Home トレッキング トレッキングコース紹介 みちのく潮風トレイル|海と人をつなぐ1000kmの道

みちのく潮風トレイル|海と人をつなぐ1000kmの道

青森から福島まで、三陸の海岸線をつなぐ「みちのく潮風トレイル」は、海と人の暮らし、そして復興の記憶をたどるロングトレイル。この記事では、初心者にも歩きやすいセクションルートや、地域の魅力、旅を深める本まで紹介。歩くことで、土地と人に触れる新しいアウトドア体験を。
目次
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海と人を感じながら歩く|新しいロングトレイルのかたち

出典 : tohoku.env.go.jp

みちのく潮風トレイルは、青森から福島まで続く全長約1,000kmの長距離自然歩道
太平洋沿岸の海岸線を中心に、森や里、漁村や被災地をつなぐこの道には、山のロングトレイルとは異なる“静かな熱”があります。

歩くのは、険しい稜線ではなく、潮風が吹き抜ける岬や、港町の路地裏、小さな漁村や海辺の遊歩道
その合間に、仮設住宅跡や震災遺構が今も点在し、ただの絶景トレイルではない深みをこの道に与えています。

「山を登る体力はないけれど、自然と人の暮らしに触れる旅がしたい」
「ただ通り過ぎるのではなく、土地と時間をゆっくり味わいたい」
そんな人にこそ、みちのく潮風トレイルはぴったりの“歩く旅”です。

今回は、初めてでも歩きやすいおすすめ区間を中心に、装備やアクセス、地域との向き合い方まで、ロングトレイル初心者にやさしい“みちのくの道案内”をお届けします。

はじめての1泊2日旅に|東京発でも現実的な“海のロングトレイル”

みちのく潮風トレイルは全長約1,000kmにもおよぶロングトレイルですが、すべてを歩く必要はありません。
初めての一歩にぴったりなのが、宮城県の「南三陸町ルート」と「気仙沼市南部ルート」を組み合わせた1泊2日のセクションハイクです。

登山のような過酷さはないけれど、海と人の暮らし、震災の記憶と再生の風景、そして“歩くことでしか見えないもの”が、この道にはあります。

公式ルートの一部をつなぐ、約24kmの旅

出典 : m-kankou.jp

このモデルルートは、みちのく潮風トレイルの公式ルートの中でも特に歩きやすく、文化的にも印象深い区間を抜粋しています:

  • 南三陸町ルート(全長28.8km)
     → 志津川駅から田束山・戸倉地区をたどる、里山と漁村を歩く道

  • 気仙沼市南部ルート(全長25.9km)
     → 戸倉から岩井崎・大谷海岸を通り、気仙沼市街地へ向かう海岸沿いの道

今回はそれぞれの前半〜中盤の約12kmずつ(計24km)を、1泊2日で無理なく歩く構成です。

東京から行ける、リアルな時間割

「行ってみたいけど、遠そう…」と感じるかもしれませんが、実は東京からでも1泊2日でしっかり完結するのがこのルートの魅力。
以下は新幹線+BRT(バス高速輸送)を使ったモデルプランです。

スケジュール内容
【1日目 午前】東京駅→一ノ関駅(新幹線 約2時間30分)→ 一ノ関駅→志津川駅(BRT 約1時間30分)
【1日目 午後】志津川駅〜戸倉方面へ歩行(約10〜12km・所要4〜5時間)
【宿泊】戸倉または気仙沼の民宿・ゲストハウス泊
【2日目 午前】戸倉〜大谷海岸〜気仙沼駅方面へ歩行(約12km・所要4〜5時間)
【2日目 午後】気仙沼駅→一ノ関駅(BRT 約1時間20分)→ 一ノ関→東京(新幹線 約2時間30分)

※朝7:00前後に東京を出れば、お昼前には歩き出し可能です。
※寄り道ポイントが多いため、時間に余裕を持った行程がおすすめです。

日常から少し離れて、潮風の中を歩く2日間。
体力ではなく「心」で味わうロングトレイルの入り口として、南三陸〜気仙沼の海の道はきっと、忘れられない旅になるはずです。

歩く前に知っておきたい地域との向き合い方|気持ちよく歩くための3つのヒント

南三陸や気仙沼の道を歩いていると、「観光地」というより“人が暮らしている場所を歩いているんだな”と感じる瞬間がたくさんあります。

だからこそ、ちょっとした気づかいがあると、自分も相手も気持ちよく過ごせます。
ここでは、はじめてこの道を歩く人に向けて、覚えておきたい3つのポイントを紹介します。

その場所に立ったら、まず深呼吸

出典 : m-kankou.jp

トレイルの途中には、震災遺構や慰霊碑が残っている場所もあります。
看板を見かけたり、語り部さんがいる場所に立ち寄ったら、少しだけ立ち止まって、景色を見てみる
それだけで、ただ通り過ぎるよりも深く記憶に残ります。

無理に難しく考えなくて大丈夫です。
「この場所には何があったんだろう?」と想像してみるだけで、旅の景色が変わってきます。

あいさつと、ちょっとした交流もこの道の楽しみ

漁村や住宅地を歩いていると、地元の方とすれ違うこともよくあります。
そんなときは、軽く会釈するだけでもOK。
「こんにちは」って声をかけたら、にこっと返してくれる人がほとんどです。

タイミングが合えば、おしゃべりが始まったり、飲み物を差し入れてもらえたりすることも。
“歩く旅人”として、ふんわり地域に溶け込む感覚もこの道の魅力のひとつです。

気持ちのいい旅は、ちょっとのマナーから

歩く距離は長くなくても、道のほとんどは地域の生活エリア。
だからこそ、ちょっとだけ気をつけたいこともあります。

  • ゴミは持ち帰り(ゴミ箱はあまりありません)

  • 農道や民家前ではおしゃべりは控えめに

  • 宿泊はあらかじめ予約を(野宿NGの場所がほとんど)

当たり前のことでありますが、ちょっとだけ気を配るだけで、旅がぐっと気持ちの良いのものになります。

この道は、観光地じゃなくて“日常の中を歩くトレイル”。
気負わず、でも少しだけ優しい目線で歩けたら、きっともっと素敵な旅になるはずです。

どんな装備・服装で行くべき?|“登山未満”くらいがちょうどいい

みちのく潮風トレイルの南三陸〜気仙沼区間は、がっつり登山装備じゃなくてもOK
でも、ふだんの街歩きのノリだとちょっと心もとないかも。(少し長い距離を歩くので)
イメージとしては、「ハイキング+旅」くらいの気楽な装備がちょうどいいです。

靴は「登山靴じゃないけど、ちゃんとしたやつ」で

出典 : tohoku.env.go.jp

ルートのほとんどは舗装路や遊歩道ですが、一部には山道っぽい未舗装の区間やぬかるみもあります。

おすすめは、ローカットのトレッキングシューズグリップの良いトレランシューズ
私は何を血迷ったか、サンダルで行って足が死にました。
スニーカーでも歩けなくはないけれど、雨のあとは滑りやすいので要注意です。

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服装は「動きやすくて脱ぎ着しやすい」が基本

出典 : tohoku.env.go.jp

歩いていると汗ばむけど、海風が吹くと肌寒い——そんな場面がけっこうあります。
おすすめの組み合わせはこんな感じ:

  • 速乾性のあるTシャツ+長袖シャツ or ウィンドブレーカー

  • 軽めのストレッチパンツ or トレッキングタイツ+ショーツ

  • 薄手のレインジャケット(防寒にもなる)

春や秋はとくに“1枚多め”の気持ちでレイヤリングを

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ザックは20〜25Lくらい、コンパクトにまとめて

1泊2日なら、20〜25Lくらいの小さめザックで十分。
宿泊は民宿やゲストハウスを想定しているので、テントや寝袋は不要です。

中身の例はこんな感じ:

  • 着替え(下着+Tシャツ程度)

  • 軽い防寒着・レインジャケット

  • 行動食・飲み物(途中で買い足しも可)

  • スマホ・モバイルバッテリー・地図(紙 or アプリ)

  • ヘッドライト(念のため)

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あとは「あると便利」なものをちょい足し

  • トレッキングポール:アップダウンが多い日は膝にやさしい

  • サンダル:宿でリラックスするとき用

  • 小さめの救急セットや絆創膏:靴ずれ対策に

「登山ガチ勢じゃないし…」という人ほど、ちょっと準備するだけで旅の快適さがぐっと上がります。
“旅先でも気持ちよく歩ける普段着”くらいのイメージで準備すればOKです!

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FAQ|歩く前に知っておきたい素朴な疑問

Q. このルート、初心者でも歩けますか?

はい、まったく問題ありません。
道はよく整備されていて、案内板やトレイルマーカーも充実しています。
アップダウンもゆるめで、「登山というより、ちょっと本気のハイキング」くらいの感覚です。

ただし、油断すると地味に疲れます。靴だけは、ほんと、ちゃんとしたやつを!

Q. どの季節に歩くのが気持ちいい?

春(4〜6月)と秋(9〜11月)がベストシーズン。
暑すぎず寒すぎず、海風も気持ちよく感じられます。

夏は蒸し暑さ+日差し+虫が強め。冬は積雪こそ少ないですが、朝晩が冷え込むのでしっかり防寒対策を。

Q. 日帰りでもいけますか?

距離だけ見れば、志津川〜気仙沼(約24km)は頑張れば日帰り可能です。
でも、見どころや語り部さんの話、寄り道したくなる景色が多すぎて…
「時間が足りない!」となる人がほとんど。

せっかくなら1泊2日でゆったり歩くのがおすすめです。

Q. 宿の予約は必要ですか?

はい、必須です。
民宿やゲストハウスは数が限られていて、週末や連休は早めに埋まります。

戸倉や大谷海岸エリアに、歩き旅に理解のある宿もあるので、早めの予約が吉です。

まとめ|海沿いの道を歩くと、心もゆっくり整ってくる

みちのく潮風トレイルの南三陸〜気仙沼ルートは、
「よし、山に登るぞ」という気合いがいらない代わりに、
静かに、でも確かに心に残る景色や出会いが待っている道でした。

漁港や集落、森のトンネル、震災の跡と復興のまち。
海のそばで、ただ道をたどるだけなのに、なんだか旅が“深くなる”ような時間。

これからロングトレイルを始めてみたい人も、
観光とはちょっと違う旅をしたい人も、
ぜひ一度、歩いてみてほしいルートです。

道を歩いたあとに読む本って、
なんだか“もう一度その場所を旅する”ような気分になりませんか?

そんな読後感を楽しみたい方は、こんな本がおすすめです。

1,025kmの道を“つくる”ことは、歩くことから始まった
しまたけひと
歩き続けた700km、その一歩一歩が“道”になってゆく
しまたけひと

※このブログでは、コースの詳細や見どころをあえて控えめに紹介しています。
はじめてその景色を見たときの「わっ…!」という感動を、できるだけそのまま味わってもらいたいから。
ルートの存在だけ知って、「あとは自分の体験で完成させる」――そんな旅のきっかけになれば嬉しいです。