
大山一周“ダイイチ”とは?|中国地方最高峰をめぐる絶景ヒルクライム周回
大山(だいせん)は標高1,729m、中国地方最高峰にして「伯耆富士(ほうきふじ)」の愛称で親しまれる名峰です。その山腹をぐるりと巡る大山環状道路を自転車で一周するのが、通称「ダイイチ」。標高約1,000mまで駆け上がる峠と、大山の荒々しい南壁やブナ原生林、日本海の大パノラマが連続する、走りごたえ抜群の周回ルートです。
大山は約1,300年前から続く山岳信仰の地。718年に開かれた大山寺は、かつて僧兵3,000人を擁した西日本最大級の仏教勢力を誇り、牛馬の守護を祈る参詣でもにぎわいました。神話と信仰、そして絶景が融合する——それがダイイチの魅力です。
距離は大山環状道路を一周して約81km・獲得標高約2,200m。全線ほぼ平坦がなく、体力に自信のあるチャレンジ派・ヒルクライム好きにこそおすすめの上級コースです。1日での完走も可能ですが、温泉やグルメをじっくり楽しむなら1泊2日でも。
まずは全体像を地図で確認しましょう。番号①〜⑤が主要スポット、矢印が進行方向(反時計回り)です。大山寺を発着に、まきばみるくの里・桝水高原から南麓を大きく回り、船上山を経て戻る、大山環状道路をベースにした定番の周回ルートです。
ℹ️ 距離・回り方の目安:大山環状道路を一周する定番ルートで約81km/獲得標高約2,200m(最高標高約1,000m)。蒜山高原・鏡ヶ成まで足を延ばすと約95〜110km・獲得標高約2,400mに。回り方は反時計回りが定番で、補給ポイントの配置が有利とされます。全線ほぼ平坦がなく、体力・上級コースです。
⚠️ 走行注意:山間部はコンビニ・自販機が少ないため、水分・補給食・予備チューブは必携。熊・鹿の出没エリアで熊鈴があると安心です。高原部は霧が出やすく、トンネルもあるため前後ライトを。
🚧 通行止めに注意:大山環状道路は12月中旬〜3月下旬ごろ冬季閉鎖。加えて2025年の雪崩で一部区間が長期通行止めになった経緯もあります。走行前に必ず最新の通行可否を確認してください(鳥取大山観光ガイド/各道路情報)。
主要スポット紹介|番号順に見どころを解説
地図の番号①〜⑤に沿って、ルート上の見どころを紹介します。写真は順次追加予定です。
1大山寺(表参道・発着)

標高約780mの門前町で、718年開創の大山寺を中心に栄えた山岳仏教の聖地。参道には蕎麦・土産・宿が並び、補給・休憩の拠点です。少し歩けば、自然石を敷いた「日本一長い石畳参道」(約700m)で知られる大神山神社奥宮も。旅の起点にふさわしい、神話と信仰の入口です。
2大山まきばみるくの里

白バラ牛乳の直売とソフトクリームが名物の高原施設。濃厚な味わいで人気のソフトは大山サイクリングの定番ごほうびです。2026年4月にリニューアルオープン、大山ハム商品やBBQも。※火曜定休・営業10:00〜17:00(要確認)。
3桝水高原(天空リフト)

大山西側の高原。天空リフトで標高約900mの展望台へ上がれば、日本海から隠岐の島まで見渡す大パノラマ(リフト片道約8分・大人1,000円・4〜11月中旬営業)。フィールドステーションは休憩・補給・トイレに好適で、レンタサイクル拠点でもあります。
4奥大山(木谷沢渓流・大山南麓)

ルート最高地点(標高約1,000m)を含む大山の南麓エリア。ブナ原生林に囲まれた木谷沢渓流の清らかな流れや、大山の荒々しい南壁を望む区間が続きます。※さらに絶景を求めるなら、鍵掛峠(標高約910m)や茅葺集落と大山を望む御机(みつくえ)への寄り道もおすすめです。
5船上山(せんじょうさん)

環状ルート北東部の名勝。屏風のような岩壁が印象的な名勝。近くには日本の滝百選「大山滝」(遊歩道でアクセス)や湧き水スポットもあり、後半の登りで疲れた脚をいやす、静かな山あいの区間です。
モデルコース|大山寺を発着に反時計回りで巡る
ダイイチの定番は反時計回り。大山寺の表参道を起点に、序盤でまきばみるくの里・桝水高原の高原ごほうびを楽しみ、大山の南麓へ。ここが標高約1,000mまで登る本コース最大の山場です。木谷沢渓流や大山南壁の絶景を越えたら、後半は船上山方面をぐるりと回って大山寺へ帰還します。
補給ポイントが少ないため、桝水高原・大山寺周辺でしっかり補給しておくのが完走のコツ。時間や体力に応じて、蒜山高原や鏡ヶ成・鬼女台(蒜山大山スカイライン)まで足を延ばせば、約100kmのロングチャレンジにもアレンジできます。
寄り道&アレンジ|“きれいな一周”に+αの絶景を
紹介した約81kmの周回は、走りやすく整った“王道の一周”。でも、ほんの少し足を延ばすだけで、大山の魅力はぐっと深まります。ここでは筆者が「ここは寄る価値あり」と考えるポイントを、独自目線でご提案します。
💡 寄り道① 鍵掛峠(かぎかけとうげ)の展望台へひと登り
王道ルートは南麓の環状道路を走りますが、少し登って鍵掛峠(標高約910m)の展望台に寄れば、目の前に大山南壁の大パノラマ。眼下には西日本随一のブナ原生林が広がり、ダイイチ随一の絶景といっても過言ではありません。紅葉期(10月下旬〜11月中旬)は特に圧巻。登り返しの疲れが吹き飛ぶ、外せない寄り道です。
📸 寄り道② 御机(みつくえ)で“茅葺と大山”の一枚
南麓に佇む御机の茅葺小屋越しに大山を望む構図は、写真好きの間で知られる名撮影スポット。朝夕のやわらかい光の時間帯がおすすめで、SNS映えも抜群です。静かな集落の空気ごと味わってみてください。
⛩️ 寄り道③ 走る前後に大神山神社奥宮へ参拝
発着点の大山寺からほど近く、自然石を敷いた「日本一長い石畳参道」(約700m)の先に大神山神社奥宮が鎮座します。全国最大級の壮大な権現造りは必見。自転車は参道入口までなので、走る前か後に歩いて参拝を。1,300年続く信仰の地で、旅の安全を祈願していきましょう。
🚴 アレンジ 健脚派は蒜山・鏡ヶ成まで延長(約100km)
物足りない上級者は、鏡ヶ成・鬼女台(蒜山大山スカイライン)まで足を延ばすアレンジを。鬼女台展望休憩所からの県境の大展望や秋の雲海、岡山・蒜山高原のジャージーソフトやひるぜん焼そばも楽しめます。距離は約100km・獲得標高約2,400mのロングチャレンジに。
💧 寄り道④ 木谷沢渓流(きたにざわけいりゅう)でクールダウン
大山南麓のブナ林を流れる木谷沢渓流は、名水のCMロケ地としても知られる清らかなせせらぎ。真夏でもひんやりと涼しく、ヒルクライムで火照った体をいやすのにぴったり。少し自転車を降りて森の空気を吸い込む、贅沢なひと休みです。
どんな装備が必要?|山岳ロングの準備ガイド
常にアップダウンが続くダイイチでは、軽さと登坂性を意識したタイヤ・ギア比の組み合わせが快適さを左右します。長い下りも多いので、ブレーキやタイヤのコンディションは事前にしっかり点検を。
最大の注意点は補給の薄さ。山間部はコンビニ・自販機が乏しいため、パンク修理キット・携帯ポンプ・多機能ツールに加え、2本のボトルと補給食を必ず携行しましょう。トンネル対策の前後ライト、熊鈴、そして高原の寒暖差に備えたウィンドシェルやレイヤリングもあると安心です。
遠方からの遠征では、天候悪化や体調不良時のエスケープ手段として輪行袋も心強い保険になります。
▼ 装備の詳しい選び方は、それぞれの特集記事でチェック
立ち寄りたいグルメ&温泉|大山の“ごほうび”

ダイイチの楽しみは絶景だけではありません。大山まきばみるくの里のソフトクリーム(白バラ牛乳)は外せない定番。ほかにも大山どり・大山おこわ・大山ハム・大山Gビール(大山地ビール)、参道名物の大山蕎麦など、山の恵みが勢ぞろいです。蒜山側まで足を延ばせば、ジャージー牛乳のソフトやひるぜん焼そばも。
走り終えたら温泉でリフレッシュ。大山寺参道の「火の神岳温泉 豪円湯院(ごうえんゆいん)」は、大山で最も山頂に近い日帰り温泉で入浴380円とリーズナブル。加水なしの天然温泉で、豆腐料理やミニソフトも楽しめます。海辺の皆生(かいけ)温泉も宿泊・立ち寄りの選択肢です。
アクセス&輪行|東京・関西からの行き方

玄関口はJR米子駅。米子鬼太郎空港からは米子駅までバスで約30分とアクセスも良好で、輪行なら山陰本線が基本です。起点は大山寺(大山駐車場)が定番ですが、大山口駅や米子駅発でも組み立てられます。
「自分の脚力で完走できるか不安…」という方には電動アシスト(e-bike)レンタルも。大山寺周辺の大山情報館・コグステーション大山や、桝水高原のフィールドステーション、ますみず高原のE-MTBガイドツアーなどが利用できます(本格ロードの長距離レンタル可否は要確認)。
ベストシーズン|新緑と紅葉、そして冬季閉鎖に注意

ベストシーズンは春の新緑(4〜6月)と秋の紅葉(10月下旬〜11月中旬)。特に大山南麓の紅葉は西日本屈指の美しさで、標高900m前後の高原は夏でも涼しい避暑地です。一方、大山環状道路の一部は12月中旬〜3月下旬ごろ冬季閉鎖となり、冬〜早春は全周できません。開通時期は年により変動するため、計画時に最新情報を確認しましょう。
よくある質問(FAQ)
初心者でも完走できますか?
ダイイチは全線ほぼ平坦がなく獲得標高2,000m超の上級コースです。ロングライドやヒルクライムの経験がある方向き。自信がない場合は、桝水高原周辺だけを走る・電動アシスト(e-bike)を活用する・1泊2日に分けるなど、区間ライドから始めるのがおすすめです。
回り方は時計回り・反時計回りどちらがいい?
反時計回り(大山寺→桝水高原→南麓→船上山)が定番とされ、補給ポイントの配置が有利といわれます。時計回りも可能ですが、序盤・終盤の登りの並びが変わるので、体力配分を考えて選びましょう。
1日で回れますか?
約81kmなので健脚なら日帰り可能(実走5〜8時間が目安)。ただしアップダウンが激しく補給も薄いため、時間に余裕を持った計画を。温泉やグルメ、大山寺の参拝もじっくり楽しむなら1泊2日がおすすめです。
冬でも走れますか?
いいえ。大山環状道路の一部は12月中旬〜3月下旬ごろ冬季閉鎖となり、冬〜早春はダイイチの全周ができません。過去には雪崩による長期通行止めもあったため、走行前に必ず最新の通行可否を確認してください。
まとめ|神話と絶景が融合する“ダイイチ”へ
中国地方最高峰・大山をぐるりと巡るダイイチは、標高1,000m級の峠と大パノラマ、そして1,300年の信仰の歴史が詰まった、走りごたえ十分の一周ライドです。補給や通行止め、天候にしっかり備えれば、走り終えたあとの達成感はきっと格別。新緑や紅葉のベストシーズンに、伯耆富士のふところへ挑戦してみてください。


