのです。
今回の記事で紹介したルートを入口に、まずは「走ってみたい」と思えるコースをひとつ選んでみてください。
最初は16kmの諏訪湖でもいいし、思い切って100km超のアワイチに挑戦してもOK。
もし「走る前にもっと準備したい」という方は、当サイトの以下の記事もぜひ参考にしてください。