冬に低山へ行くとき、いちばん迷うのが服装かなと思います。「厚着すればいい」で行くと、たいてい失敗します。
私も最初、ダウンを着て登って、20分で汗だくになりました。脱いだら脱いだで山頂で凍えて、往復ずっとちぐはぐでした。
この記事では冬の低山の服装を、上から順ではなく「買い足すもの・手持ちで済むもの」で分けて書きます。結論を先に言うと、買い足すのは上着ではありません。
低山で寒いのは、気温より風と汗
服装の前に、何が寒さを作っているかを押さえておくと、選び方がぶれません。
標高で下がるぶんは、意外と小さい
気温は標高が100m上がるごとに、およそ0.6℃下がります。ということは、標高600mの山の山頂でも、ふもとより3.6℃ほどという計算になります。
3.6℃なら、ふもとで平気な服装でもなんとかなりそうに思えますよね。実際に寒いのは、ここから先の2つです。
風で、体感は一気に落ちる
ひとつめが風です。風速が1m/s増えるごとに、体感温度はおよそ1℃下がります。
冬の山頂は、ふもとより風があります。5m/sも吹いていれば、それだけで体感は5℃ぶん持っていかれます。標高で下がる3.6℃より、こちらのほうが大きいんですよね。
だから「風を止められるか」が、厚さより先に来ます。ここは冬のパンツやジャケットを選ぶときと同じ考え方です。
汗冷えが、いちばん危ない
ふたつめが汗です。そしてこれが冬の低山でいちばん多い失敗かなと思います。
低山は標高が低いぶん、登りでしっかり汗をかきます。その汗が山頂で冷えると、着ているものが冷たい布に変わります。
ダウンを着て登って山頂で凍える、というのはこれです。暖かくして登ったせいで、寒くなっているんですよね。

3枚に分けて、脱ぎ着で調整する
そこで出てくるのがレイヤリング、つまり重ね着です。難しい話ではなくて、役割の違う3枚を用意して、暑くなったら脱ぐだけです。
| 層 | 役割 | 低山での正解 | 買い足す? |
|---|---|---|---|
| ベース (肌に触れる) |
汗を肌から離す | 化繊かメリノウール | 買う |
| ミドル (中間) |
空気をためて保温 | フリース | 手持ちで可 |
| シェル (外側) |
風と雨を止める | レインウェア | 手持ちで可 |
お金を出すのは、ベースだけ
3枚のうち、お金を出す価値があるのはいちばん内側です。
理由はさっきの汗冷えで、肌に触れている1枚が濡れたままだと、上に何を着ても寒いからです。逆にここが乾いていれば、外側が多少うすくても耐えられます。
選ぶのは化繊かメリノウール。3,000円くらいから買えます。
綿のインナーだけはNG
これは覚えて帰ってほしいところです。綿(コットン)のインナーは冬山では使わないでください。
綿は水を抱えたまま離しません。汗を吸ったあと乾かないので、濡れた布を肌に貼りつけたまま山頂に立つことになります。ヒートテックのような綿混のインナーも、汗をかく前提だと同じ問題が出ます。
普段着のTシャツで山に行きたくなる気持ちは分かるのですが、ここだけは変えてください。
ミドルとシェルは、たいてい家にある
いっぽう外の2枚は、新しく買わなくてもなんとかなることが多いです。
ミドルはユニクロのフリースでかまいません。シェルは登山用のレインウェアがあれば、それがそのまま防風の上着になります。雨具と冬の上着を兼ねられるので、これは持っている方が多いかなと。
レインウェアもないという場合は、風を通さないウインドブレーカーでも低山なら回ります。

買い足すのは、5千円ぶんくらい
では実際、何をいくらぶん買えばいいのか。ここを具体的に書きます。
優先順位はこの3つ
手持ちにフリースとレインウェアがある前提だと、買い足すのはインナー・手袋・帽子の3つです。
ベースレイヤー(化繊かメリノ)で3,000円くらい、手袋が1,000〜2,000円、ニット帽が1,000円くらい。合計して5,000円ちょっとですね。
ダウンジャケットやハードシェルは、この段階では要りません。低山の登りでは、暑すぎて着ていられないので。
手袋と帽子は、効率がいい
安いわりに差が出るのがこの2つです。
手と頭は血が多く流れていて、しかも外に出ているので、覆うだけで体感がずいぶん変わります。1,000円の帽子が、1万円のジャケットより仕事をする場面があるんですよね。
手袋は薄いものと厚いものを2枚持つと使い勝手がいいです。登りは薄いほう、山頂で厚いほう。これで汗をかきすぎずに済みます。
下半身は、上ほど気を使わなくていい
脚は歩いているかぎり動いているので、上半身ほど冷えません。手持ちのパンツの下にタイツを1枚で足りることが多いです。
ここもジーンズだけは避けてください。綿なので、濡れると乾かないうえに重くなります。
冬の低山に、余分に入れるもの
服装のほかに、冬だからこそ入れておきたいものを書きます。多くはありません。
日が落ちるのが早い
冬でいちばん現実的なリスクがこれかなと思います。16時半には暗くなります。
夏と同じ時間感覚で歩くと、下山の途中で真っ暗になります。ヘッドライトは必ず入れてください。使わずに済んでも、入っているだけで気が楽です。
あわせて、出発を早める。冬は昼前には登り切っているくらいの計画にしておくと、余裕が出ます。
温かい飲み物と、行動食
山頂で座るとき、温かい飲み物があるかどうかで滞在時間がまるで変わります。保温ボトルにお湯を入れておくだけでいいので、これは持っていく価値があります。
行動食も、冬は多めに。寒いとエネルギーの減りが早いんですよね。
雪が出てきたら、そこから先は別の話
ここは安全に関わるので、はっきり分けておきます。登山道に雪や凍結がある山は、この記事の範囲外です。
低山でも、日陰や北側の斜面は凍ります。とくに下りの凍った道は、ふつうの靴ではどうにもなりません。チェーンスパイクなどが要ります。
行く前に、その山の直近の記録を見て雪や凍結の報告がないかを確かめてください。報告があるなら、装備を足すか、行き先を変えてください。
よくある質問
冬の低山は、どんな服装で行けばいいですか?
3枚に分けて、暑くなったら脱げる形にしてください。肌に触れるベースは化繊かメリノウール、中間はフリース、外側はレインウェアで足ります。
大事なのは厚さより脱ぎ着できることです。低山は登りでしっかり汗をかくので、暖かくしすぎると山頂で汗冷えします。
何を買い足せばいいですか?
フリースとレインウェアが家にあるなら、買うのはベースレイヤー・手袋・ニット帽の3つです。
目安はベースレイヤー3,000円くらい、手袋1,000〜2,000円、帽子1,000円くらいで合計5,000円ちょっと。ダウンやハードシェルは低山では出番がありません。
ヒートテックを着ていってもいいですか?
汗をかく前提だと向きません。綿が混ざっているものは水を抱えたまま離さないので、山頂で濡れた布を肌に貼りつけることになります。
山用には化繊かメリノウールのものを1枚用意してください。3,000円くらいからあります。
ダウンジャケットは必要ですか?
低山の日帰りなら要りません。登りでは暑すぎて着ていられないので、結局ザックの中で荷物になります。
持っていくとしたら「山頂で休むとき用」で、歩いている間は着ません。まずはフリース+レインウェアで足ります。
冬の低山で、いちばん寒いのはどこですか?
山頂で止まっているときです。標高で下がるぶん(100mで約0.6℃)より、風のほうが大きく体感を落とします。風速1m/sごとにおよそ1℃ぶんです。
山頂に着いたら、汗が冷える前に上に1枚羽織ってください。
ズボンはどうすればいいですか?
脚は歩いているかぎり冷えにくいので、手持ちのパンツの下にタイツを1枚で足りることが多いです。
ただしジーンズは避けてください。綿なので濡れると乾かず、重くなります。
雪があるかもしれない山でも大丈夫ですか?
この記事の範囲は、雪や凍結のない低山です。低山でも日陰や北側の斜面は凍ります。とくに下りの凍った道は、ふつうの靴ではどうにもなりません。
行く前にその山の直近の記録を見て、雪や凍結の報告がないかを確かめてください。あるならチェーンスパイクなどを足すか、行き先を変えてください。
何時までに下山すればいいですか?
冬は16時半には暗くなります。夏と同じ時間感覚で歩くと下山の途中で真っ暗になるので、昼前には登り切っているくらいの計画にしておくと余裕が出ます。
そのうえでヘッドライトは必ず入れてください。
まとめ
- 冬の低山で寒いのは、気温より風と汗です
- 標高100mで下がるのは約0.6℃。それより風速1m/sごとに約1℃のほうが大きく響きます
- 服はベース・ミドル・シェルの3枚に分けて、暑くなったら脱ぎます
- お金を出す価値があるのはいちばん内側。化繊かメリノウールで3,000円くらいから
- 綿のインナーとジーンズは避けてください。濡れたまま乾きません
- ミドルは手持ちのフリース、シェルはレインウェアがそのまま使えます
- 買い足すのはインナー・手袋・帽子で合計5,000円ちょっと。ダウンは低山では出番がありません
- 冬は16時半には暗くなります。ヘッドライトを入れて、出発を早めてください
- 雪や凍結のある山は範囲外です。直近の記録を見て、報告があるなら装備を足すか行き先を変えてください






冬の低山で私がいちばん失敗したのは、山頂で写真を撮っていた30分でした。
登りで汗をかいて、着いたときは「暑いくらいだな」と思っていたんです。ところが座って15分もすると、背中が氷みたいに冷たくなって、そこから止まりませんでした。
いま思えば、着いてすぐ1枚羽織っていれば済んだ話でした。山頂に着いたら、寒くなる前に着る。寒くなってからでは、もう追いつかないんですよね。