「登山靴って、何年くらい使えるんですか」という質問への答えを、先に書きます。
約5年です。しかもこれは履いた回数ではなく、作られてからの年数。メーカーがそう案内しています。
つまり「あまり履いていないから、まだ大丈夫」は通用しません。下駄箱に入れっぱなしでも、靴は勝手に古くなります。ここが分かると、手入れも買い方も変わってくるんですよね。
寿命は、履いた回数ではない
まずここを押さえてください。ほかの道具と考え方がちがうんですよね。
使わなくても、5年で劣化する
モンベルは登山靴のソールについて、「使用の有無にかかわらず時間の経過により経年劣化を起こします」としたうえで、製造後の耐用年数を約5年程度と案内しています。
理由は、ソールに使われているポリウレタンという素材にあります。これは空気中の水分と反応して、ゆっくり分解していきます。いわゆる加水分解ですね。
ただ、前触れがほとんどないのが厄介なところで、見た目はきれいなまま、歩いている途中で突然ソールがはがれます。山の中でこれをやると、下りられなくなります。
「製造から」であって「買ってから」ではない
もうひとつ、地味に大事なところです。5年の起点は作られた日であって、買った日ではないんですよね。
型落ちを安く買ったり、長く在庫になっていたものを買ったりすると、手元に来た時点ですでに何年か過ぎていることがあります。セールの靴を買うときは、そこも頭の片隅に置いておくといいかなと。
たまにしか行かない人ほど、高い靴は損をする
ここから素直に出てくる話がある気がします。
年に2〜3回しか山に行かないなら、5万円の靴を買っても元は取れません。15回くらい履いたところで、年数のほうが先に来てしまうからです。
それなら2万円前後の靴を、5年ごとに買い替えるほうが理にかなっています。逆に月に何度も行く方なら、高い靴を張り替えながら使うほうが安く付きます。値段ではなく、行く回数で決めてください。

買い替えか、張り替えか
ソールが減ってきたときの判断ですね。金額がはっきりしているので、線を引けます。
張り替えは15,000円
モンベルの場合、リソール(ソールの張り替え)は一般的な登山靴で15,000円(税込)です。ローカットのかかとの当て布修理なら、片足2,000〜2,500円ですね。
| 靴の値段 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 2万円くらい | 買い替え | 張り替え代が値段の7割以上になります |
| 3万円台 | どちらでも | 愛着とサイズの合い方で決めてください |
| 4〜5万円 | 張り替え | 足に合っている靴は、買い直すほうが難しいです |
張り替えられない靴もある
ここは先に確認してください。軽登山靴や長靴など、リソールに対応していないモデルがあります。ちなみに私はこれを知らずに問い合わせて、断られました。
それと他社メーカー製の靴は受け付けてもらえません。モンベルの靴はモンベルへ、というのが基本です。キャラバンは自社にリペアルームを持っていて、預かり期間の目安は4〜6週間とされています。山行の予定があるなら、1か月以上前に出す必要がありますね。
張り替えても戻らないことがある
正直なところを書いておくと、メーカー自身が「靴全体の消耗度により回復する機能と回復度合に個体差があります」「状態によってはリソールより買い替えをおすすめする場合がございます」としています。
ソールだけ新品にしても、アッパーがくたびれていれば足を支えてくれません。迷ったら店で見てもらってください。それがいちばん早いです。
買い替えのサインは、かかととつま先
日常的に見るのはこの2か所です。モンベルの点検の案内でも「かかとやつま先部の減りが目立ってきてはいませんか?」と、そこを挙げています。
減ったソールで困るのは濡れた岩と下りの土です。どちらも転ぶと大きいので、山に行く前の晩に靴底をひっくり返して見る、くらいの習慣があると安心かなと思います。

帰ってきたら、その日のうちに
ここからは手入れの話です。特別な道具はほとんど要らないかなと思います。
洗う手順
メーカーが出している順番はこうです。
①インソールと靴ひもを外す。この2つは洗濯ネットに入れて洗濯機で洗えます。
②アウトソールを水洗い。頑固な土には使い古しの歯ブラシ、溝につまった石はマイナスドライバーでかき出します。
③洗い桶に靴全体を浸す。
④洗浄液を作る。5〜8Lの水に、専用クリーナーをキャップ1杯(15mL)。
⑤スポンジか靴用ブラシで、汚れをかき出すように。
⑥十分にすすぐ。
「登山靴を水につけていいのか」と不安になる方が多い気がします。でもつけて大丈夫です。むしろ泥を残したまましまうほうが傷みます。
泥が落ちないときは、乾かしてから
濡れた泥をこすると、生地の目に押し込むことになります。いったん乾かして、パリパリになってからブラシで落とすほうがきれいに取れます。
私はこれを知らずに、帰ってすぐ濡れた泥をゴシゴシやっていました。落ちないわけですよね。あれは逆効果でした。
間違えやすいのは、乾かし方
ここがいちばん失敗の多いところなんですよね。
まずタオルを靴の外と内から挟むように強く押し当てて、水分を絞り出します。そのうえで直射日光を避けて、風通しのよい日陰に平置きし、2〜3日かけて乾かします。
直射日光やヒーターで急激に乾かすと、皮革がヒビ割れます。早く乾かしたい気持ちは分かるのですが、ここは待つしかありません。新聞紙を詰めて、途中で入れ替えると少し早まります。
乾いたら防水処理
最後に撥水を戻します。順番があって、布製ははっ水スプレーだけ、革製は保革クリームを塗ってからはっ水スプレーです。
点検するのはタン、金具、靴ひも、アッパー、ランドラバー、ミッドソール、アウトソール。とくにランドラバー(つま先を覆っているゴム)とアッパーの境目は、はがれが出やすいところなので見ておいてください。
しまい方で、寿命が変わる
最後にこれです。あとは手入れより、こちらのほうが差が出る気がします。
いちばんやりがちで、いちばん良くないしまい方
買ったときの箱に入れて押し入れ。これです。
モンベルの案内では、保管は「風通しが良く、湿度が高くならない場所で、直射日光を避けて」とされています。避けたいのは購入時の靴箱や収納袋など風通しの悪い入れ物と、車の中や野外の物置など高温になる場所です。
加水分解は水分と熱で進むので、湿気がこもる箱の中は、いちばん悪い条件がそろっています。私も1足これでだめにしました。
下駄箱に立てておくだけでいい
難しいことをする必要はありません。玄関の風が通るところに、そのまま置いておくだけで十分ですよね。
もう一段やるなら、乾燥剤の入った袋に入れておくと「加水分解などの劣化を和らげることができる」とされています。ただし完全に乾かしてからしまうことが前提です。生乾きで密閉すると、逆効果になります。
シーズンの前に、必ず見る
久しぶりに出してきた靴は、履く前にソールの側面を指でぐっと押してみてください。ひび割れや、アッパーとの境目の浮きがないか。
少しでも怪しかったら、山では履かないでください。登山口で気づけばまだ帰れますが、稜線で気づいたら詰みます。
よくある質問
登山靴の寿命は何年ですか?
約5年です。モンベルは「使用の有無にかかわらず時間の経過により経年劣化を起こします」としたうえで、製造後の耐用年数を約5年程度と案内しています。
大事なのは履いた回数ではなく、作られてからの年数だということ。「あまり履いていないから大丈夫」は通用しません。
ほとんど履いていない靴でも、劣化しますか?
します。ソールに使われているポリウレタンが、空気中の水分と反応してゆっくり分解していきます(加水分解)。
見た目はきれいなまま、歩いている途中で突然ソールがはがれます。久しぶりに出してきた靴は、履く前にソールの側面を指で押して、ひび割れや浮きがないか確かめてください。
ソールの張り替えはいくらですか?
モンベルの場合、一般的な登山靴で15,000円(税込)です。ローカットのかかとの当て布修理なら片足2,000〜2,500円。
目安として、2万円くらいの靴なら買い替え、4〜5万円なら張り替えかなと思います。ただし軽登山靴や長靴は張り替えに対応していないモデルがあり、他社メーカー製の靴は受け付けてもらえません。
張り替えにはどれくらいかかりますか?
キャラバンは自社にリペアルームを持っていて、預かり期間の目安を4〜6週間としています。
つまり山行の予定があるなら、1か月以上前に出す必要があります。シーズン直前に思い立つと間に合いません。
登山靴は水で洗ってもいいですか?
洗えます。メーカーの手順でも、洗い桶に靴全体を浸すところから始まります。
順番は①インソールと靴ひもを外す(洗濯ネットで洗濯機可)②アウトソールを水洗い ③桶に浸す ④5〜8Lの水にクリーナーをキャップ1杯(15mL)⑤ブラシで汚れをかき出す ⑥十分にすすぐ。泥を残したまましまうほうが、よほど傷みます。
泥が落ちないときはどうすればいいですか?
いったん乾かしてから落としてください。濡れた泥をこすると、生地の目に押し込むことになります。
パリパリに乾いてからブラシでかき出すと、きれいに取れます。溝につまった石は、マイナスドライバーで押し出すのが早いです。
早く乾かしたいのですが、ドライヤーやストーブはだめですか?
やめてください。直射日光やヒーターで急激に乾かすと、皮革がヒビ割れます。
タオルを靴の外と内から挟むように強く押し当てて水分を絞ってから、直射日光を避けて風通しのよい日陰に平置きし、2〜3日かけて乾かします。新聞紙を詰めて途中で入れ替えると、少し早まります。
登山靴はどこにしまえばいいですか?
玄関の風が通るところに、そのまま置いておくだけで十分です。
いちばん良くないのが買ったときの箱に入れて押し入れ。湿気がこもって加水分解が進みます。車の中や野外の物置も高温になるので避けてください。乾燥剤入りの袋に入れると劣化を和らげられますが、完全に乾かしてからが前提です。
まとめ
- 登山靴の寿命は約5年。しかも履いた回数ではなく、作られてからの年数です
- 使わなくてもソールのポリウレタンは劣化します。「あまり履いていないから大丈夫」は通用しません
- だからたまにしか行かない人ほど、高い靴は元が取れません。行く回数で決めてください
- 張り替えは15,000円(税込)。2万円の靴なら買い替え、4〜5万円なら張り替えが目安です
- 軽登山靴や長靴は張り替えできないモデルがあり、他社製の靴は受け付けてもらえません
- 預かりは4〜6週間。山行の1か月以上前に出してください
- 洗うときは水につけて大丈夫。泥を残したまましまうほうが傷みます
- 乾かすのは日陰に平置きで2〜3日。直射日光とヒーターは皮革がヒビ割れます
- しまうのは玄関の風が通るところ。買ったときの箱+押し入れがいちばん良くありません
※耐用年数と修理の料金は2026年9月にモンベルの公式案内で確認したものです。他社の靴は、そのメーカーの案内を見てください。






私が1足だめにしたのは、買ったときの箱に入れて押し入れにしまっていた靴でした。
3年ぶりに出してきて、見た目はきれいなままだったので、そのまま山に持っていきました。登り始めて30分で、片方のソールが半分はがれました。
幸い登山口から近かったので引き返せましたが、あれが稜線だったらと思うとぞっとします。久しぶりの靴は、履く前にソールを押してみてください。それだけで防げます。