空気が澄み渡り、遠くの山々まで見渡せる冬の低山。雪を踏みしめる音や、静寂な森の美しさは、この時期だけの特別な体験です。
しかし、初めて冬山に挑戦する方がやりがちな失敗があります。それは「寒いからといって、一番分厚い冬山用靴下を買ってしまうこと」です。「えっ、寒いんだから厚いほうがいいんじゃないの?」と思われるかもしれません。
実は、夏用の登山靴(3シーズン靴)をそのまま使う場合、極厚の靴下は逆効果になることが多いのです。結論から言うと、チェーンスパイクを使うような冬の低山ハイクには、「中厚手(ミッドウェイト)~厚手(フルクッション)」がベストバランスです。
この記事では、なぜ「極厚」がダメなのかという理由と、3シーズン靴で快適に歩くための「正解の靴下」を7つ厳選してご紹介します。
なぜ「極厚手」じゃダメ?冬の低山靴下の選び方
3シーズン靴での圧迫リスク|極厚は逆に冷える
3シーズン用(春夏秋)の登山靴は、保温材入りの冬靴に比べて内部の容積が狭く設計されています。そこに厳冬期用の「極厚(エクスペディション)」靴下を無理やり履くとどうなるでしょうか?
靴の中で足がパンパンに圧迫され、血流が止まってしまいます。血液が巡らないと体温は下がる一方なので、「分厚い靴下を履いているのに、足先が冷たくて感覚がない」という状態に陥ります。さらに、圧迫は靴擦れの原因にもなります。
チェーンスパイクの締め付け対策
冬の低山では、チェーンスパイクや軽アイゼンを使用する場面が多くなります。これらはゴムバンドで靴に固定するため、長時間歩くとゴムが足の甲に食い込んで痛くなることがあります。
この痛みを防ぐには、足の甲部分にもパイル地(クッション)がある「フルクッション」タイプを選ぶのが正解です。薄手の靴下や、足裏にしかクッションがないタイプは避けましょう。
汗冷え対策も重要
標高1,000m前後の低山ハイクは、登りで意外と汗をかきます。綿(コットン)素材は汗を吸って冷たくなるため絶対にNGです。ウール(メリノウール)混紡や、吸汗速乾性に優れた化学繊維の靴下が必須です。
厚みの分類と適応温度帯
メーカーによって呼び方は異なりますが、大まかな厚みの目安は以下の通りです。
| 厚み分類 | クッション種類 | 適応温度 | 適した用途 |
|---|---|---|---|
| ライトウェイト | ライトクッション | 15℃以上 | 夏山ハイク |
| ミッドウェイト | ミディアムクッション | 5~15℃ | 3シーズン全般 |
| ミッドウェイト | フルクッション | 0~10℃ | 冬の低山(本記事対象) |
| ヘビーウェイト | エクストラクッション | -5~5℃ | 寒がり向け・サイズ調整 |
| エクスペディション | 極厚 | -10℃以下 | 厳冬期(冬靴専用) |
【一目で比較】おすすめ冬山用靴下 比較表
各商品の特徴を一覧表で比較できます。用途や予算に合わせて選んでください。
| 製品名 | 特徴・評価 | 価格 | ウール比率 | 厚み | 特殊機能 | おすすめの人 |
|---|---|---|---|---|---|---|
|
ダーンタフ ハイカー ブーツソック ミッドウェイト フルクッション
| 生涯保証・耐久性No.1 ★★★★★ | 約4,730円 | 66% | ミッドウェイト フルクッション | ✓ 生涯保証 ✓ 高密度編み | 長く使いたい人 頻繁に登る人 |
|
スマートウール ハイククラシック フルクッション クルー
| 履き心地No.1・柔らかな定番モデル ★★★★★ | 約3,520円 | 67% | フルクッション | ✓ リサイクルナイロン ✓ 柔らか履き心地 | 快適性重視 初心者 |
|
ブリッジデール パフォーマンス・ハイク
| フィット感重視・ズレ防止機能 ★★★★☆ | 約3,850円 | 44% | ミッドウェイト | ✓ 部位別サポート ✓ アーチバンド | ズレが嫌な人 玄人向け |
|
スマートウール ハイククラシック エクストラクッション クルー
| 寒がり専用・最厚手モデル ★★★★☆ | 約3,850円 | 56% | エクストラクッション (最厚手) | ✓ 高保温力 ✓ 耐久性重視設計 | 極度の寒がり 靴に余裕がある人 |
|
モンベル メリノウール アルパイン ソックス
| コスパ最強・デビューに最適 ★★★★☆ | 約2,860円 | 63% | 厚手 (アルパイン) | ✓ コスパ◎ ✓ 必要十分な性能 | 予算を抑えたい人 初めての冬山 |
|
ファイントラック メリノスピンソックスEXP
| 速乾性No.1・汗冷え防止 ★★★★★ | 約3,960円 | 59% | 極厚(EXP) | ✓ 速乾ハイブリッド糸 ✓ 耐摩耗70%向上 | 汗かき 運動量が多い人 |
|
ファイントラック ドライレイヤー インナーソックス
| 濡れ対策の切り札・インナー専用 ★★★★★ | 約2,640円 | 0% (ナイロン100%) | 極薄 (インナー用) | ✓ 撥水メッシュ ✓ 重ね履き専用 | 全員におすすめ 濡れ・冷え対策 |
【サイズ選びの補足】
紹介したモデルの多くには女性用(Women's)も展開されています。足のサイズが24cm以下の方は、女性用モデルの方がかかとの収まりが良い場合が多いです。購入時は「Men's」「Women's」の表記を確認してください。
【失敗しない定番】バランス最強の「中厚手」3選
まずは、「これを選んでおけば間違いない」という王道の3足を紹介します。いずれも3シーズン靴に干渉しない絶妙な厚みと、チェーンスパイクの使用に耐えるクッション性を備えています。
ダーンタフ ハイカー ブーツソック ミッドウェイト フルクッション|生涯保証・耐久性No.1

ダーンタフ ハイカー ブーツソック ミッドウェイト フルクッション 1405 の価格を比較する
「絶対に穴が開かない」という自信の表れである生涯保証制度を持つ、アメリカ生まれのタフなソックスです。
チェーンスパイクを使用する雪道歩きは、通常の登山以上に靴下への摩擦負荷がかかりますが、高密度に編み込まれたこの靴下なら安心です。履き心地はやや硬めでしっかりしており、「道具としてガシガシ使い倒したい」というハイカーに最適です。
スペック:メリノウール66%、ナイロン32%、ポリウレタン2% / 定価:4,730円(税込) / 品番:1405
こんな人におすすめ:耐久性重視の人・一つのものを長く使いたい人
スマートウール ハイククラシック フルクッション クルー|履き心地No.1・柔らかな定番モデル

スマートウール ハイククラシック フルクッション クルー の価格を比較する
登山用ソックスの世界的ベストセラー。ダーンタフと比べると、こちらはウールの風合いを生かした柔らかい履き心地が特徴です。
足裏だけでなく、すねや甲の部分までパイル(クッション)が配置されている「フルクッション」モデルなので、チェーンスパイクのゴムバンドの食い込み痛を効果的に軽減してくれます。リサイクルナイロンを使用した環境配慮型の製品でもあります。初めての冬山用靴下として、最も癖がなく扱いやすい一足です。
スペック:メリノウール67%、ナイロン8%、リサイクルナイロン23%、ポリウレタン1%、ポリエステル1% / 定価:3,520円(税込) / 品番:SW70116
こんな人におすすめ:履き心地重視の人・迷って決められない人
スマートウール ハイククラシック フルクッション 公式ページ

筆者の愛用はこれ。初めて買った登山用靴下もスマートウールでしたね。スルッと履けて暖かくて文句無しです。余談ですが、山行終わって登山靴と靴下脱いだときの開放感?って最高ですよねー。
ブリッジデール パフォーマンス・ハイク|フィット感重視・ズレ防止機能

ブリッジデール パフォーマンス・ハイク の価格を比較する
イギリスの老舗ブランド、ブリッジデールの特徴は「フィット感」へのこだわりです。
足首や土踏まずなど、部位によって編み方を変えることで、強力なサポート力を実現しています。雪の斜面でチェーンスパイクを効かせて歩く際、靴の中で靴下がズレる不快感を最小限に抑えてくれます。「歩行性能」を追求したい玄人好みのモデルです。
スペック:ウール44%(ニュースウール26%+メリノウール18%)、ナイロン38%、ポリプロピレン17%、ポリウレタン1% / 定価:3,850円(税込)
こんな人におすすめ:靴下のズレやシワが気になる人・フィット感重視の人
【悩み別】寒がり・汗かき・コスパで選ぶ4選
ここからは、「とにかく寒いのが苦手」「予算を抑えたい」といった特定の悩みを持つ方に向けたおすすめ商品を紹介します。
スマートウール ハイククラシック エクストラクッション クルー|寒がり専用・最厚手モデル

スマートウール ハイククラシック エクストラクッション クルー の価格を比較する
「3シーズン靴だけど、どうしても足先の冷えが怖い…」という寒がりの方のための最終兵器です。
前述のフルクッションより一段階厚い「エクストラクッション(旧ヘビークルー)」で、ハイキングモデルとしては最厚手の部類に入ります。かなり肉厚なので、3シーズン靴で履く場合は靴紐を少し緩めて調整する必要がありますが、保温力は抜群です。
スペック:メリノウール56%、ナイロン42%(リサイクル含む)、ポリウレタン2% / 定価:3,850円(税込) / 品番:SW70117
※メリノ混率が低めなのは、厚手モデルのため耐久性を優先してナイロン比率を高めているためです。
こんな人におすすめ:極度の寒がりの人・靴のサイズに余裕がある人
モンベル メリノウール アルパイン ソックス|コスパ最強・デビューに最適

モンベル メリノウール アルパイン ソックス 1118418 の価格を比較する
海外ブランドの靴下が3,000〜4,000円台なのに対し、こちらは2,000円台で購入できる圧倒的なコストパフォーマンスが魅力です。
安くても品質は確かで、ウールの保温性と防臭性をしっかり備えています。モンベルにはさらに厚手の「エクスペディション(極厚)」もありますが、3シーズン靴で履くなら、こちらの「アルパイン(厚手)」が正解です。浮いた予算をチェーンスパイク代に回しましょう。
スペック:ウール63%、ナイロン28%、ポリエステル8%、ポリウレタン1% / 定価:2,860円(税込) / 品番:1118418
こんな人におすすめ:予算を抑えたい人・モンベル会員の人
ファイントラック メリノスピンソックスEXP|速乾性No.1・汗冷え防止

ファイントラック メリノスピンソックスEXP FSU0511 の価格を比較する
日本のメーカー、ファイントラックが開発した高機能ソックスです。
未防縮メリノウールと高機能ナイロンを混紡した糸を使用しており、一般的なウールソックスに比べて乾きが早いのが特徴です。低山ハイクは登りで暑くなりやすく汗をかきがちですが、その汗が休憩中に冷えてしまう「汗冷え」を強力に防いでくれます。
スペック:ウール59%、ナイロン35%、ポリエステル5%、ポリウレタン1% / 定価:3,960円(税込) / 品番:FSU0511
※2022年秋冬にリニューアル。耐摩耗性が約70%向上しています。
こんな人におすすめ:汗かきの人・運動量が多い人
ファイントラック ドライレイヤー インナーソックス|濡れ対策の切り札・インナー専用【イチオシ】

ファイントラック ドライレイヤー インナーソックス FSU0224 の価格を比較する
これはメインの靴下ではなく、靴下の下に履く薄手のインナーソックスですが、冬の低山ハイクにおいて「陰の主役」と言えるアイテムです。
撥水加工されたメッシュ生地が、かいた汗や、靴から染みてきた雪解け水を肌から遠ざけ、足を常にドライに保ちます。「濡れ」を肌に伝えないことで、冷えを根本から防ぐ魔法のような一枚。3シーズン靴は完全防水でないことも多いため、プラスワンの保険として強くおすすめします。
スペック:ナイロン100%(撥水加工メッシュ) / 定価:2,640円(税込) / 品番:FSU0224
※旧品番FSU0214から変更。耐久性が大幅に向上しています。
こんな人におすすめ:全員(特に足先の冷えや濡れが心配な人)
【品番注意】現行モデルはFSU0224です。以前のFSU0214は廃番となっています。購入時は品番をご確認ください。
ファイントラック ドライレイヤー インナーソックス 公式ページ

店舗で進められて試しに購入してみたインナーです。ミレーのドライナミックの足バージョンですね。ミレーのドライナミックでこれ系のインナーの快適さは実感済みでしたが、足濡れ対策におすすめですよ!靴下はちょっと濡れてるけど、足はドライという不思議な体験ができます。
よくある質問(FAQ)
普通の厚手の靴下(ユニクロなど)じゃダメですか?
冬山ではおすすめしません。一般的なファッション用の厚手靴下は、コットン(綿)が含まれていることが多く、汗を吸うと乾かずに冷たくなってしまいます。必ずウールや化繊の登山専用ソックスを選んでください。
靴下の二重履きはどうですか?
基本的にはおすすめしません。靴の中で生地同士が滑って靴擦れの原因になったり、圧迫が強くなって血行不良を招くリスクがあります。ただし、最後に紹介した薄手のインナーソックス(ドライレイヤーなど)との重ね履きは非常に有効です。
洗濯方法は?
ウール製品ですが、登山用ソックスの多くは洗濯機で洗えます。ただし、長持ちさせるために裏返して洗濯ネットに入れ、柔軟剤は使わずに中性洗剤で洗うことを推奨します。乾燥機の使用は縮みの原因になるので避けましょう。
サイズ選びのコツは?
登山靴下はフィット感が命です。「大は小を兼ねる」ではありません。かかとの位置がピタリと合うサイズを選んでください。サイズ境界の場合は、メーカーの推奨サイズ表を確認しましょう。
まとめ:足元を快適にして冬の低山を楽しもう
冬の低山ハイクを快適に楽しむための靴下選び、ポイントは以下の3点です。
- 3シーズン靴には「中厚手(ミッドウェイト)」が正解(極厚は逆効果)
- チェーンスパイク対策には甲にもクッションがあるものを選ぶ
- 濡れ冷え対策にはインナーソックスの追加が有効
【重要】登山靴を買う予定の方へ
もしこれから登山靴を購入する予定なら、「冬用靴下を履いた状態」で靴のサイズ合わせをしてください。夏用の薄手靴下で合わせた靴に冬用靴下を履くと、キツくて入らない・圧迫されて痛いということがよく起こります。必ず実際に使う厚みの靴下で試し履きしましょう。
「靴下を変えるだけで、こんなに暖かさが違うのか!」と驚くはずです。ぜひ自分の足と靴に合った一足を見つけて、澄んだ空気の冬山ハイキングに出かけてみてください。安全で楽しい山行を!







チェーンスパイクや軽アイゼンが必要な山に行くときには、冬の低山用靴下は必須です。というか、登山靴と登山用靴下は切っても切り離せないですね。登山靴の試し履きのときも必要ですし。なんとなく選ぶのではなく、自分にあった靴下を選びましょう!