Home トレッキング トレッキングコース紹介 中央分水嶺トレイルを歩く|日本海と太平洋を分ける稜線

中央分水嶺トレイルを歩く|日本海と太平洋を分ける稜線

信州北部を縦断する「中央分水嶺トレイル」は、太平洋と日本海の分かれ目=分水嶺をたどる静かなロングトレイル。全行程を紹介しつつ、1泊2日で楽しめるモデルルートや宿泊地情報もまとめました。登山でも観光でもない、素朴で奥深い“歩く旅”へ。
目次
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中央分水嶺って何?|高原をつなぐ“水の分かれ道”を歩く

出典 : syasin.biz

「中央分水嶺トレイル」と聞いて、すぐにピンとくる人は少ないかもしれません。
でも、名前の由来を知ると、ちょっと歩いてみたくなるはずです。

“分水嶺”とは、降った雨が太平洋と日本海のどちらに流れていくかを分ける境界線のこと。
その境界線、つまり“水の分かれ道”の上を、静かに、そしてつなぐように歩いていくのがこのトレイルです。

今回紹介するのは、長野県中部、霧ヶ峰から美ヶ原高原をつなぐ「霧ヶ峰・美ヶ原 中央分水嶺トレイル」
全長約38km、5つのコースに分かれており、高原の展望と歴史の道をつなぐ、やさしい縦走路です。

山を登るというよりは、「高原の道を旅する」ような感覚。
八島湿原や車山、美ヶ原など、信州らしい風景が次々と現れるこのルートは、ロングトレイル入門としてもぴったりです。

今回は、全体像を紹介しつつ、1泊2日で歩けるおすすめモデルルートもご案内。
歩いたあとも、きっとまた誰かと歩きたくなる“やさしい分水嶺”の旅へ、出かけてみませんか?

中央分水嶺トレイル全体の魅力と特徴

霧ヶ峰・美ヶ原 中央分水嶺トレイルは、長野県の中部、諏訪エリアから松本方面へと南北に走る約38kmの高原ルートです。
この道の面白さは、ただ山を登るのではなく、「稜線の道をつなぎながら旅する感覚」にあります。

5つのルートに分かれた全体構成

出典 : bepal.net
  • トレイルは大きく5つの区間に分かれています。

    1. 霧ヶ峰ルート(車山肩〜八島湿原)

    2. 和田峠ルート(八島湿原〜和田峠)

    3. 三峰山ルート(和田峠〜三峰山)

    4. 武石峰ルート(三峰山〜武石峠)

    5. 美ヶ原ルート(武石峠〜美ヶ原高原)

    それぞれの区間ごとに、風景も雰囲気もがらっと変わるのがこのトレイルの面白さ。
    湿原・峠道・展望尾根・牧場地帯といった信州らしい風景がぎゅっと詰まっていて、歩いていて飽きません。

「歩きやすさ」と「登山っぽさ」のちょうどいい中間

出典 : bepal.net

このトレイルのもうひとつの魅力は、登山ほどきつくなく、ハイキングよりはしっかり歩ける絶妙な難易度にあります。

標高は1,500〜2,000m前後ですが、全体的に起伏はなだらかで、
装備を整えれば初心者〜中級者でも十分楽しめるルート設計になっています。

整備された遊歩道や車道跡も多く、分岐や道標もわかりやすいので、
「信越トレイルはちょっと長いかも……」という人の“ロングトレイルデビュー”にもおすすめです。

おすすめモデルルート|1泊2日で歩く霧ヶ峰〜美ヶ原の縦走旅

中央分水嶺トレイル全体を歩くには2〜3日かかりますが、
その中でも特に景色がよく、アクセス・宿泊のしやすい区間としておすすめなのが、
霧ヶ峰(車山肩)から美ヶ原高原を目指す縦走ルート(約22〜24km)です。

【1日目】車山肩〜八島湿原〜和田峠(約10km)

出典 : fukei2023.up.seesaa.net

スタートは標高1,800mの車山肩(霧ヶ峰)
ここから八島湿原、鷲ヶ峰を経て、静かなトレイルを進んでいきます。

八島湿原では、開けた空と湿地帯の風景が印象的。
夏はニッコウキスゲやワレモコウなど高原植物が見られ、季節の移ろいを感じられます。

午後には和田峠(旧中山道沿い)に到着
周辺には「和田宿温泉 ふれあいの湯」などの宿泊施設があり、温泉と郷土料理でゆっくり一泊できます。

※歩行時間は各日4〜5時間程度で無理のない配分にしています
※宿泊は北野天満温泉や湯滝温泉、下山後の切明温泉などを組み合わせ想定です

【2日目】和田峠〜三峰山〜武石峠〜美ヶ原高原(約12〜14km)

出典 : bepal.net

2日目は稜線の縦走区間。
三峰山を越えて、徐々に標高を上げながら武石峠〜美ヶ原高原(王ヶ頭・王ヶ鼻)を目指します。

この区間は、左手に浅間山、右手に中央アルプスを望む大展望の稜線が魅力。
山頂エリアに着けば、美ヶ原の広い牧草地と美術館、電波塔の風景が広がります。

下山後は美ヶ原温泉や松本市内での宿泊/食事/観光も選択肢にできるので、旅の締めくくりにもぴったりです。

東京起点のモデルスケジュール

日程時間帯行動内容
0日目東京駅 → 茅野駅(約2.5時間)茅野駅周辺または車山高原エリアで前泊
1日目茅野駅 → 車山肩(バス)車山肩からトレイル開始
  八島湿原・鷲ヶ峰を経て和田峠へ(約10km)
  和田宿温泉などで宿泊・入浴・夕食
2日目和田峠出発→三峰山〜武石峠〜美ヶ原高原(約12〜14km)
  美ヶ原高原到着・昼食・美術館など
  夕方松本駅へ下山 → 新幹線または特急で東京へ(約2.5時間)

補足

  • 【東京→茅野駅】
     中央本線特急「あずさ」で約2時間20分

  • 【茅野駅→車山肩】
     季節運行バスあり(夏〜秋シーズンのみ)
     → 乗合タクシー・宿泊施設の送迎利用も視野に入れる

  • 【美ヶ原→松本駅】
     バス(美ヶ原高原美術館→松本駅)またはタクシー+路線バス

装備と歩き方のコツ|高原トレイルだからこそ気をつけたいこと

中央分水嶺トレイルは、標高も距離もそこまでハードではありませんが、軽装でOKというわけでもないのが難しいところ。
登山とハイキングの中間、でも宿泊拠点をつないで進むという点では、ちょっとした“縦走旅”に近いスタイルです。

ここでは、そんな“分水嶺の歩き方”に合った装備と宿泊のポイントをまとめました。

靴と服装|山歩きベース+冷え&ぬかるみ対策を

ルートは基本的に整備されていますが、ぬかるみや石の多い箇所もあります。
おすすめは、ミッドカットの軽量登山靴。防水性とクッション性を重視しましょう。

また、標高が高く、風の通り道になっているため、夏でもウィンドシェルや軽量レインジャケットは必携。
特に朝夕や霧の出る日は、体感温度がぐっと下がります。

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ザックと荷物|20〜30Lで軽快に

全体を通して補給ポイント(売店・自販機など)は非常に少ないため、出発前に飲料と行動食はしっかり準備しましょう。

  • ザック容量:20〜30Lで十分

  • 必須:地図(紙 or GPS)、レインウェア、水1.5〜2L、軽食、モバイルバッテリー

  • あれば便利:帽子・日焼け止め・トレッキングポール(長めの下り対策)

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キャンプは不可。宿泊は温泉宿や観光旅館を活用

出典 : URLを入れます

このトレイルには、山小屋やテント場などの指定キャンプ地はありません
歩き旅のスタイルとしては、ふもとの宿泊施設を基点にセクションごとに歩くか、全線を1泊2日で踏破する旅スタイルが基本になります。

おすすめ宿泊地(例):

  • 和田峠周辺:和田宿温泉

  • 下山後:美ヶ原高原美術館そば/松本市内の旅館やホテル

宿によっては登山口や駅までの送迎がある場合もあるので、早めに予約して相談するのがベストです。

FAQ|中央分水嶺トレイルって実際どうなの?

Q. 初心者でも歩けますか?

歩道はよく整備されていて、案内板も多く、道に迷いにくい構成です。
標高差もそれほど大きくなく、ハイキング〜ライトな縦走感覚で楽しめるルートなので、
装備と計画をしっかりすれば、初心者でも十分に歩けます。

ただし、標高が高いため、気温や天候の変化には注意が必要です。

Q. コースはどこからスタートすればいい?

5つのルート(霧ヶ峰〜美ヶ原)に分かれており、どこからでも自由に歩き始めることができます。
はじめての方には、アクセスしやすく景色も抜群な車山肩(霧ヶ峰)からスタートするコースが人気です。

宿や交通機関の関係もあるので、自分のスタイルに合った区間を選んで無理のない計画を立てましょう。

Q. トイレや休憩所はある?

整備された高原トレイルではありますが、山中に公衆トイレはあまり多くありません。
出発前に駅や駐車場などで済ませておき、携帯トイレを持参するのが安心です。

ベンチや東屋などの休憩ポイントは一部に設けられていますが、こまめな休憩と水分補給を意識しましょう。

Q. 日帰りでも楽しめますか?

はい、一部の区間は2〜5時間で歩ける日帰りコースとして楽しめます。
特に霧ヶ峰〜八島湿原や、美ヶ原高原一帯は散策向けのコースも整備されています。

ただし、縦走するなら1泊2日がおすすめ。宿泊を挟むことで、トレイルの魅力をもっと深く味わえます。

まとめ|登山でも観光でもない、“分水嶺を歩く”という選択

中央分水嶺トレイルは、険しい山ではなく、なだらかな稜線と高原の景色を楽しむロングトレイル。
霧ヶ峰から美ヶ原まで、ゆるやかに“水の分かれ道”をたどるこの道は、
登山とも観光とも違う、ちょうどいい旅のかたちを教えてくれます。

整備された道、心地よい標高、静かな自然、そしてアクセスしやすい拠点。
1泊2日で味わえる“非日常”として、ぜひ候補に入れてみてください。

歩きはじめるのに、特別な理由はいりません。
“なんか気持ちよさそう”——そんな直感が、最初の一歩になります。

他にもおすすめトレイルあります!

※このブログでは、コースの詳細や見どころをあえて控えめに紹介しています。
はじめてその景色を見たときの「わっ…!」という感動を、できるだけそのまま味わってもらいたいから。
ルートの存在だけ知って、「あとは自分の体験で完成させる」――そんな旅のきっかけになれば嬉しいです。