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信越五岳を歩く「あまとみトレイル」初心者ガイド
更新日: 2026年11月2日

斑尾山から妙高、戸隠まで、信越五岳を結ぶ全長86kmの「あまとみトレイル」。四季折々の絶景と歴史、地域の営みに触れるこのルートは、ただのロングトレイルではありません。本記事では、歩く前に知っておきたい魅力・注意点・装備・歩き方を体験談ベースでわかりやすく解説します。
あまとみトレイルとは?|長野駅から斑尾山までの86km
あたらしく生まれた、地元発のロングトレイル
「信越五岳のふもとを歩いてみたい」「町から山へ、長い道を自分の足でつないでみたい」。そんな“もう一歩”を踏み出したくなる人にこそ、おすすめしたいのがあまとみトレイルなんですよね。
2021年10月23日に一部が開通した、新しいロングトレイルです。長野駅から善光寺、戸隠、黒姫山のふもと、妙高の笹ヶ峰、苗名滝、いもり池、野尻湖を通って、斑尾山の山頂まで、全長は約86km。笹ヶ峰から小谷村・糸魚川市のほうへ延ばす構想もあります。
このトレイルは、地元の人たちの協力を得て、実際に歩いて話し合いながら、もとからある登山道や林道、古道をつないで作った道です。だから、風景だけでなく“暮らしの匂い”や“人の営み”が感じられるところが、いちばんの魅力かなと思います。
名前に込められた“土地へのまなざし”
「あまとみ」の由来は、案内する団体によって少し言い方がちがうんです。
- 妙高戸隠連山国立公園連絡協議会:西の雨飾山(あ)、東の斑尾山(ま)、南の戸隠山(と)、北の妙高山(み)の頭文字
- あまとみトレイルクラブ(運営団体):「あ・ま」は雨飾山と斑尾山、「と・み」は国立公園の名前「妙高戸隠」の頭文字
どちらにしても、まわりの山と国立公園の名前が、そのまま道の名前になっています。“この土地らしさ”が詰まった名前ですよね。
ここでは、あまとみトレイルの成り立ちと見どころ、歩ける季節、泊まる場所、装備と気をつけたいことを、公式の情報をもとにご紹介します。
五岳をつなぐ86kmの道|あまとみトレイルの概要
2つのルートを、笹ヶ峰でつないだ1本の道
あまとみトレイルは、長野県の北部を歩いて、一部は新潟県も通る、全長約86kmのロングトレイルです。もとは2つのルートで、それを笹ヶ峰でつないだ1本の道になっています。
- 長野駅からのルート:善光寺〜戸隠〜黒姫山のふもと〜妙高・笹ヶ峰
- 斑尾山の山頂からのルート:野尻湖〜いもり池〜苗名滝〜妙高・笹ヶ峰
起点と終点は長野駅と斑尾山の山頂で、どちらから歩いてもかまいません。信越五岳(斑尾山・妙高山・黒姫山・戸隠山・飯縄山)のふもとを歩くので、山の大きさを体で感じられる道なんですよね。
斑尾山の山頂では信越トレイル(総延長110km)とつながっていて、続けて歩くこともできます。
※地図の線は、妙高戸隠連山国立公園連絡協議会とあまとみトレイルクラブが公開している公式の地図(マイマップ)の線です。番号は、長野駅から歩いた順。公式のルートの GPX は、協議会のページから無料でダウンロードできます(「ダウンロード」を押さず、右クリックで「名前を付けてリンク先を保存」。2026年11月2日)。
観光地の裏手にある、“暮らしと祈り”の道
このトレイルの面白さは、ただの登山道でもなく、観光地の散策路でもないところです。
善光寺から戸隠神社へ向かう参詣道(戸隠古道)もあれば、牧場の脇を通る林道や、深い森の静かな道もあります。名所もあれば、だれにも気づかれないような“何でもない風景”もある。そこに、土地と人とのつながりが感じられるんですよね。
ただし、道標だけでは歩けない、とクラブははっきり書いています。雪の重みではがれた道標や、朽ちた道標もあるので、公式の MAPBOOK か GPS の地図を必ず持っていきましょう。
歩くならここを押さえたい|代表的な見どころとハイライト
信仰と自然が交差する「長野〜戸隠エリア」
長野駅から歩きはじめるなら、まずは善光寺から戸隠へ続く古道のエリアです。善光寺の門前を抜けて、戸隠古道へ入っていきます。
- 善光寺(ぜんこうじ):全国から参拝者が訪れる、長野のランドマーク
- 大座法師池(だいざほうしいけ):飯綱高原の、森と水の静かな池。ルートからは1kmほど離れているので、寄り道で
- 戸隠神社(とがくしじんじゃ):宝光社・中社を通って、奥社の随神門まで。杉並木の参道が見どころです
“観光”ではなく、“歩く”からこそ味わえる空気がありますよね。戸隠には宿坊やカフェもあって、歩くペースで地域と出会えるのも楽しいところです。
湖と森と火山の地形を楽しむ「妙高〜信濃町エリア」
後半は、笹ヶ峰から苗名滝、いもり池、野尻湖へと下っていくエリア。信越五岳をぐるりと回るように、風景がどんどん変わっていきます。
- 笹ヶ峰高原:標高1,300mほどの、牧場と遊歩道の広がる高原
- 苗名滝(なえなたき):落差55mの、日本の滝百選。轟音から“地震滝”とも呼ばれます
- いもり池:晴れた日には、水面に妙高山が映る池
- 野尻湖(のじりこ):ナウマンゾウで知られる湖。ルートは野尻湖ナウマンゾウ博物館の前を通ります
このあたりは標高の差があって、気温や天気も変わりやすいです。そのぶん、季節の移ろいをじっくり味わえるエリアかなと思います。
スルーハイク&セクションハイクの歩き方ガイド
全線を歩くなら|スルーハイクの季節と日数
86kmを通しで歩く「スルーハイク」の季節は、クラブの案内で5月半ばから11月半ば、協議会の案内では6月上旬から10月下旬です。登山道には6月まで雪が残ることがあって、11月には雪が降ります。紅葉は10月中旬がいちばんの見ごろです。
日数は4〜5日が目安。寄り道したくなる場所が多いので、1週間ほどかけてゆっくり歩くのもいいと思います。
気をつけたいのが、笹ヶ峰と苗名滝のあいだにある西野発電所の吊り橋です。冬は踏み板を外して通れなくなるので、例年11月半ばからスルーハイクはできません。2025年は大雪の損傷で一年中通行止めで、2026年は9月2日にようやく開通しました。11月の第2週ごろには、笹ヶ峰へ向かう県道も冬の通行止めになり、救急の車も入れないことがあるので、そのあとの山の区間は歩かないのが安心です。長野駅〜善光寺のような町の区間なら、冬でも歩けます。出かける前に、あまとみトレイルクラブのお知らせを必ず見ておいてください。
【ポイント】
- 泊まり方は、宿かテントかを選べる:宿をつなげば、荷物を軽くできます
- 町を通る区間が多いので、バスやタクシーで区切りやすい
- 体力よりも「地図読み・計画力・調整力」が試されるルートです
自分のペースで楽しむ|セクションハイクのすすめ
全線を通しで歩くのは難しい…という人には、セクションハイク(区間歩き)がおすすめです。歩きやすい区間を選んで、日帰りか1泊でつないでいけばいいんですよね。
協議会がすすめている日帰りの歩き方は、たとえば次のような形です。
- 長野駅から一の鳥居(飯綱高原)まで歩いて、バスで戻る(地図の線で約14km)
- 一の鳥居から戸隠キャンプ場まで歩いて、バスで戻る
- 乙見湖休憩舎に車を停めて、夢見平遊歩道をぐるっと歩く
反対に、野尻湖から笹ヶ峰までは地図の線で約23km。登山道と吊り橋の区間を含むので、日帰りの気軽な区間ではないと考えておくのが安心です。
行き方も、少し前と変わっています。長野駅から戸隠へのバスは、アルピコ交通の【70】ループ橋経由戸隠線が走っていて、【73】県道戸隠線は2025年9月30日で終わりました。妙高高原駅から笹ヶ峰への直行バスは、2026年は7月11日〜10月25日で、今年の運行はもう終わっています。
夏は日中がかなり暑くなり、朝晩は冷え込むので、防寒着と暑さ対策の両立が要ります。セクションハイクでも、MAPBOOK か GPS の地図は欠かせません。
安全に歩くための準備と装備
地形・天候に合わせた装備選びがカギ
あまとみトレイルの登山道は、大橋林道入口〜笹ヶ峰、笹ヶ峰〜苗名滝、荒瀬原〜斑尾山の3か所で、地図の線で合わせて約30km。全体の3分の1ほどです。ほかは集落の道や舗装路、遊歩道、林道です。
協議会の案内では、長野駅〜戸隠や野尻湖のまわりはローカットのシューズでも歩けますが、登山道の区間は登山の装備が要ります。とくに大橋林道入口〜笹ヶ峰と笹ヶ峰〜苗名滝は、登山届(入山届)も出しておきましょう。
- トレッキングシューズ(軽登山靴):登山道の区間は、ハイカットかミドルカットの防水の靴が安心
- 雨具(レインウェア上下):夏の午後は、激しい雷雨になることもあります
- 保温着(フリースやダウン):秋は10度を下回る日もあります
- ザック:宿に泊まるかテント泊かで、大きさが変わります
- モバイルバッテリー・ヘッドライト:秋は午後4時を過ぎると、森の中は暗くなります
道標は雪や落ち枝で見えにくくなることもあるので、MAPBOOK とスマホの GPS は、どちらも持っておくのがおすすめです。
【ワンポイント】
公式の MAPBOOK(第2版・1,650円+送料)には、地図と水場やランドマーク、標高のデータが載っています。冊子が1冊あると、電池を気にせず地図を広げられるのがいいところですよね。

野外ならではのリスクにも備えよう
自然の豊かな道なので、こんなことにも備えておきたいところです。
- 水:夏は2リットルが目安。夏の登山道の区間には、水を足せる場所がありません。沢の水は、煮沸か浄水器を通してから
- ツキノワグマ:トレイルのまわりには、ツキノワグマがすんでいます。2024年6月には、信濃町野尻のルートの上で、クマに襲われたとみられる死亡事故があり、クラブが迂回の案内を出しました。迂回がいまも続いているかは、クラブのお知らせやクラブに確かめてから。歩くときは、クマ鈴や声で音を出しながら
- 虫・ハチ・ヘビ:晩春から夏はブヨと蚊、9〜11月はハチが攻撃的になります。マムシとマダニにも気をつけて
- 熱中症:夏は、長野市の市街地と、杉野沢から斑尾のあたりがとても暑くなります
- 車:舗装路や林道を歩く区間もあって、夜は車が勢いよく走ることもあります
それと、ゴミ箱はほとんどありません。ペットボトルや食べ残しは、すべて持ち帰りましょう。
クマ鈴を持っていくなら、音を止められる型が便利かなと思います。電車やバスに乗るときや、宿の近くでは音を消せるので。

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初めてでも大丈夫?あまとみトレイルはこんな人におすすめ
はじめてのロングトレイルにちょうどいい
全長86kmというと、少しハードルが高く感じるかもしれません。でも実は、はじめてのロングトレイルにも向いている道なんですよね。
- 宿をつないで歩けるので、テント泊が前提ではない
- 町やバス停と交わる所が多く、区間を細かく分けて歩きやすい
- 野尻湖のまわりにはコンビニや商店もあって、補給しやすい場所がある
山歩きを月に1〜2回楽しむくらいの人なら、日帰りで一部を歩いてみるだけでも、この道のよさは十分に味わえると思います。
「一度、ちゃんとした“歩く旅”をしてみたい」。そんな人の最初の一歩に、ぴったりのルートですよ。
景色だけじゃない、“物語”を歩きたい人へ
あまとみトレイルが、ほかのトレイルと大きくちがうのは、そこに「物語」が流れているところかなと思います。
- 善光寺から戸隠へ向かう、信仰の道
- 黒姫山のふもとの、静かな森
- 妙高・笹ヶ峰に広がる、火山と高原の風景
- そして、笹ヶ峰から日本海へ延ばそうとしている、これからのルート
景色を“見る旅”から、風景の中に“入っていく旅”へ。そんな感覚を味わいたい人に、あまとみトレイルはぴったりのフィールドだと思います。
よくある質問(FAQ)
Q. スルーハイクは初心者でもできますか?
計画しだいで、挑戦はできます。宿を使えば荷物を軽くできますし、1日20km前後なら4〜5日で歩けます。ただ、登山道の区間は登山の装備と体力が要るので、まずは日帰りのセクションハイクから始めるのがおすすめです。はじめての人には、ガイドツアーに入るのもすすめられています。
Q. MAPBOOKって絶対に必要ですか?
道標だけでは歩けない道なので、公式の MAPBOOK か、GPS の地図のどちらかは必ず。公式のルートの GPX は、協議会のページから無料でダウンロードできます。MAPBOOK(1,650円+送料)には水場や標高のデータも載っていて、電池が切れても見られるのが安心なところですよね。
Q. クマ対策はどの程度必要ですか?
トレイルのまわりには、ツキノワグマがすんでいます。2024年6月には、信濃町野尻のルートの上で死亡事故もありました。協議会の案内では、早朝や夕暮れ、霧で見通しの悪いとき、風や雨・沢の音でお互いの音に気づきにくいときは、こまめに手をたたいたり声を出したりして、こちらの存在を知らせるのが大事です。クマ鈴を鳴らし、天気の悪い日や見通しの悪い日は歩かないのが基本です。
Q. 水や食料の補給はどうすればいい?
水場はありますが、冬の雪の量によっては、夏に枯れることもあります。夏は2リットルが目安で、沢の水を飲むなら煮沸か浄水器を。戸隠高原で補給できるのは中社のあたりかキャンプ場くらいで、遅い時間に開いている店はありません。野尻湖のまわりには、コンビニや商店があります。
Q. テントを張れるような場所はありますか?
あります。テントは、ルートの近くのキャンプ場で張ります(戸隠・笹ヶ峰・野尻湖など)。多くは予約制で、最後の受付は17時ごろ。予約なしで行っても張れないことがあるので、前もって施設に確かめておきましょう。
たとえば笹ヶ峰キャンプ場は、2026年は7月1日〜9月27日の営業でした(フリーサイトは予約なし)。戸隠キャンプ場は、2026年は11月4日で営業を終えます。杉野沢には、ハイカーだけが使える寄付制のテント場(chant! キャンプサイト・LINE で連絡)もあります。トレイルの上の避難小屋は緊急のためのもので、泊まる前提にはしないでください。
ルートの半分あまりは、妙高戸隠連山国立公園の中を通ります。地域の人たちや有志の整備で保たれている道なので、ゴミや植物への気づかいも忘れずに。
まとめ|道がつないでくれるものを、あまとみで見つけよう
あまとみトレイルは、ただの“ハイキングコース”ではありません。信仰と暮らしの歴史、自然の豊かさ、地域の人たちの想いが詰まった道を、自分の足でたどる「歩く旅」なんですよね。
ロングトレイルに少し憧れていた人も、まずは1区間から。地図と少しの準備があれば、この道はきっと“自分の道”になると思います。
次の季節は、吊り橋に踏み板がかかる春から。歩く前には、クラブのお知らせで道の様子を見ておいてくださいね。
私は、あまとみトレイルのいいところは、町と山を行き来しながら歩けるところだと思っています。全部を通しで歩かなくても、バスで戻れる区間を1日ずつつないでいけば、それも立派なロングトレイルの楽しみ方ですよね。
ただ、道標だけでは歩けない道なので、地図だけは必ず。そこさえ押さえておけば、はじめての長い道にもちょうどいいと思います。