「登山を始めたいけれど、装備にお金がかかりすぎる…」「とりあえずコンビニのカッパじゃダメなの?」
初めての登山準備、特にレインウェア(雨具)の購入で迷っている方は多いのではないでしょうか。山の天気は変わりやすく、時には命に関わることもあります。しかし、いきなりプロ仕様の5万円もするウェアを買う必要はありません。
この記事では、プロのアウトドアバイヤーの視点から、「初心者でも失敗しない」「上下セットで1万円台から買える」コスパ最強の登山用レインウェア5選を厳選しました。予算と機能のバランスが良い、あなたにぴったりの一着を見つけましょう。
なぜ登山にレインウェアが必要なのか?コンビニカッパとの決定的な違い
「雨を防ぐだけなら、数百円のビニールガッパでも良いのでは?」と思うかもしれません。しかし、登山においてそれは非常に危険な選択です。
透湿性がないと「汗冷え」で低体温症のリスク
人間は運動中に大量の汗をかきます。ビニールガッパは雨を弾きますが、内側の湿気(汗の蒸気)も逃がしません。その結果、ウェアの中がサウナ状態になり、インナーが汗でびしょ濡れになります。
山の上で風に吹かれると、濡れたインナーが一気に体温を奪います。これを「汗冷え」と呼び、最悪の場合は夏山でも低体温症に陥るリスクがあります。登山用レインウェアには、雨を防ぎつつ湿気を外に出す「透湿性(とうしつせい)」という重要な機能が備わっているのです。
登山用レインウェアの3つの必須機能
- 防水性:強い雨や風圧でも水を通さない力。
- 透湿性:ウェア内の蒸れ(水蒸気)を外に逃がす力。
- 耐久性・動きやすさ:岩場や藪漕ぎでも破れにくく、足を上げやすい設計。
初心者が知っておくべきレインウェアの選び方
カタログには難しい数字が並んでいますが、初心者がチェックすべきポイントは以下の3つだけです。
1. 耐水圧(たいすいあつ):雨に耐える力
生地がどれくらいの水圧に耐えられるかを示す数値です。一般的な傘の耐水圧は200〜500mm程度ですが、登山では「20,000mm以上」が目安とされています。これだけあれば、嵐のような強い雨でリュックのベルト部分に圧力がかかっても、水が染み込んでくる心配はほぼありません。
2. 透湿性(とうしつせい):蒸れを逃がす力
24時間に何グラムの水分を外に出せるかという数値です。初心者の目安は「10,000g/m²/24h以上」です。数値が高いほど蒸れにくく快適ですが、価格も高くなる傾向があります。ベタつきが苦手な方はこの数値を重視しましょう。
3. 上下セット商品を選ぶメリット
レインウェアを買いに行くと、ジャケットとパンツが別売りになっていることが多く、「思った以上に高い…」とビックリした経験がある方もいるのではないでしょうか。アウトドア専門ブランドの製品は高性能ですが、上下揃えると4万円を超えることも珍しくありません。
そこでこの記事では、「上下セット」で「信頼がおけて」「コスパが良い」商品だけを選定しました。今回紹介するモデルは、機能性を維持しつつコストパフォーマンスに優れており、1万円〜2万円台で全身の装備が整うため、初期費用を抑えたい初心者に最適です。
5モデルを徹底比較!スペック一覧表
紹介する5つのレインウェアを「価格」「耐水圧」「透湿性」「構造」「おすすめ用途」で比較しました。※価格は執筆時点の実勢価格目安です。
| 製品名 | 特徴・評価 | 価格 | 耐水圧 | 透湿性 | 構造 | おすすめ用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|
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ミズノ ベルグテックEX ストームセイバーVI
| 王道・迷ったらコレ 100洗撥水で長持ち ★★★★★ | 約1.5万円 | 30,000mm | 16,000g | 2.5層 | 富士登山・屋久島 オールマイティ |
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オンヨネ ブレステック 3L レインスーツ
| 快適性・激安 肌触りサラサラ ★★★★★ | 約1.1万円 | 30,000mm級 | 16,000g | 3層 ✓ | 汗かき・ベタつき嫌 長時間トレッキング |
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プロモンテ ゴアテックス パックライト レインスーツ
| 本物志向・実質半額 GORE-TEX採用 ★★★★★ | 約2.5万円 | GORE基準 ✓ | GORE基準 ✓ | 軽量・コンパクト | 素材重視・軽量化 本格登山 |
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キャラバン エアリファインライト レインスーツ
| 柔軟性・掘り出し物 しなやか・静音 ★★★★☆ | 約0.8〜1.6万円 | 10,000mm | 10,000g | 2.5層 | 樹林帯・低山 着心地重視 |
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ヘリーハンセン ヘリーレインスーツ
| デザイン・街兼用 最強スペック ★★★★★ | 約3.0万円 | 30,000mm | 20,000g ✓ | 北欧デザイン | 街・山兼用 フェス・通勤 |
※製品仕様は予告なく変更される場合があります。価格はサイズやカラーにより変動します。
初心者におすすめのレインウェア上下セット5選
ここからは、機能・価格・デザインのバランスに優れた、初心者におすすめの5モデルを紹介します。すべて上下セットで販売されている現行モデルです。
今回紹介するレインウェアが活躍するシーン
今回紹介したモデル(特に耐水圧20,000mm以上のもの)は、無雪期の一般的な登山であれば幅広く対応できます。
- 富士登山(3,776m):初心者の目標となる日本最高峰。雨風への備えとして十分な性能です。
- 屋久島トレッキング:雨が多い環境でも、透湿性の高いモデルなら快適に歩けます。
- 夏の北アルプス・南アルプス(一般ルート):立山、上高地〜涸沢、白馬大雪渓など、夏山の主要ルートや山小屋泊の登山に対応します。
- 八ヶ岳、谷川岳など(無雪期):2,000m級の山々の春〜秋のトレッキングに最適です。
- 低山ハイキング・高尾山・六甲山:標高1,000m以下のコースでは、オーバースペックと言えるほど安心感があります。
おすすめできない(ステップアップが必要な)シーン
一方で、以下のような過酷な環境や特殊なスタイルでは、より専門性の高いウェア(ハードシェル等)への買い替えを推奨します。
- 岩場が続く険しい縦走(槍ヶ岳・穂高岳など):鋭い岩で生地が擦れる可能性があるため、より生地が厚く頑丈なモデルが安心です。
- 厳冬期の雪山登山:アイゼンやピッケルを使う環境では、耐久性と防風性が足りません。専用の冬山装備が必要です。
- 数週間に及ぶ長期縦走:何日も雨に打たれ続ける過酷な使用では、GORE-TEX Proなどの最上位モデルの方が耐久・快適性の面で有利です。
- 沢登り:水圧や岩との接触が激しいため、レインウェアではなく専用装備が必要です。
つまり、一般的な無雪期の登山(春〜秋)であれば、今回紹介する5モデルで十分に対応可能です。「まずは安全に山を楽しむ」という初心者の目的には、これらのモデルが最適と言えます。
【王道・バランス】ミズノ|ベルグテックEX ストームセイバーVI
ミズノ ベルグテックEX ストームセイバーVIの価格を比較する
「迷ったらこれ」と言われるほどのロングセラーモデルです。特筆すべきは、約15,000円という価格破壊レベルのコスパでありながら、耐水圧30,000mm以上というプロ仕様並みのスペックを持っていること。
独自の「100洗撥水」加工により、100回洗濯しても水を弾く力が持続します。メンテナンスが楽で長く使えるため、最初の一着として圧倒的な信頼感があります。富士登山から屋久島トレッキングまで幅広く対応可能です。

東海道踏破のときにガチ山用のレインウェアで挑んでしまい、排気ガスやらなんやらで生地が駄目になってしまったんですよね(泣)。それ以来、山じゃないところを歩く時は、こちらにお世話になっています。多少雑に扱っても気にならない価格帯というのも、ロングトレイルでは心強いです。100洗撥水のおかげで、何度洗濯しても水を弾いてくれるのも長く使える理由ですね。
【快適性・激安】オンヨネ|ブレステック 3L レインスーツ
オンヨネ ブレステック 3L レインスーツの価格を比較する
実勢価格で約11,000円前後という安さながら、この価格帯では珍しい「3層構造(3レイヤー)」を採用しているのが最大の特徴です。スペックも驚異的で、耐水圧30,000mm級、透湿性16,000g/m²/24h(JIS L-1099 B-1法)と、ミズノと同等レベルの高性能を誇ります。
安価なレインウェアは「2.5層」と呼ばれる裏地のないタイプが多く、汗をかくと肌にペタペタ張り付く不快感があります。しかし、このモデルは内側にトリコット裏地があり、汗をかいてもサラッとした着心地が続きます。「この価格で3層構造なのは異常」とまで評される、汗かきの方や不快なベタつきを避けたい方にとっての「隠れた名品」です。

ミズノだと人と被りすぎる…という人にはこちらもおすすめ。友人が富士登山で使っていましたが、何の問題もなく使えていましたよ。この価格で3層構造というのも驚異的で、ミズノと同等のスペック(耐水圧30,000mm級、透湿性16,000g)で約11,000円は破格。個性を出しつつ、機能も妥協したくない方は要チェックです。
【本物志向・実質半額】プロモンテ|ゴアテックス パックライト レインスーツ
プロモンテ ゴアテックス パックライト レインスーツの価格を比較する
防水透湿素材の王様「GORE-TEX(ゴアテックス)」を使用していながら、実勢価格で2万円台半ばで購入できる驚異のモデルです。(定価は4万円以上するため、実質半額に近いお得感があります)
使用されている「GORE-TEX Paclite」は、非常に軽量でコンパクトに収納できるのが特徴。荷物を少しでも軽くしたい体力に自信のない方や、「どうせ買うなら良い素材が欲しい」という買い物上手な方におすすめです。シンプルで無駄のない設計は玄人好みでもあります。
プロモンテ ゴアテックス パックライト レインスーツ 公式ページ
【柔軟性・掘り出し物】キャラバン|エアリファインライト レインスーツ
キャラバン エアリファインライト レインスーツの価格を比較する
登山靴の老舗メーカー「キャラバン」が手掛けるレインウェアは、カッパ特有の「ガサガサ」「バリバリ」という音がしない、非常にしなやかで柔らかい生地が最大の魅力です。スペックは耐水圧10,000mm、透湿性10,000g/m²/24hと、今回紹介する中では控えめですが、その分、生地の柔軟性と動きやすさは群を抜いています。
樹林帯のトレッキングや低山ハイキングなら十分な性能を持ち、リュックを背負ったままでも腕や足が動かしやすく、ストレスを感じさせません。Amazonや楽天などのセール時期には、色やサイズによって8,000円台〜で購入できることもあるため、サイズが合えば最強の掘り出し物となります。「数値よりも着心地」を重視する方、予算を極限まで抑えたい方は要チェックです。
キャラバン エアリファインライト レインスーツ Amazon商品ページ
【デザイン・街兼用】ヘリーハンセン|ヘリーレインスーツ
ヘリーハンセン ヘリーレインスーツの価格を比較する
予算に少し余裕があり、登山だけでなく街着としても元を取りたい方には、ヘリーハンセンがおすすめです。「登山ウェア特有の派手な切り替えやダボっとしたシルエットが苦手」という方にぴったり。北欧ブランドらしい洗練されたデザインと綺麗なシルエットで、山だけでなく野外フェスや雨の日の通勤・通学にも違和感なく使えます。
価格は約30,000円と今回紹介する中では高めですが、街でも日常的に使える汎用性を考えれば、十分に元が取れる投資と言えます。しかも性能面でも妥協はありません。耐水圧30,000mm、透湿性20,000g/m²/24hと、今回紹介する5モデルの中でトップクラスのスペックを誇ります。ヨットウェアで培われた防水技術(HELLY TECH相当)がベースとなっており、見た目だけのファッションウェアではないのです。「山でも街でも浮かないデザインと、最強のスペックを両立させたい欲張りな人」に最適な一着です。
番外編:長期使用を見据えるならモンベルという選択肢
登山用レインウェアといえば「モンベル(mont-bell)」も非常に人気があります。特にフラッグシップモデルの「ストームクルーザー」や、2025年登場の新モデル「テンペスト」などは素晴らしい性能を持っています。
ただし、モンベルは基本的に「ジャケットとパンツが別売り」です。上下を揃えると、ストームクルーザーで約40,000円オーバー、テンペストはジャケット単体で約35,200円(税込)、上下セットでは約50,000円〜55,000円(税込・2026年時点)となり、初期費用はやや高くなります。
「今後5年、10年と本格的な登山を続けていく」と決めている方であれば、長期的な投資として十分に価値があります。しかし、「まずは富士登山のために」「続くかわからないけど準備が必要」という方には、今回紹介した1〜2万円台の上下セットモデルの方が、お財布への負担が少なく、最初の一歩としておすすめです。
モンベル ストームクルーザー・テンペストの特徴
ストームクルーザー:2025年から防水透湿素材が「スーパー ドライテック®」に刷新されました。透湿性は20,000~60,000 g/m²/24hと幅広いラインナップがあり、運動量の多い登山でも蒸れにくい設計。上下別売りで合計約40,000円オーバー。
テンペスト:2025年春に登場した新モデル。ゴアテックスを採用し、脇の下にベンチレーション機能を搭載。透湿性は20,000 g/m²/24hで、ジャケット単体で約35,200円、上下セットでは約50,000円〜55,000円。
どちらも上下別売りのため、「まずは手軽にセットで揃えたい」初心者には今回の5選がおすすめですが、将来的なステップアップ先として覚えておくと良いでしょう。
よくある質問(FAQ)
レインウェアは防寒着として使えますか?
はい、使えます。これを「ウィンドシェル」としての利用と呼びます。レインウェアは風を完全に遮断するため、休憩中や風の強い稜線で羽織ることで体温低下を防げます。ただし、保温性(中綿など)はないため、寒い場合は内側にフリースやダウンを着込みましょう。
洗濯すると撥水効果が落ちませんか?
逆です。洗濯しないと性能が落ちます。汚れや皮脂が生地の毛穴を塞ぐと、透湿性が失われ、撥水性も低下します。使用後は必ず洗濯表示に従って洗い(柔軟剤はNG)、乾燥機やドライヤーで熱を加えると撥水力が復活します。
サイズ選びのポイントは?
普段着よりワンサイズ大きめ、または「ゆとりあるジャストサイズ」が基本です。寒い時期には内側にフリースなどを着込む(レイヤリング)可能性があるため、パツパツのサイズだと動きにくく、空気の層が潰れて寒くなってしまいます。
まとめ:レインウェアは「お守り」。持っているだけで安心が違う
登山においてレインウェアは、使わないに越したことはないアイテムです。晴天に恵まれ、一度もリュックから出さずに下山するのが理想です。
しかし、万が一の天候急変時に、しっかりとしたレインウェアを持っているかどうかは、「不快な思い出」で終わるか、「遭難事故」になるかの分かれ道になります。今回紹介した5モデルは、どれも初心者が安心して山に入ることができる性能を持っています。
迷っているなら、圧倒的な実績を持つ「ミズノ ストームセイバーVI」か、快適性重視の「オンヨネ ブレステック3L」から選んでみてください。頼れる相棒を手に入れて、安全で楽しい登山デビューを飾りましょう!








学生時代に登山サークルの先輩から「ザック、登山靴、レインウェアだけはケチるな」と言われ、今もその言葉を心に刻んでいます。とはいえ、これから趣味で登山を始める人に何万円もするウェアを勧めるのも現実的じゃないですよね。今回は、趣味登山でコスパ重視の方向けに、1〜2万円台で買える信頼性の高いモデルを厳選しました。最初の一着選びの参考にしてください。