「せっかく高いゴアテックスのウェアを買ったのに、洗い方がわからなくてずっと放置している」「最近、雨を弾かなくなってきた気がする」……そんな悩みをお持ちではありませんか?実は、ゴアテックス製品は「汚れたら洗う」のが基本です。適切に洗濯し、熱を加えることで、驚くほど機能が蘇ります。
本記事では、アウトドア初心者の方でも失敗しない、正しい洗濯・乾燥・熱処理の全手順を解説します。自宅にある道具で実践できるメンテナンス方法をマスターして、大切なウェアを長く快適に使い続けましょう。
ゴアテックスは洗濯が必要!汚れが性能低下の原因
「ゴアテックスは洗うと機能が落ちる」と誤解している方も多いですが、事実は逆です。汚れや皮脂の付着こそが、撥水性(水を弾く力)を低下させる主な原因となります。生地の表面に汚れが付くと、水を弾くための微細な構造(撥水基)が寝てしまったり、汚れ自体が水を吸い寄せたりしてしまうためです。
また、皮脂汚れを長期間放置すると、生地の裏側のシームテープ(縫い目の防水処理)が剥がれる原因にもなります。GORE-TEX公式サイトでも、機能維持のために定期的な洗濯を推奨しています。
洗濯頻度の目安は、使用状況により異なりますが、以下を参考にしてください。
- 激しい運動や登山で使用した場合:使用のたびに洗うのが理想的です。汗や皮脂は大敵です。
- 軽い街着として使用した場合:シーズン中に数回、または汚れが目立ってきたら洗濯しましょう。
- 長期保管する前:必ず洗濯し、汚れを落としてから保管してください。
洗濯前の準備:確認すべき3つのポイント
洗濯表示タグの確認
まず最初に、ウェアの内側に付いている洗濯表示タグ(ケアラベル)を必ず確認してください。多くのゴアテックス製品は家庭用洗濯機で洗えますが、製品によっては「手洗い限定」の場合もあります。
特に確認すべきは、「洗濯桶のマーク(水温の上限)」と「乾燥機の使用可否」です。一般的に40℃以下のぬるま湯が推奨されるケースが多いですが、最新の(2026年1月時点)製品仕様に従ってください。
ジッパー・ベルクロの処理
洗濯中に生地を傷つけないよう、すべてのジッパー(ファスナー)は完全に閉めてください。フロントジッパーだけでなく、ポケットや脇下のベンチレーションも忘れずに。
また、袖口などのベルクロ(面ファスナー)も、フック部分(ギザギザした面)が露出しないよう、形に合わせてきっちりと留めておきます。これがズレていたり開いていたりすると、洗濯中に他の生地やメッシュ部分に張り付き、素材を傷める原因になります。
ポケット内の確認
ポケットの中にティッシュや行動食のゴミ、小銭などが残っていないか入念にチェックしましょう。ドローコード(裾やフードの絞り紐)は緩めておきます。最後に、生地へのダメージを最小限に抑えるため、大きめの洗濯ネットに入れることを強くおすすめします。

これは地味に重要です。筆者は初め何も考えずにポケット全開で洗濯したのですが、ポケットの中に水が溜まった状態で洗濯終了となり、洗濯機の周りが水浸しになりました。防水ウェアならではの失敗ですね。ジッパーとベルクロの確認、意外と忘れがちなので要注意です。
正しい洗濯手順(洗濯機・手洗い)
洗濯機での洗い方
ほとんどのゴアテックスウェアは洗濯機で洗えます。以下の設定を守って洗ってください。
| 項目 | 推奨設定・注意点 |
|---|---|
| 洗剤 |
液体の中性洗剤を少なめに使用。 ※市販のおしゃれ着洗剤でも洗えますが、柔軟剤成分が入っていると機能が死にます。「失敗したくない」「撥水力を最大限復活させたい」なら、専用洗剤(ニクワックスなど)を使うのが一番確実で安上がりです。 |
| コース | 「弱洗い」「手洗いコース」「デリケートコース」などを選択。 |
| 水温 | 40℃以下のぬるま湯。熱湯は厳禁です。 |
| すすぎ | 2回以上(念入りに)。洗剤成分が残ると撥水性が低下します。 |
⚠️ 絶対に使ってはいけないもの
粉末洗剤(溶け残りが詰まる)、柔軟剤(撥水性を著しく低下させる)、漂白剤、染み抜き剤、蛍光増白剤入りの洗剤(色褪せや変色の原因)。これらは機能低下や生地劣化の直接的な原因になります。
手洗いの方法
洗濯機が不安な場合や、汚れがひどい箇所がある場合は手洗いが有効です。大きめのタライや浴槽にぬるま湯を張り、規定量の洗剤を溶かします。
- ジッパーを閉めたウェアを沈め、優しく押し洗いします。もみ洗いや強く絞る動作は、生地のメンブレン(防水膜)を傷める可能性があるため避けてください。
- 汚れが落ちたら、泡が出なくなるまで水を替えて徹底的にすすぎます。洗剤成分が残留すると水漏れのような現象(浸水)の原因になるため、すすぎは最も重要な工程です。
乾燥の正しい方法
洗濯が終わったら、軽く水を切ります。通常の脱水は避けてください。防水素材は遠心力で水が抜けず、洗濯槽内で激しい偏りを生じさせ、洗濯機の転倒や故障につながる恐れがあり大変危険です。脱水する場合は短時間(30秒〜1分程度)に留めるか、脱水せずにタオルなどで水分を吸い取る方法が安全です。
乾燥は「日陰での吊り干し」が基本です。直射日光に含まれる紫外線は、ナイロンなどの生地を劣化させる要因となります。風通しの良い場所を選び、型崩れしないよう太めのハンガーを使って干してください。
この段階では、ウェアが完全に乾くまで待ちます。生乾きの状態では、次のステップである「熱処理」の効果が十分に発揮されません。
撥水性を復活させる熱処理の3つの方法
ここが最も重要なポイントです。洗濯して乾かしただけでは、撥水性は完全には戻りません。「熱」を加えることで、生地表面の撥水基(細かい毛のような構造)を立ち上がらせ、撥水機能(DWR)を再活性化させる必要があります。
1. 乾燥機を使った熱処理(最も効果的)
GORE-TEX公式サイトでも推奨されている最も効果的な方法です。ウェアが自然乾燥で乾いた後、以下の手順で行います。
- 設定:温風(低温〜中温、60℃程度まで)
- 時間:20分程度
※高温設定はシームテープを剥がしてしまう恐れがあるため避けてください。ご自宅に乾燥機がない場合は、コインランドリーの利用も検討しましょう。
2. アイロンでの熱処理
乾燥機が使えない場合の代替手段です。
- 設定:「低温」または「中温」(スチームはOFF)
- 手順:必ずあて布(手ぬぐいや薄いタオル)をして、生地の上を滑らせるようにゆっくりと熱を伝えます。ジッパーやプラスチックパーツ部分には直接アイロンが当たらないよう注意してください。
3. ドライヤーでの熱処理
部分的な撥水回復にはドライヤーも使えますが、全体に行うのはムラになりやすく手間がかかります。
- 手順:ウェアから20cm以上離して温風を当てます。一箇所に熱が集中しすぎないよう、常に動かしながら行います。
市販の撥水剤を使った追加ケア
洗濯と熱処理を行っても水弾きが悪い場合は、生地表面の撥水加工(DWR)自体が寿命を迎えている可能性があります。その場合は、市販の撥水剤を使って加工を追加しましょう。
撥水剤には主に2つのタイプがあります。
- スプレータイプ:手軽に扱えます。屋外で風通しの良い場所で使用し、ムラなく吹きかけます。摩耗しやすい肩や袖口に重点的に使うのもおすすめです。
- 浸け込みタイプ(ウォッシュイン):洗濯機や手洗いで全体に撥水成分を行き渡らせます。ムラになりにくいのが特徴です。
代表的な製品には「Nikwax(ニクワックス)」や「Grangers(グランジャーズ)」、モンベルのメンテナンス剤などがあります。いずれの場合も、撥水剤を使用した後は、製品の説明に従って乾燥・熱処理を行うことで効果が定着します。
迷ったらコレ。筆者も5年以上愛用している「失敗しない」セットです。

最近は筆者もこの商品一択です。撥水剤は浸け込みタイプ(ウォッシュイン)がムラなく仕上がって便利ですね。毎回洗濯機で使っているので、ほぼ1回で使い切りです。年間3〜4回使っている感じですが、洗濯と熱処理だけで撥水が戻らなくなったら、このセットで一気にメンテナンスしています。
ゴアテックス以外の防水透湿素材も基本は同じ
近年、ゴアテックス以外にも優れた防水透湿素材が数多く登場しています。代表的なものに「eVent(イーベント)」、「Pertex Shield(パーテックスシールド)」、モンベルの「ドライテック」、パタゴニアの「H2No」、ノース・フェイスの「FUTURE LIGHT」などがあります。
これらの素材は製造方法や透湿性能に違いがありますが、基本的な洗濯・メンテナンス方法はゴアテックスとほぼ共通しています。つまり、本記事で解説した以下の手順が適用できます。
- 液体中性洗剤を使用(粉末洗剤、柔軟剤は厳禁)
- 40℃以下のぬるま湯で洗濯
- 十分なすすぎ(洗剤残留を防ぐ)
- 日陰での吊り干し
- 熱処理で撥水性を復活(乾燥機、アイロン、ドライヤー)
ただし、素材によっては推奨される温度や乾燥機の使用可否が微妙に異なる場合があります。たとえば、Pertex Shield製品は比較的丈夫で低温設定の乾燥機も使用可能とされていますが、念のため製品タグの洗濯表示を確認してから作業することをおすすめします。
💡 ポイント
「防水透湿素材」であれば、ブランドや製品名に関わらず、洗濯の基本原則は同じです。迷ったら「液体中性洗剤・ぬるま湯・柔軟剤禁止・熱処理」を守れば、まず失敗しません。
やってはいけないNG行為
良かれと思って行ったことが、逆にウェアの寿命を縮めてしまうことがあります。以下の行為は絶対に避けてください。
- 柔軟剤の使用:最もやってはいけないNG行為です。柔軟剤の成分(界面活性剤など)が生地表面に残留し、親水性(水を吸う性質)を持たせてしまうため、撥水機能が著しく低下します。
- 粉末洗剤の使用:粒子が生地の繊維やメンブレンの微細な孔に詰まり、透湿性(蒸れを逃す機能)を損なうリスクがあります。
- 漂白剤・染み抜き剤:生地や防水膜に強力な化学的ダメージを与え、変色や機能喪失の原因になります。
- 汚れたままの長期放置:皮脂汚れが酸化し、生地やシームテープの接着剤を劣化させます。シーズン終わりには必ず洗濯しましょう。
※一部の特殊な製品(例:GORE-TEX SHAKEDRY™など表面に生地がないタイプ)は、撥水剤の使用や強い熱処理が推奨されない場合があります。必ずお手持ちの製品タグを確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q: どのくらいの頻度で洗濯すべきですか?
登山やスポーツで大量に汗をかいた場合は、使用のたびに洗うのがベストです。街着としての使用であれば、汚れが気になったタイミングや、撥水性が落ちてきたと感じた時、またはシーズン終了時の保管前に洗濯してください。
Q: 乾燥機がない場合はどうすればいいですか?
乾燥機が最も効果的ですが、必須ではありません。日陰で完全に吊り干しした後、アイロン(低温・スチームなし・あて布)をかけることで同様の熱処理効果が得られます。ドライヤーでも代用可能です。
Q: 撥水スプレーだけではダメですか?
汚れの上にスプレーしても効果は半減し、汚れを閉じ込めてしまうことになります。まずは「洗濯」で汚れを落とし、その後に「熱処理」を試してください。それでも弾かない場合に初めて撥水スプレーの使用を検討するのが正しい順序です。
それでも撥水しないなら「寿命」かも?
もし「洗濯」して「熱処理」をして、さらに「撥水剤」を使っても水弾きが戻らない場合、あるいは裏地のシームテープが剥がれてきた場合は、残念ながらウェアの寿命です。
無理に使って山で濡れると低体温症のリスクがあります。その場合は、新しい相棒への買い替えを検討してください。
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ゴアテックスウェアは決して安い買い物ではありません。しかし、「正しい洗濯」と「熱処理」という適切なメンテナンスを行えば、その性能を長く維持することができます。
「汚れたら洗う」「乾いたら熱を加える」。この2つの基本を守って、次の雨の日も快適なアウトドアライフを楽しんでください。

初めから余談です。筆者のゴアテックスレインウェア最大の失敗は、そこそこ高価なウェアで東海道踏破をしたこと…。国道の排気ガスで生地が黒ずんでしまい、洗っても落ちませんでした(泣)。その後は山用と下界用(国道を歩くときなど)に分けることにしています。高いウェアほど、用途を分けて大事に使うのが正解ですね。