テント泊ザック選びで失敗しないための3つのポイント
テント泊登山は、衣食住のすべてを背負って歩く究極のアウトドア体験です。その相棒となるザック選びは、まさに登山の快適性を左右する最重要事項。しかし、「50-60Lクラス」といっても種類が多く、「どれを選べばいいかわからない」「高価な買い物なので失敗したくない」という悩みを持つ方は少なくありません。
ここでは、初めてのテント泊ザック選びで絶対に押さえておきたい3つの重要ポイントを解説します。
容量は「50-60L」が1〜2泊のベストサイズ
テント泊初心者が最初に狙うべきサイズは、ズバリ50〜60Lです。このサイズ帯は、テント、シュラフ(寝袋)、マット、着替え、食料、水、クッカー(調理器具)といった1〜2泊分の基本装備が無理なく収まる容量です。
40L台ではパッキング(荷造り)に高度な技術が必要になり、70L以上ではザック自体が重くなりすぎて体力を消耗します。また、大きすぎるザックに荷物が少ないと内部でスカスカになり、荷物が揺れて歩きにくくなるという問題もあります。まずは汎用性の高い50-60Lモデルを選び、パッキング技術が向上したら小型化を目指すのが王道のステップアップです。
背面長とフィッティングが最重要
どんなに高機能なザックでも、自分の体に合っていなければただの重荷です。特に重要なのが「背面長(トルソー)」です。これは首の後ろの骨から腰骨の上端までの長さのことで、ここが合っていないと肩や腰に激痛が走る原因になります。
多くのモデルには「S/M/L」といったサイズ展開や、背面長を調整できる機能が備わっています。通販で購入する場合でも、必ず自分の背面長を計測し、サイズチャートと照らし合わせることが失敗を防ぐ鍵となります。
重量は2kg前後が目安、ただし背負い心地とのバランスが大切
近年は「ウルトラライト(UL)」ブームで軽量ザックが人気ですが、初心者がいきなり1kg以下の超軽量モデルを選ぶのは危険です。軽量ザックはフレームやパッドを削ぎ落としているため、荷物が重くなると荷重がダイレクトに肩に食い込みます。
初心者の目安は本体重量2.0kg〜2.5kg前後のモデル。このクラスはしっかりしたフレームと分厚いパッドを備えており、「ザック自体は重くても、背負うと軽く感じる」という魔法のような現象が起きます。初めてのテント泊では、軽さよりも「安定感と疲れにくさ」を優先しましょう。
7モデル徹底比較表
⚠️ 購入前に必ず背面長(トルソー)を測定してください
自分の体に合わないザックは、どんなに高機能でも快適に背負えません。家族や友人に手伝ってもらい、首の後ろの骨(第七頸椎)から腰骨上端までの長さを測りましょう。
| 製品名 | 特徴・評価 | 価格 | 容量 | 重量 | 特徴 | おすすめタイプ |
|---|---|---|---|---|---|---|
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Gregory バルトロ65 M
| 快適性No.1 ★★★★★ | 約57,200円 | 65L | 約2.23kg | FreeFloat A3・付属品充実 | 快適重視・初心者 |
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Osprey イーサープラス60 M/L
| 剛性No.1 ★★★★★ | 約66,000円 | 60L | 約2.5kg | デイリッド対応・超剛性 | 重装備・腰痛対策 |
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Millet サースフェーNX 50+
| 軽量・万能 ★★★★☆ | 約39,600円 | 50L+ | 約1.75kg | 撥水性能・日本企画 | 軽量重視・バランス派 |
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mont-bell チャチャパック60
| コスパ最強 ★★★★☆ | 約38,500円 | 60L | 約2.18kg | U字型ジッパー・収納多 | 予算重視・初心者 |
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karrimor クーガーエイペックス60+
| 調整機能◎ ★★★★☆ | 約46,200円 | 60L+ | 約2.42kg | SAシステム・拡張対応 | フィット追求・通販購入 |
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Mystery Ranch ブリッジャー55 M
| 機能美 ★★★★☆ | 約53,900円 | 54.7L | 約2.4kg | ベスト型・通気性◎ | こだわり派・汗かき |
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deuter エアコンタクトコア60+10
| 通気性◎ ★★★★☆ | 約49,500円 | 60+10L | 約2.31kg | J字ジッパー・堅牢性 | 夏山縦走・頑丈派 |
【快適性No.1】Gregory バルトロ65 M
Gregory バルトロ65 Mの価格を比較する
こんな人におすすめ
「体力に自信がないからこそ、道具の力で楽をしたい」という方におすすめです。予算はかかっても、とにかく快適さを追求したい「安物買いの銭失い」をしたくない人に最適解となる一台です。
スペック・特徴
- 価格:約57,200円(税込)※2026年1月時点
- 重量:約2.23kg
- 容量:65L
「バックパック界のロールスロイス」と称されるグレゴリーのフラッグシップモデルです。最大の特徴は、独自の「FreeFloat A3サスペンション」。歩行時の体のねじれに合わせてヒップベルトとショルダーハーネスが独立して動くため、常に荷重が腰のベストポジションに乗り続けます。
腰パッドの厚みとフィット感は他社を圧倒しており、20kg近い荷物を背負っても肩への負担が驚くほど少ないのが魅力。アタックザック(サブバッグ)として使えるハイドレーションポケットや、専用レインカバーが標準装備されているのも嬉しいポイントです。
注意点
本体重量が2.23kgと、ザック単体としては重めです。しかし、その重さを帳消しにするほどの優れた荷重分散性能があるため、実際に背負って歩くと数値ほどの重さは感じません。「軽さ」よりも「疲れにくさ」を重視する設計と言えます。
※女性用モデルは「Diva 60」です。骨盤の形や背面長に合わせた専用設計になっています。
【剛性No.1】Osprey イーサープラス60 M/L
Osprey イーサープラス60 M/Lの価格を比較する
こんな人におすすめ
「荷物がどうしても重くなりがち」「腰痛持ちで腰への負担を減らしたい」という方におすすめです。華奢なザックでは不安な、ガッチリ体型の方や重装備派の「守護神」となるでしょう。
スペック・特徴
- 価格:約66,000円(税込)※2026年1月時点
- 重量:約2.5kg
- 容量:60L
オスプレーの大型モデルの中でも、特に「剛性(フレームの強さ)」に優れたモデルです。荷物が15kg、20kgと増えてもザックが歪むことなく、驚異的な安定感を保ちます。ヒップベルトのホールド感は最強クラスで、「腰で背負う」感覚を最も体感しやすいモデルと言えます。
ユニークな機能として、雨蓋(トップリッド)を取り外すと、「デイリッド」と呼ばれる簡易デイパックに変身します。テント場に重い荷物をデポ(置いておく)して、身軽に山頂を目指す際に非常に便利です。
注意点
今回紹介する中で最も重量がある(約2.5kg)ため、体力に自信のない小柄な方にはオーバースペックになる可能性があります。また、ヒップベルトが非常にしっかりしているため、骨盤の形状によっては「当たって痛い」と感じる場合もあるので、試着時の確認が重要です。
※女性用モデルは「Ariel Plus 60」です。女性の骨格に合わせたフィット感が特徴です。
【軽量・万能】Millet サースフェーNX 50+
Millet サースフェーNX 50+の価格を比較する
こんな人におすすめ
「日本の気候に合ったザックが欲しい」「できるだけ荷物を軽くしたい」という慎重派の方におすすめです。機能バランスが非常に良く、初心者にとっての「優等生」的な存在です。
スペック・特徴
- 価格:約39,600円(税込)※2026年1月時点
- 重量:約1.75kg
- 容量:50L+(拡張可能)
日本の登山シーンに合わせて開発されたロングセラーモデルです。特筆すべきはシリコン加工を施した高い撥水性能。多少の雨ならレインカバーなしでも弾いてくれるため、天気が変わりやすい日本の夏山で頼りになります。
重量は約1.75kgと圧倒的に軽量。日本人の体型(胴長・肩幅)に合いやすい設計になっており、海外ブランドのフィット感に違和感がある方にもフィットしやすいでしょう。背面メッシュの通気性も高く、湿気の多い日本の登山でも蒸れを軽減します。
注意点
ベース容量が50Lのため、荷物を雑に詰め込むとすぐにパンパンになりがちです。ある程度パッキング(荷造り)の工夫が必要になるため、整理整頓を心がける必要があります。
なお、クローズドセルマット(銀マット)はかさばるため、外付けが基本です。今回紹介したモデルはすべて、ザック下部または側面に外付け用のストラップ・バンジーコードを装備しています。
※女性用モデルも展開されています。公式サイトで確認してください。
【コスパ】mont-bell チャチャパック60
こんな人におすすめ
「予算を抑えつつ、信頼できる品質のものが欲しい」「整理整頓が苦手」という学生や初心者の方におすすめです。パッキングが下手でもなんとかなる、懐の深さが魅力です。
スペック・特徴
- 価格:約38,500円(税込)※2026年1月時点
- 重量:約2.18kg
- 容量:60L
日本ブランドの雄、モンベルが送る定番大型パック。3万円台で購入できる圧倒的なコストパフォーマンスが最大の魅力ですが、機能面でも妥協はありません。
フロント部分が大きく開くU字型ジッパーを採用しており、ザックの底に入れた荷物にも簡単にアクセスできます。また、隠しポケットやサイドポケットなど収納箇所が豊富で、小物の整理がしやすいのも特徴。「とりあえず全部詰め込む」スタイルでも使いやすい設計です。
注意点
人気ブランドゆえに山小屋やテント場で「他人と被る」確率が非常に高いです。所有欲を満たしたい方には物足りないかもしれませんが、実用性と価格のバランスは最強クラスです。また、背面の通気性に関しては、最新の海外モデルに比べるとややクラシックな印象があります。
※モンベル製品はAmazonや楽天での流通が少なく、出品されていても転売価格の可能性が高いため、公式サイトからの購入をおすすめします。
【調整機能】karrimor クーガーエイペックス60+
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こんな人におすすめ
「通販で買うのでサイズ選びが不安」「季節によって着る枚数が大きく変わる」という方におすすめです。自分だけのジャストフィットを追求したい方に最適な一台です。
スペック・特徴
- 価格:約46,200円(税込)※2026年1月時点
- 重量:約2.42kg
- 容量:60L+(拡張可能)
カリマー独自の「SA(サイズアジャスト)システム」を搭載。これはザックを背負ったまま、背中のストラップを引くだけで背面長を無段階に調整できる画期的な機能です。登りでは緩めて通気性を確保し、下りでは締めてフィット感を高めるといった使い分けが可能です。
また、容量名に「+」とある通り、拡張性が高いのも特徴。荷物が増えた時はトップリッド(雨蓋)を持ち上げて容量を増やせるため、長期縦走にも対応できるポテンシャルを持っています。
注意点
調整用のベルトやストラップが多いため、初心者には少し複雑に見えるかもしれません。使いこなせれば最強の武器になりますが、最初のうちはどのベルトがどこに効くのか、自宅で練習することをおすすめします。
※女性用モデルも展開されています。公式サイトで確認してください。
【機能美】Mystery Ranch ブリッジャー55 M
Mystery Ranch ブリッジャー55 Mの価格を比較する
こんな人におすすめ
「人と同じものは使いたくない」「汗かきで背中の蒸れが気になる」というこだわり派の方におすすめです。ミリタリー由来の堅牢さと、最新の機能美が融合したモデルです。
スペック・特徴
- 価格:約53,900円(税込)※2026年1月時点
- 重量:約2.4kg
- 容量:54.7L
トレイルランニングのベストのような幅広のショルダーハーネスが最大の特徴。荷重を面で分散させるため、肩への食い込みが非常に少ないです。ハーネスにはポケットが付いており、スマホや行動食をサッと取り出せる便利さは一度使うと手放せません。
背面パネルの通気設計も秀逸で、複雑な凹凸形状が空気の通り道を作り、背中の蒸れを強力に逃がします。汗かきな登山者にとって、このドライな背負い心地は大きなアドバンテージとなります。
注意点
独特の「ベスト型」の背負い心地は、従来のザックに慣れている人ほど好みが分かれる可能性があります。また、デザインも非常に個性的で無骨なため、ウェアとのコーディネートを選ぶかもしれません。
※女性用モデルは「Bridger 55W」です。ウィメンズ専用設計で快適なフィット感を実現しています。
【通気性】deuter エアコンタクトコア60+10
deuter エアコンタクトコア60+10の価格を比較する
こんな人におすすめ
「道具はガシガシ使いたい」「夏山の縦走がメイン」というタフな登山者におすすめです。ドイツブランドらしい頑丈さと、計算された通気システムが魅力です。
スペック・特徴
- 価格:約49,500円(税込)※2026年1月時点
- 重量:約2.31kg
- 容量:60L+10L(拡張可能)
ドイターの代名詞である「エアコンタクトシステム」を搭載。歩くたびに背面パッドがポンプのように伸縮し、空気を循環させて熱気を排出します。これにより発汗を最大15%抑制するとされ、夏山の暑さ対策に効果的です。
また、フロントにはJ字型のアクセスジッパーを装備しており、ザックの底の荷物も、真ん中の荷物も、このジッパー一本で即座に取り出せる利便性があります。生地や縫製が非常に堅牢で、岩場や藪漕ぎでも破れにくい「質実剛健」な作りは、長年愛用できる相棒となるでしょう。
注意点
頑丈さを優先しているため、素材自体に少し硬さがあり、重量も約2.31kgと軽快ではありません。しなやかな背負い心地を好む方よりは、カチッとした硬めの背負い心地を好む方向けです。

筆者のテン泊山行で愛用しているのがこのドイターです。「質実剛健」「ドイツ」という言葉に弱い筆者は正直色眼鏡で見ている自覚がありますが、使い勝手は申し分なし。特に筆者は汗かきタイプなので、夏の北アルプステン泊(燕岳→大天井岳、2泊3日)で背中が蒸れず快適だったのはエアコンタクトシステムのおかげですね。
※女性用モデルは「エイコンタクトコア SL」です。女性の骨格に合わせた専用設計になっています。
テント泊ザック選びでよくある質問(FAQ)
ザックカバー(レインカバー)は必要ですか?
必須です。山の天気は変わりやすく、ザックの中身(特に寝袋や着替え)が濡れると低体温症のリスクにつながります。今回紹介した「バルトロ65」や「チャチャパック60」など一部モデルには標準付属していますが、付属していない場合は必ず別売りのカバーを購入しましょう。
通販で買う場合のサイズ選びのコツは?
自分の「背面長(トルソー)」を正確に測ることが最も重要です。家族や友人に手伝ってもらい、首の後ろの出っ張った骨(第七頸椎)から腰骨の上端までの長さをメジャーで計測してください。各メーカーの公式サイトにあるサイズチャートと照らし合わせ、境界線の場合は「調整機能」があるモデルを選ぶと安心です。
50Lと60Lで迷っています。どちらが良いですか?
初めてのテント泊なら60Lをおすすめします。初心者のうちはパッキングがうまくできず、荷物がかさばりがちだからです。50Lは「荷物を厳選できる中級者向け」あるいは「夏の小屋泊〜軽量テント泊向け」と考えた方が無難です。「大は小を兼ねる」の精神で、余裕のあるサイズを選びましょう。
レディースモデル(女性用)はありますか?
今回紹介した全てのモデルに、女性の体型(骨盤の形や背中の長さ)に合わせた女性用モデル(ウィメンズ/レディース)が存在します。商品名の後ろに「W's」や「Women's」と付いているものを選んでください。例えば、「バルトロ」の女性用は「ディバ」、「イーサー」の女性用は「エーリエル」という別名称になっています。
まとめ:自分に合った最適な1つを見つけよう
テント泊ザックは、単なる荷物入れではなく、あなたの体力を守り、安全な登山を支える重要なギアです。今回紹介した7モデルは、どれも実績のある信頼できる製品ばかりですが、それぞれ「得意なこと」が異なります。
- とにかく快適に歩きたいならGregory バルトロ
- 重い荷物を安定させたいならOsprey イーサープラス
- 軽さとコスパを重視するならMillet サースフェーやmont-bell チャチャパック
自分の登山スタイルや体型、そして「何を一番重視するか」に合わせて選べば、きっと最高の相棒に出会えるはずです。新しいザックを背負って、素晴らしいテント泊の景色に会いに行きましょう!






学生の頃は山小屋なんていう高尚なところに泊まることは皆無で、ほぼ全部テント泊でした。今でこそ山小屋に泊まることも増えてきましたが、やっぱり筆者のベースは「必要なもの全部背負って山に入る」というところにある気がします。テント、シュラフ、食料、水、全部詰め込んだザックを背負って稜線を歩く、あの充実感は何度味わっても色褪せないですね。