Home サイクリング サイクリング知識 春・秋サイクリング服装ガイド|気温差を快適に走るレイヤリング術と必須装備

春・秋サイクリング服装ガイド|気温差を快適に走るレイヤリング術と必須装備

サイクリング用「春秋」ジャケット・ジャージおすすめ5選|薄手・防風で使いやすいモデル厳選
春・秋のサイクリングで悩む気温差対策を解説。「朝は寒く昼は暑い」を解決するレイヤリング(重ね着)のコツ、10℃・15℃別の服装例、ウィンドブレーカーやベースレイヤーの選び方を紹介します。
目次
笑い猫
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2022年10月、秋の三浦半島を走ったときの話です。朝6時の出発時は10℃で寒かったので厚手ジャージを着て出発。でも日中は20℃近くまで上がり、登り坂で汗だくになりました。下りで冷風を浴びて一気に体が冷え、休憩中に寒気が止まらなくなったのを覚えています。それ以来、「薄手を重ねて調整」が鉄則ですね。

春・秋サイクリングの最大の敵は「気温差」

春・秋のサイクリング風景
朝は寒く、昼は暑い。この気温差が春秋サイクリングの悩みどころです。

サイクリングにとって春と秋は、新緑や紅葉を楽しめる最高のシーズンです。しかし、この時期に多くのサイクリストを悩ませるのが「1日の中での激しい気温差」です。

例えば、朝の出発時には10℃前後で肌寒く感じても、日中には20℃近くまで気温が上がり、汗ばむ陽気になることが珍しくありません。この10℃もの気温差に、1枚のウェアだけで対応するのは不可能です。

体温調節に失敗すると、以下のようなリスクが生じます。

  • 汗冷え:登り坂や日中に大量にかいた汗が、下り坂や休憩中に急激に冷やされ、体調を崩す原因になります。
  • オーバーヒート:厚着のまま走り続けると体内に熱がこもり、パフォーマンスが低下したり、脱水症状を引き起こしたりします。

こうしたトラブルを防ぎ、快適に走り続けるために必要なテクニックが「レイヤリング(重ね着)」です。薄手の高機能ウェアを組み合わせ、状況に応じて着脱することで、体感温度を一定に保つことができます。

レイヤリングの基本|3層構造を理解しよう

レイヤリングの基本は、役割の異なる3つのウェアを重ねることです。それぞれの役割を理解することで、無駄のないウェア選びが可能になります。

ベースレイヤー(第1層):汗を処理する「第二の皮膚」

メッシュ素材のベースレイヤー
メッシュ素材が汗を素早く吸収し、肌をドライに保ちます。

肌に直接触れるインナーウェアです。その役割は、かいた汗を素早く吸収し、肌から引き剥がして外側のウェアへ移動させることです。これにより、肌面を常にドライに保ち、汗冷え(低体温症)を防ぎます。

綿(コットン)素材は汗を吸ったまま乾きにくいため、サイクリングには不向きです。ポリエステルやポリプロピレンなどの化学繊維で作られたスポーツ用ベースレイヤーを必ず着用しましょう。特に、ポリプロピレン(PP)素材は水分をほとんど含まない性質があるため、より強力に肌をドライに保つことができます。

ミッドレイヤー(第2層):体温を保つメインウェア

長袖サイクルジャージ
背面の3つのポケットが便利。裏起毛の有無で気温対応が変わります。

いわゆる「サイクルジャージ」のことです。適度な保温性と、ベースレイヤーから移動してきた汗を蒸散させる通気性のバランスが求められます。

春・秋のシーズンでは、長袖ジャージが基本となります。気温が15℃を下回る予報なら薄手の裏起毛タイプ、15℃以上なら起毛なしの春夏用長袖ジャージを選ぶのが目安です。

アウターレイヤー(第3層):風と冷気をブロック

コンパクトなウィンドブレーカー
握りこぶし大に収納できる軽量性が、レイヤリングの鍵です。

一番上に羽織るウィンドブレーカーやベストです。冷たい風をシャットアウトし、体温が奪われるのを防ぎます。

この層の最大の特徴は「着脱を前提としている」ことです。暑くなったらすぐに脱いでバックポケットに収納できるよう、軽量でコンパクトなものを選ぶのが鉄則です。重量は100g〜150g程度が理想的です。

初心者にもおすすめなのが袖なしの「ジレ(ウィンドベスト)」です。腕周りの熱が逃げやすく、体幹(お腹・胸)だけを風から守れるため、「体幹は冷やしたくないが、腕の汗は逃がしたい」という春・秋の微妙な気温に最適です。また、長袖ウィンドブレーカーよりもコンパクトに畳めるため、携帯性にも優れています。

笑い猫
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最初は「レイヤリング=厚手を何枚も重ねる」だと思っていました。でも実際は、ベース(汗冷え防止)・ミドル(保温)・アウター(防風)という「役割分担」が重要だったんですよね。特にアウターの防風性があるかどうかで、体感温度が全然違います。

気温別コーディネート実例

レイヤリングの理論を踏まえ、具体的な気温別のコーディネート例を見ていきましょう。

朝の気温10℃帯のスタート時

肌寒い朝の服装例
気温10℃なら3層フル装備。走り出しに「ちょっと暑いかな」は着すぎです。

10℃前後では、走り出しに「寒い」と感じない装備が必要です。

  • 上半身:ベースレイヤー + 長袖ジャージ(裏起毛推奨) + ウィンドブレーカー着用
  • 下半身:ビブショーツ + レッグウォーマー(またはロングタイツ)
  • 小物:薄手のフルフィンガーグローブ、ネックウォーマー

※運動強度が高いトレーニングライドの場合、上記よりも薄手の装備で十分な場合があります。体質や走り方に合わせて調整してください。

冷たい風を受けると体感温度は一気に下がります。ウィンドブレーカーのジッパーを上まで閉め、冷気の侵入を防ぎましょう。

昼の気温15〜20℃帯への対応

暖かくなった日中の服装例
15〜20℃まで気温が上がれば、ウィンドブレーカーは背中ポケットへ。

日が昇り体が温まってきたら、徐々に装備を解除していきます。

  • 上半身:ウィンドブレーカーを脱いでバックポケットへ。ベースレイヤー + 長袖ジャージのみで走行。
  • 下半身:暑さを感じたらレッグウォーマーを足首まで下げるか、外して収納。
  • 小物:指切りグローブへ変更(予備がある場合)、ネックウォーマーを外す。

体温調節のタイミング

レイヤリングを成功させるコツは、「先手必勝」です。

  1. 暑くなる前に脱ぐ:「少し暑くなってきたな」と感じた時点でジッパーを下ろすか、脱ぎましょう。汗だくになってからでは遅すぎます。
  2. 寒くなる前に着る:休憩で止まる直前や、長い下り坂の手前では、体が冷える前にウィンドブレーカーを羽織ります。
笑い猫
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気温12℃の朝、多摩川サイクリングロードを走ったときの話です。出発時に「ちょっと寒いかな」と感じる装備でスタートしたら、15分後にはちょうど良い体感になりました。でも厚着しすぎて出発した日は、30分で汗だく。「走り出しは少し寒い」が正解ですね。 ちなみに、標高の高い峠へ行く場合は要注意。「標高100m上がるごとに気温は約0.6℃下がる」と言われています。2023年5月、奥多摩の風張峠(標高1,146m)へ行ったときは、スタート地点の青梅(標高200m)が15℃でも、頂上は9℃。下りは真夏でも寒いので、必ずウィンドブレーカーを持参しましょう。

必須アイテムとその選び方

快適なレイヤリングを実現するために揃えておきたいアイテムの選び方を解説します。

ベースレイヤーの選び方

最もROI(投資対効果)が高いアイテムです。春・秋用としては、通気性の高いメッシュ素材がおすすめです。夏用のノースリーブでも構いませんが、腕の冷えが気になる方は半袖タイプが良いでしょう。素材は入手しやすいポリエステル製で十分ですが、予算があれば疎水性に優れたポリプロピレン(PP)製を選ぶとより高いドライ性能が得られます(ただし乾燥機NGなど取り扱いに注意)。価格は3,000円〜6,000円程度のもので十分な機能が得られます。

長袖ジャージの選び方

気温に合わせて2種類を使い分けるのが理想ですが、最初の一枚なら「薄手の裏起毛ジャージ」が汎用性が高くおすすめです。

種類 適正気温 特徴
薄手長袖 15℃〜25℃ 夏用素材の長袖版。日焼け対策にもなる。
裏起毛 10℃〜15℃ 内側がフリース状で暖かい。通気性はやや低い。

ウィンドブレーカーの選び方

高機能なウィンドブレーカー
使わない時はバックポケットへ。携帯性こそが専用品の価値です。

最も重要なのは「携帯性」です。握りこぶし大に収納できるポケッタブルタイプを選びましょう。重量は150g以下を目安にしてください。背中部分がメッシュになっていて熱気が抜ける構造のものだと、着たままでも蒸れにくく快適です。

小物類(アームウォーマー・レッグウォーマー)

アームウォーマーとレッグウォーマー
走行中でも着脱しやすく、温度調節の自由度が格段に上がります。

半袖ジャージやレーパンに付け足すことで、長袖・長ズボンのように使えるアイテムです。暑くなったら手首や足首まで下げるだけで体温調節ができるため、着脱の手間が少なく非常に便利です。春・秋のサイクリングでは必携装備と言えます。

レイヤリングの失敗例と対策

よくある失敗①:着込みすぎて汗だくになる

寒さを恐れて、出発時から厚手のインナーやジャケットを着込んでしまうケースです。走り出して15分もすれば体温は上がります。「走り出しは少し寒いかな?」と感じるくらいが適正です。ウィンドブレーカーで調整できる余裕を残しておきましょう。

よくある失敗②:「走れば暖かくなる」と過信してウィンドブレーカーを持っていかない

「運動すれば体が温まるから、薄着でも大丈夫だろう」と判断し、ウィンドブレーカーを持たずに出発してしまうケースです。しかし、春・秋の冷たい風は想像以上に体温を奪います。

笑い猫
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以前、「走れば暖かくなるでしょ」と思い、ウィンドブレーカーを持たずに出発したことがあります。でもいつまで経っても暖かくならず、むしろ風でどんどん体が冷えていきました。特に下り坂では、汗をかいた体に冷風が直撃して最悪でした。それ以来、どんなに荷物になってもウィンドブレーカーは必須だと学びました。

たった100g程度のウィンドブレーカーがあるかないかで、ライドの快適さは劇的に変わります。「荷物になるから」と持たずに後悔するより、バックポケットに忍ばせておく安心感の方がはるかに価値があります。

よくある失敗③:汗冷えで体調を崩す

普通のTシャツ(綿素材)をベースレイヤー代わりにしていると、登り坂で汗をかいた後、休憩中や下り坂で急激に体が冷やされ、お腹を下したり寒気に襲われたりします。「カフェでの休憩中に震えが止まらなくなった」「下りで指先がかじかんでブレーキ操作が遅れた」といった経験は、ベースレイヤーを正しく選べば防げるトラブルです。

どんなに安くても良いので、必ずポリエステル等の吸汗速乾素材のインナーを着用してください。

笑い猫
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筆者は春秋の15℃前後ならパールイズミのウォームフィットドライ アンダー(173)を愛用しています。3枚持っていて、奥多摩や丹沢の登りで汗をかいても下りで冷えません。 レイヤリングをさらに強化したい方には、ミレー ドライナミック メッシュファイントラック ドライレイヤーベーシックのような「網シャツ系」を、ジャージの下に重ね着するのもおすすめです。一度使うと汗冷えとは無縁になりますよ。

詳しくは下記記事でも紹介しています。

よくある質問(FAQ)

春と秋でレイヤリングは変えるべき?

基本的には同じ考え方で対応できます。ただし、春は「これから暖かくなる」季節、秋は「日が落ちると急激に冷える」季節です。秋の夕方以降も走る場合は、春よりも一枚多めに防寒具(ネックウォーマーや厚手のウィンドブレーカー)を持参することをおすすめします。

ベースレイヤーは夏用でも使える?

はい、夏用のメッシュ素材のベースレイヤーは春秋でも十分に有効です。特に運動量が多く汗をかきやすい人は、保温性よりも「汗抜け」を重視して夏用を使う方が快適な場合も多いです。その分、上に着るジャージやアウターで保温性を確保しましょう。

ウィンドブレーカーは防水性も必要?

春・秋の防寒目的であれば、完全防水である必要はありません。むしろ、防水性が高すぎると透湿性が落ち、内部が蒸れて汗冷えの原因になります。小雨を弾く程度の撥水加工があれば十分です。

気温何度からウィンドブレーカーが必要?

個人差はありますが、気温15℃以下になる時間帯があるなら持参すべきです。また、標高の高い峠へ行く場合、登りで汗をかいた後の下りは真夏でも寒いため、季節を問わず必携アイテムです。

まとめ|レイヤリングで春秋サイクリングを快適に

春と秋のサイクリングを快適に楽しむための鍵は、気温の変化に合わせて柔軟にウェアを調整する「レイヤリング」にあります。

  • 汗を処理するベースレイヤーは必須装備
  • 基本は長袖ジャージ、暑がりなら半袖+アームウォーマー
  • ウィンドブレーカーは軽量・コンパクトなものを選び、こまめに着脱する
  • 「寒くなる前に着る」「暑くなる前に脱ぐ」を徹底する

適切な服装準備ができれば、寒さや暑さに気を取られることなく、美しい景色や走ることそのものを存分に楽しめるようになります。まずは手持ちのウェアにウィンドブレーカーやアームウォーマーをプラスして、快適なレイヤリングを試してみてください。

※本記事で紹介した気温や服装の目安は、一般的な平地でのサイクリングを想定しています。山岳地帯や天候により体感温度は大きく異なるため、現地の状況に合わせて安全な装備で出かけましょう。