この記事でわかること|こんな人におすすめ
東京から新幹線で約1時間、小田原を出発点に、かつての東海道をたどって箱根の峠を越え、三島まで歩いて抜ける。そんな“小さな旅人”気分を味わえるトレイルが「箱根旧街道トレイル」です。
このルートは、ただの街道歩きではありません。
江戸の旅人気分を味わえる史跡、石畳や杉並木が残る旧道、そして芦ノ湖や箱根峠から望む絶景——そんな歴史と自然が交差する、ちょうどいい“冒険感”があります。
とはいえ、全長はおよそ30〜35km。しっかり歩きごたえがあるものの、しっかり準備すれば1日で踏破可能な絶妙なスケール感。
金曜日の夜に小田原へ前泊し、土曜日1日で歩ききれば、週末だけで「箱根越えの旅」を体験できます。疲れたら三島にもう一泊して、温泉やご当地グルメを楽しむのもおすすめです。
こんな人におすすめ!
街道歩きや歴史あるトレイルに興味がある
自然も文化も楽しめる「ちょっと本格的な旅」がしたい
土日だけで手軽に達成感ある山歩きをしたい
信越トレイルや分水嶺などロングトレイルの“第一歩”を探している
電車アクセスで完結するトレイル旅を楽しみたい
箱根旧街道トレイルとは?|かつての旅人が歩いた道
東海道随一の難所「箱根越え」を歩く

江戸時代、五街道のひとつであった東海道。その中でもとりわけ厳しい区間とされたのが、小田原から箱根峠を越えて三島へ至る「箱根越え」です。
幕府が敷いた石畳、峠の茶屋、厳重な関所などが整備されたこのルートは、当時の旅人にとって精神的にも体力的にも“越える”という言葉がぴったりの道でした。
現代では、箱根新道や東海道本線、東名高速といったインフラに取って代わられましたが、当時の面影を残す旧東海道の一部が今も歩ける形で残されています。そのルートが、今回ご紹介する「箱根旧街道トレイル」です。
文化と自然が交差する“歩く旅”の魅力

このトレイルの魅力は、なんといっても“ただ歩くだけではない”ということ。
畑宿から芦ノ湖にかけては、当時の石畳や杉並木が保存されており、道そのものが文化財です。
さらに道中には、甘酒茶屋・箱根関所・芦ノ湖湖畔・箱根峠・山中城跡など、歴史的スポットや絶景ポイントが点在。歩くほどに旅の記憶が重なっていきます。
ルート全体はおよそ30〜35km。きちんと準備すれば1日で踏破でき、金曜夜に小田原へ前泊すれば、土日だけで完結できる“週末旅としてのリアリティ”も魅力です。
「自分の足で箱根を越える」というシンプルで力強い体験は、効率的な移動では味わえない“旅の本質”を思い出させてくれます。
モデルルート|小田原前泊で“週末に越える箱根の山”
このトレイルの魅力は、週末だけで“箱根越え”を体験できるリアルさにあります。
金曜の仕事終わりに小田原へ移動して前泊すれば、土曜の朝から行動を開始でき、夕方には三島に下山完了。疲れたらそのまま三島泊で温泉やグルメを楽しむのもOKです。
所要距離は約30〜35km。舗装路・石畳・山道がミックスされた行程ですが、健脚でなくても計画的に歩けば十分踏破できます。目安としては、朝7時頃スタート、途中休憩を含めて8〜9時間ほどの行動時間。休憩ポイントをうまく使えば、無理なく完歩が狙えます。
記号 | スポット名 | 補足・ポイント |
---|---|---|
A | 小田原駅 | 旅のスタート地点。駅前にホテル・飲食店も豊富。新幹線アクセス◎。 |
B | 風祭駅・鈴廣かまぼこの里 | 小田原名物のかまぼこ店。休憩&補給ポイントに最適。 |
C | 畑宿(旧街道入口) | 石畳エリアの起点。一気に“江戸の旅人感”が高まる。 |
D | 甘酒茶屋 | 創業400年を超える老舗。力餅や甘酒でホッと一息。 |
E | 箱根関所跡 | 観光スポットとして整備されており、休憩+文化的な寄り道に◎。 |
F | 箱根峠 | 最高点(標高846m)。ここを越えれば下り基調に。 |
G | 山中城跡公園 | 美しい空堀と富士山ビューが魅力。軽く散策するのもおすすめ。 |
H | 三島駅 | ゴール地点。駅近に飲食店・温泉施設もあり、泊まって余韻を楽しむのも◎。 |
ざっくり見どころ
道中に立ち寄れる見どころスポットを、写真でざっくりご紹介します。






コース概要|30km+αを歩くリアルな街道越え
このトレイルは、小田原駅(A)から三島駅(H)までの約30〜35km。
旧東海道をベースに、石畳の山道・舗装路・峠越え・史跡散策がバランスよく混ざった、変化に富んだルートです。
登り基調の前半、小田原〜芦ノ湖までは累積標高差約800m。箱根峠(F)が最高点となり、そこから先は三島へ向かって一気に下ります。
アップダウンがあるものの、歩きやすい区間が多く、ローカットのシューズでも踏破可能。健脚でなくても、朝スタートすれば日没前にゴールできます。
金曜夜に小田原で前泊しておけば、土曜1日でしっかり歩ききることが可能。
もし疲れが出たら、途中の芦ノ湖や山中城跡からバスでエスケープもできますし、三島で1泊してから帰るプランも柔軟に組めます。
装備と注意点|“トレイル+街道”ならではの準備を
箱根旧街道トレイルは、山道と舗装路がミックスされた「街道×自然歩き」の中間スタイル。
整備された観光地を通るとはいえ、30km以上の行程を歩く以上、しっかりした準備は欠かせません。とくに、靴・荷物・天候対策はポイントです。
靴はローカットでもOK、でもグリップ力は重視
トレイルシューズやローカットの登山靴が最適です。
畑宿〜箱根峠のあたりは石畳や山道が続くため、スニーカーだと滑りやすく、足裏の疲労も大きくなります。防水性やグリップ力のある軽量モデルが歩きやすく、特に下り(箱根峠〜三島)の足運びに差が出ます。
私はこのルートを2回歩いたことがありますが、1回目はスニーカー、2回目はローカット登山靴でした。スニーカーでも全然大丈夫なんですが、疲れを残したくない場合はローカット登山靴がおすすめです。
荷物は軽量化を意識。街道ならではの工夫も
基本的には日帰り装備でOK。ただし1日行動になるため、以下のような持ち物があると安心です:
水分(1.5〜2L程度。途中自販機・茶屋もあり)
補給食(行動食+昼食用にパンやおにぎりなど)
雨具(天候急変や標高差による気温低下に備えて)
モバイルバッテリー(Googleマップ併用のため)
また、街道トレイルは途中に観光施設や茶屋があるため、「立ち寄りやすい装備」も意識したいところ。
リュックは20L前後の小型・軽量タイプが快適で、財布やスマホをすぐに出せるようサコッシュもあると便利です。
天候と時間配分には要注意。エスケープも視野に
箱根エリアは標高差が大きく、天気が変わりやすい地域です。とくに午前中に霧や小雨が出ることがあり、レインウェアは必携。山道での転倒防止や寒さ対策にもなります。
また、行動時間は7〜9時間を見込む必要があるため、日の短い季節は特に早めの出発が基本。
仮に途中で疲れてしまっても、芦ノ湖(箱根関所周辺)や山中城跡からはバスで小田原・三島方面に戻るルートも確保されています。無理せず、自分のペースで楽しむ意識を忘れずに。
三島で一泊もおすすめ|温泉とグルメで締めくくる
トレイルを歩き切ったあとの楽しみとして、ぜひおすすめしたいのが三島での“ごほうび泊”。
箱根峠を越えて長い下りを歩いたあとは、足にも心にもご褒美が必要です。
三島駅周辺には温泉宿やビジネスホテルが多く、アクセス・食事・観光の3拍子がそろっています。
三島からちょっと足を伸ばして「三島の秘湯」へ

三島駅から少し足を伸ばせば、竹倉温泉 みなくち荘という隠れた名湯もあります。昭和10年開湯の素朴な温泉宿で、鉄分豊富な赤茶色の湯は「赤湯」とも呼ばれ、体の芯までじっくり温まるのが特徴。日帰り入浴のみですが、600円で楽しめる地元密着の湯治場です。
静かな田園地帯に佇む昔ながらの温泉で、トレイル後の余韻をじんわり感じてみるのもおすすめです。
地元グルメも楽しみのひとつ

三島は富士山の湧水に恵まれた町。うなぎ、そば、わさびを使ったグルメが豊富で、旅の終わりに“おいしい締め”を探すにはもってこいです。
なかでも「うなぎ桜家」や「うな繁」は、観光客はもちろん地元の人にも愛される老舗の名店。湧水で締めたうなぎの味は、歩いたあとの体にじんわり染み渡ります。
時間と体力に余裕があれば、少し足を延ばして柿田川湧水群へ寄ってみるのもおすすめ。富士山の雪解け水が数十年の時をかけて湧き出るその光景は、静かで神秘的。旅の余韻にぴったりの場所です。
そして夜は、地元の銘酒とともに一杯。朝からしっかり歩いたあとだからこそ、その一口が特別に感じられるはずです。
三島の町歩きも“旅の余韻”に

もし翌日も余裕があれば、源兵衛川の水辺散策や三嶋大社の参拝もおすすめです。
湧水が流れる小径をのんびり歩きながら、前日に越えた箱根峠を思い返す——そんな贅沢な時間の使い方も、街道トレイルならでは。
「ただ歩いて終わり」ではなく、旅の終着点として町を味わうことができるのが三島泊の魅力です。
FAQ|よくある質問とヒント
Q. 登山靴じゃないと厳しいですか?
いいえ、ローカットの登山靴やトレランシューズで十分対応可能です。
畑宿〜箱根峠の区間では石畳や山道が続きますが、滑りにくくクッション性のある靴であれば問題ありません。
むしろ重登山靴はオーバースペックなので避けたほうが快適です。
Q. 小田原前泊は必要ですか?
1日で歩ききるつもりなら前泊がおすすめです。
トレイル全体で30km以上あり、朝早くから行動を始める方が余裕を持って歩けます。
小田原駅周辺にはビジネスホテルが豊富にあり、駅近でアクセスも抜群です。
Q. 途中でリタイアすることはできますか?
はい、複数のエスケープルートがあります。
箱根関所や元箱根エリアからは箱根湯本・小田原方面へのバス路線があり、無理なく引き返すことが可能です。
また、山中城跡公園からもバスやタクシーで三島市街に戻れます。
Q. 一人でも歩けますか?女性ひとりでも大丈夫?
比較的人通りのある街道ルートなので、一人でも安心して歩けます。
とくに観光エリア(甘酒茶屋・箱根関所・三島市街)は賑やかで、要所に人の気配があります。
ただし、早朝や夕方の人気(ひとけ)は減るため、時間配分には注意を。
まとめ|箱根を越えることで得られるもの
新幹線であっという間に通り過ぎてしまう箱根の山を、あえて自分の足で越えてみる。
この「箱根旧街道トレイル」は、そんな原体験のような旅を週末だけで味わえる、貴重なルートです。
30kmを超える道のりには、江戸の面影を残す石畳や茶屋、湖と峠、そして富士を望む絶景が点在し、歩くごとに旅の物語が深まっていきます。
単なる運動や観光ではなく、「現代の旅人」としての満足感がそこにはあります。
金曜夜に小田原前泊、土曜1日で箱根越え、三島で温泉と地酒に癒される——
そんな旅のスタイルは、sagasu.lifeの読者にぴったりの“ライトな冒険”です。