登山の「杖」は、呼び方がいくつもあるんですよね。トレッキングポール、ストック、ステッキ、登山棒。どれも同じものです。
この記事ではトレッキングポールと呼びますが、探しているものが同じなら読み進めて大丈夫です。
ひとつだけ別物なのがノルディックウォーキング用のポールです。あちらは平地で腕を振って歩くための道具で、グリップの形も長さの合わせ方も違います。山で使うものを探しているなら、この記事のほうが近いです。
そもそも要るのか

で、先に「なくても歩ける場合」から書きます。
なくても歩ける
- 整備された道:石段や木道が続くコース。むしろ手がふさがって邪魔になります
- 歩く時間が2時間以内:疲れが出る前に降りてこられる
- 鎖場や梯子が多いルート:手を使う場所ではしまうことになるので、出番が少ないです
あると楽になる
- 下りが長い:いちばん差が出るのがここです。膝にかかる荷重を腕に逃がせます
- 荷物が重い:テント泊のようにザックが重い日は、バランスを取るだけでも助かります
- 足元が不安定:ガレ場、渡渉、雪解けのぬかるみ
まとめると「長い下りがあるかどうか」で決めるのがいちばん外しません。登りで楽になるかは体力によりますが、下りの膝は誰でも同じように痛むんですよね。
買う前に試せること
1本だけ持ってみる
2本セットで売られていますが、まず1本だけ使ってみるのもありです。片手が空くので、地図を見たり岩に手をついたりしやすくなります。
2本のほうが効率はいいです。ただ「自分に要るのか分からない」という段階なら、1本で下りを歩いてみると違いがはっきり分かるかなと思います。私も最初は半信半疑でした。
レンタルで試す
山小屋や登山用品店で貸し出しているところがあります。1回借りてみて、膝の楽さを確かめてから買うという順番でも遅くありません。
木の枝を拾って代わりにする、というのはやめたほうがいいです。体重をかけた瞬間に折れますし、自然公園では採取そのものが禁止されている場所もあります。
選ぶときに見るのは3つ

①ロックの方式
で、長さを固定する仕組みです。大きく2種類あります。
- レバー式(外に金具が出ているタイプ):手袋のまま操作できて、締まり具合を目で確認できます
- スクリュー式(ひねって締めるタイプ):構造が単純で安いですが、締めが甘いと歩いているうちに縮むことがあります
迷ったらレバー式です。ただ「レバー式=高い」というのは、いまは当てはまりません。数千円のものでもレバー式が標準になってきています。
②たたみ方
- 伸縮式:筒が入れ子になっていて、縮めて短くします。長さを細かく変えられます
- 折りたたみ式(Z型):テントのポールのように折ります。縮めたときがいちばん短くなるので、ザックに入れやすいです
登り下りで長さを変えたいなら伸縮式、使わない時間が長くてザックにしまうことが多いなら折りたたみ式。この分け方でいいかなと思います。
③アルミかカーボンか
- アルミ:重いですが、曲がっても粘ります。安いです
- カーボン:軽くて、歩いているときの細かい振動を吸収してくれます
ここは誤解されやすいところなので分けて書きます。カーボンは縦方向(突く方向)には強く、振動もよく吸収します。一方で横方向の力には弱いです。岩の隙間に挟まった状態で体重をかけると、粘らずに折れることがあります。
ですから岩がゴロゴロした道を歩くことが多いなら、アルミのほうが気楽かなと思います。
価格帯別の7組
安い順に並べています。迷ったら5番、膝に不安があるなら4番、まず試すだけなら1番。価格はAmazonの実売です。
| 製品名 | こんな人向け | 価格 | ロック | 素材 | おすすめ用途 |
|---|---|---|---|---|---|
|
DABADA アルミ トレッキングポール 2本セット
|
まず試す ★★★☆☆ |
約4,100円〜 | スクリュー式 | アルミ | まず試す |
|
キザキ トレッキングポール KTBC-125AI
|
コスパ ★★★★☆ |
約8,400円〜 | レバー+回転の併用 | アルミ | 1万円以下で国産 |
|
Black Diamond トレイルバック BD82405
|
ブランド入門 ★★★★☆ |
約13,700円〜 | レバー式(フリックロック) | アルミ | ブランド入門 |
|
LEKI レガシーライト PRO AS
|
膝が不安 ★★★★★ |
約14,900円〜 | レバー式(スピードロック・プラス) | アルミ | 膝への負担を減らす |
|
Black Diamond トレイル BD82505
|
迷ったらこれ ★★★★★ |
約14,800円〜 | レバー式(フリックロック2) | アルミ | 迷ったらこれ |
|
シナノ FAST-130 カーボンW
|
軽さ優先 ★★★★☆ |
約19,900円〜 | レバー式 | 上段アルミ+中下段カーボン | 軽さと長さ |
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Black Diamond トレイルコルク BD82506
|
握り心地 ★★★★☆ |
約20,400円〜 | レバー式(フリックロック2) | アルミ | 長時間握る人 |
1. DABADA アルミ トレッキングポール 2本セット|要るかどうかを確かめる1組

DABADA アルミ トレッキングポール 2本セットの価格を比較する
- ロック
- スクリュー式
- たたみ方
- 伸縮式
- 素材
- アルミ
- その他
- SG承認品・アンチショック付き
- 価格帯
- 約4,100円〜
「自分に要るのか分からない」という段階なら、まずこれで十分です。2本セットでこの価格、しかもSG承認品です。
アンチショック(突いたときの衝撃を和らげる機構)も付いているので、下りで試してみて効果が分かればグレードを上げればいいかなと思います。
ロックはスクリュー式です。締めが甘いと歩いているうちに縮むので、出発前にしっかり締めてください。年に数回、整備された道を歩くぶんには困りません。
こんな人に:年に数回・整備された道を歩く人
気になる点:スクリュー式なので、締めが甘いと縮みます
2. キザキ トレッキングポール KTBC-125AI|1万円以下で日本のメーカー

キザキ トレッキングポール KTBC-125AIの価格を比較する
- ロック
- レバー+回転の併用
- たたみ方
- 伸縮式
- 素材
- アルミ
- 重量
- 約240g/本
- 生産
- 日本のメーカー
- 価格帯
- 約8,400円〜
1万円以下で、日本のメーカーの製品が欲しいならこれです。240g/本と軽く、握りやすさも素直です。
ロックはレバーと回転を組み合わせた作りで、スクリュー式だけのものより締まりが安定します。
ひとつだけ、メーカーの公式サイトが見つけにくいので、仕様の裏取りが販売ページ頼りになります。そこが気になるなら次のグレード以上を選んでください。
こんな人に:安く済ませたいが作りは気にする人
気になる点:メーカーの公式サイトが探しにくいです
3. Black Diamond トレイルバック BD82405|レバー式の入口

Black Diamond トレイルバック BD82405の価格を比較する
- ロック
- レバー式(フリックロック)
- たたみ方
- 伸縮式
- 素材
- アルミ
- グリップ
- ラバー
- 価格帯
- 約13,700円〜
レバー式を試すならここからです。ブラックダイヤモンドのフリックロックは、手袋をしたままでも片手で開け閉めできます。締まり具合を目で確認できるのも安心なんですよね。
アルミなので、岩に当てても粘ります。日帰りから小屋泊まで一通りこなせます。
グリップはラバーなので、夏に長時間握ると汗で滑ることがあります。そこが気になるならコルクのモデルへ。
こんな人に:手袋のまま長さを変えたい人
気になる点:グリップはラバー。汗をかくと滑りやすい
4. LEKI レガシーライト PRO AS|突いたときの衝撃を吸収する

LEKI レガシーライト PRO ASの価格を比較する
- ロック
- レバー式(スピードロック・プラス)
- たたみ方
- 伸縮式
- 素材
- アルミ
- 重量
- 約456g(2本)
- その他
- アンチショック付き
- 長さ
- 90〜125cm
- 価格帯
- 約14,900円〜
下りで膝に不安があるなら、これがいちばん楽です。アンチショック機構が入っていて、突いた瞬間の衝撃が手首と肘に来にくくなります。
456g(2本)とこの記事でいちばん軽い部類で、長時間持っていても腕が疲れません。ロックはレバー式です。
調整範囲が90〜125cmと短めです。身長が175cmを超えるあたりから、下りで少し物足りなく感じるかもしれません。買う前にここだけ確認してください。
こんな人に:下りで膝に不安がある人
気になる点:最長125cm。身長が高い人には短いです
5. Black Diamond トレイル BD82505|長い下りでいちばん扱いやすい

Black Diamond トレイル BD82505の価格を比較する
- ロック
- レバー式(フリックロック2)
- たたみ方
- 伸縮式
- 素材
- アルミ
- 重量
- 約480g(2本)
- グリップ
- エクステンショングリップ付き
- 価格帯
- 約14,800円〜
最初の1組をきちんと選ぶなら、これで間違いないかなと思います。フリックロック2という改良版のレバーで、締め具合の調整もドライバー無しでできます。
グリップの下が細く伸びていて(エクステンショングリップ)、急な登りで持ち替えるだけで長さを変えたのと同じ効果が得られます。いちいち縮めなくていいので、実際の山ではこれがかなり楽です。
480g(2本)でアルミ。岩の多い道でも気を遣わずに使えます。
こんな人に:最初の1組をきちんと選びたい人
気になる点:価格はこの中では中位です
6. シナノ FAST-130 カーボンW|軽くて、130cmまで伸びる

シナノ FAST-130 カーボンWの価格を比較する
- ロック
- レバー式
- たたみ方
- 伸縮式
- 素材
- 上段アルミ+中下段カーボン
- 重量
- 約426g(2本)
- 長さ
- 〜130cm
- 生産
- 台湾製
- 価格帯
- 約19,900円〜
軽さと長さを両立したいならこれです。上段がアルミ、中下段がカーボンという組み合わせで、426g(2本)と軽く仕上がっています。
130cmまで伸びるので、身長が高くて他のモデルだと下りで短く感じる人に向きます。
カーボンが入っているぶん、歩いているときの細かい振動は伝わりにくいです。ただ横方向の力には弱いので、岩の隙間に挟まったまま体重をかけないよう気をつけてください。なおメーカーは日本ですが、生産は台湾です。
こんな人に:身長が高い人・軽さを取りたい人
気になる点:この記事では高いほうです
7. Black Diamond トレイルコルク BD82506|汗で滑らないコルク

Black Diamond トレイルコルク BD82506の価格を比較する
- ロック
- レバー式(フリックロック2)
- たたみ方
- 伸縮式
- 素材
- アルミ
- グリップ
- コルク
- 価格帯
- 約20,400円〜
握り心地でいえば、この記事でいちばんです。コルクのグリップは汗を吸うので、夏に長時間握っても滑りません。使ううちに手の形に馴染んできます。
中身はトレイル(BD82505)と同じフリックロック2で、重さもほぼ同等です。違いはグリップだけと考えて差し支えありません。
その差に数千円払うかどうか、という選び方になりますね。手汗が気になる人以外は、トレイルで十分かなと思います。
こんな人に:夏に長時間握る人
気になる点:いちばん高く、重さはトレイルと同等です
長さと使い方は、ざっくりこれだけ
長さの合わせ方はシンプルなんですよね。平地で突いたときに、肘が90度になる長さが基準になります。
- 登り:基準より5〜10cm短く
- 下り:基準より5〜10cm長く
ストラップは下から手を通して、余った部分ごと握るのが正しい持ち方です。こうすると手のひらで体重を支えられるので、握力を使わずに済みます。
振り方や場面ごとの使い分けはトレッキングポールの正しい選び方と使い方に詳しく書いているので、そちらを見てください。
安全に関わるところを2つだけ。
ザックに固定するときは、先端を下に向けてください。上向きに突き出していると、後ろを歩く人の顔の高さに来ます。
鎖場や梯子ではしまいます。手が使えないと危険ですし、ポールが岩に引っかかると体勢を崩します。
買ったあとに困ること
締めても縮んでしまう
いちばん多いトラブルですね。原因で対処が分かれます。
- レバー式:レバーの反対側に調整ネジがあります。少しずつ締めていって、レバーを倒すのに力が要るくらいが適正です
- スクリュー式:中の樹脂が摩耗しているか、汚れています。分解して拭くと戻ることが多いです
ゴムキャップが外れた・なくした
ゴムキャップは舗装路や木道を歩くときに付けるものです。先端の金属で木道を傷つけないため、植生を荒らさないための装備でもあるんですよね。
消耗品なので、なくしたら買い足せます。逆に土や雪の道では外します。付けたままだと滑ります。
雪では先端を替える
ポールの先に付いている小さな輪(バスケット)は、雪の上では小さすぎて刺さり込みます。雪の季節はスノーバスケットという大きいものに交換してください。多くのモデルで別売りされています。
よくある質問
1本と2本、どちらがいいですか?
効率でいえば2本です。左右のバランスが取れて、下りで体重を分散できます。
ただ1本には片手が空くという利点があります。地図を見る、岩に手をつく、写真を撮る、といった動作がしやすいです。まず試したい段階なら1本から入るのもありかなと思います。
安いノーブランド品でも大丈夫ですか?
整備された道を日帰りで歩くなら、それで困ることは少ないです。実際、Amazonで「トレッキングポール」を見ると上位に並ぶのは2,000〜4,000円のノーブランド品です。
差が出るのは壊れたときに困る行程かどうか。長い縦走やテント泊のように、途中で使えなくなると足に負担が集中する場面では、ロック機構がしっかりしたものを選んだほうが安心です。
身長に合う長さはどう選びますか?
製品ごとに調整できる範囲が決まっています。ここを見落とすと、届いてから合わないということが起きます。
身長が高めの人は最長が135cmまであるもの、小柄な人は最短が90cm前後まで縮むものを選んでください。比較表に調整範囲を入れてあります。
飛行機に持ち込めますか?
機内持ち込みはできません。先端が尖っているため、預け入れの荷物に入れることになります。遠征で使う場合はスーツケースに収まる長さまで縮むかを確認しておいてください。折りたたみ式のほうが短くなります。
使ったあとの手入れは?
縮めたまま濡れた状態で放置しないでください。中に水が残って、ロック部分が固着したり錆びたりします。帰宅したら伸ばした状態で乾かします。
泥がひどいときは分解して拭きます。スクリュー式は特に、内側の汚れがそのまま「締まらない」原因になります。
まとめ
- トレッキングポール・ストック・ステッキ・登山の杖は全部同じもの。ノルディック用だけ別物です
- 要るかどうかは長い下りがあるかどうかで決めるのがいちばん外しません
- 選ぶときに見るのはロックの方式・たたみ方・素材の3つだけ
- カーボンは縦には強く、横には弱い。岩場が多いならアルミが気楽です
- ザックに付けるときは先端を下に。鎖場ではしまいます
いきなり2本買わなくても、1本借りて下りを歩いてみるだけで、要るかどうかはだいたい分かるかなと思います。



