登山ミドルレイヤーとは?レイヤリングの基本
出典:YAMAP
登山の服装において、ミドルレイヤー(中間着)は保温性と体温調節を担う重要なレイヤーです。ベースレイヤーの上に着用し、アウターシェルの下に着ることで、体温を保ちながら汗を効率的に外部へ逃がす役割を果たします。
春夏秋の登山では、天候や標高、運動量によって体感温度が大きく変わります。例えば、朝晩の冷え込みが厳しい秋の稜線や、標高の高い夏山では、気温が10℃以下になることも珍しくありません。このような状況で快適に登山を楽しむためには、状況に応じて脱ぎ着しやすいミドルレイヤーが必須です。
レイヤリングの基本は、「汗をかきすぎない、冷えすぎない」こと。ミドルレイヤーを適切に選ぶことで、行動中の快適性と休憩時の保温性を両立できます。初心者の方は、まずフリースタイプのミドルレイヤーから始めるのがおすすめです。
ミドルレイヤーの種類と選び方
ミドルレイヤーには主に3つのタイプがあります。それぞれの特徴を理解し、登山スタイルや季節に応じて選びましょう。
フリースタイプの特徴
出典:YAMA HACK
フリースタイプは、春夏秋の登山で最も使いやすいミドルレイヤーです。通気性・速乾性・保温性のバランスが良く、行動中に着用しても蒸れにくいのが特徴。発汗量の多い登りでも快適性を保ちやすく、初心者にも扱いやすい素材です。
薄手のフリース(100〜200g/㎡程度)は、春秋の低山や夏の高山で活躍します。厚手のフリース(300g/㎡以上)は、秋の稜線や冬の低山に適していますが、春夏秋メインであれば薄手〜中厚手が汎用性が高いでしょう。
フリースのメリットは、濡れても保温性が低下しにくいこと、価格が比較的手頃なこと、そして洗濯が簡単なこと。デメリットは、風を通しやすいため風の強い稜線では別途ウインドシェルが必要になる点です。
薄手ダウン・化繊インサレーションの特徴
薄手ダウンジャケットや化繊インサレーションは、高い保温性を軽量でコンパクトに実現できるミドルレイヤーです。休憩時や山小屋での防寒着として優秀で、ザックに常備しておくと安心です。
ダウンは同じ重量でも保温性が高く、コンパクトに収納できるのが最大のメリット。一方で、濡れると保温性が著しく低下するため、雨天時や発汗量の多い行動中の着用には注意が必要です。フィルパワー(FP)が高いほど保温性に優れ、800FP以上が高品質とされています。
化繊インサレーションは、ダウンに比べて濡れに強く、価格も手頃。速乾性に優れ、行動中でも比較的着用しやすいモデルが多いのが特徴です。ただし、ダウンに比べると保温性と収納性ではやや劣ります。
ソフトシェルタイプの特徴
ソフトシェルタイプは、保温性・防風性・撥水性・ストレッチ性を兼ね備えたハイブリッドなミドルレイヤーです。フリースとアウターの中間的な位置づけで、行動中に着たまま動き続けるスタイルに適しています。
ソフトシェルは、軽い雨や風にも対応できる耐候性が魅力。ただし、完全防水ではないため、本格的な雨天時にはレインウェアが必要です。また、フリースに比べると通気性が若干劣るため、激しい運動時にはやや蒸れやすい点に注意しましょう。
アルパインクライミングやスピード登山など、動きの激しいアクティビティに向いており、中級者以上におすすめのタイプです。
春夏秋の登山におすすめのミドルレイヤー7選
ここからは、春夏秋の登山で活躍するミドルレイヤーを、フリース・薄手ダウン・ソフトシェルの各タイプから厳選してご紹介します。
パタゴニア R1エア・フルジップ・フーディ
出典:アウトドアライフ グリーンハウス
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パタゴニア R1エア・フルジップ・フーディは、通気性と保温性を高次元でバランスさせた春夏秋の登山に最適なテクニカルフリースです。ジグザグ構造の独自ニットにより、軽量でありながら暖かく、汗抜けが非常に良いのが特徴。
フルジップ仕様なので、行動中の体温調節がしやすく、フード付きで頭部の保温も可能。重量は約250〜280g程度と軽量で、コンパクトに収納できるため携行性にも優れています。価格は約26,400円(税込)※2025年10月時点。
メリット:軽量・通気性抜群・速乾性が高い・フード付きで汎用性が高い
デメリット:薄手のため保温性は中程度・価格がやや高め
おすすめシーン:春秋の縦走登山、夏の高山、トレイルランニング
モンベル クリマプラス100ジャケット
出典:モンベル公式サイト
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モンベル クリマプラス100ジャケット(品番:1106591)は、コストパフォーマンスに優れた国産フリースジャケットです。価格は約7,700円(税込)と非常にリーズナブルでありながら、保温性・通気性・速乾性をバランス良く備えています。
平均重量は約333g(Mサイズ)。素材にはポリエステル100%のクリマプラス®100を使用し、ストレッチ性に優れて動きやすく、汗を素早く外に逃がします。袖口にはサムホール付きで、手の甲まで暖められる細やかな配慮もポイント。
メリット:圧倒的なコスパ・1年中使える汎用性・丈夫で長持ち
デメリット:デザインがシンプル・やや厚手で収納性は控えめ
おすすめシーン:春秋の低山ハイキング、夏の高山、キャンプ
ザ・ノース・フェイス マウンテンバーサマイクロジャケット
出典:Goldwin Online Store
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ザ・ノース・フェイス マウンテンバーサマイクロジャケット(NL72404)は、薄手フリースの名作として長年愛されているモデルです。素材にはリサイクルポリエステル100%のバーサマイクロ100 ECOを採用し、肩部分にはナイロン100%のノーステッククロスで補強されています。
平均重量は約275g(XLサイズ)と非常に軽量で、コンパクトに収納可能。価格は約14,850円(税込)※2025年10月時点。薄手ながら保温性が高く、春秋の肌寒い時期から夏の高山まで幅広く対応できます。
メリット:軽量コンパクト・デザイン性が高い・タウンユースも可能
デメリット:薄手のため風を通しやすい・人気モデルで入手困難な場合も
おすすめシーン:春秋のトレッキング、夏の高山登山、キャンプ
アークテリクス コバートフーディ
出典:GLAGH グラフ
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アークテリクス コバートフーディは、100%リサイクルポリエステルを使用した中軽量フリースで、トレイルからキャンプまで対応できる機能性とプロテクションを備えたウェアです。平均重量は約595g(Mサイズ)とやや重めですが、その分保温性が高く、秋の稜線でも快適に過ごせます。
価格は約34,100円(税込)※2025年10月時点とプレミアム価格帯。頭全体をカバーするトリムフィットのフード付きで、保温性を重視したい中級者以上におすすめです。
メリット:高い保温性・フード付きで防寒性能が高い・耐久性に優れる
デメリット:価格が高い・やや重めで収納性は控えめ
おすすめシーン:秋の稜線登山、キャンプ、ハイキング
モンベル EXライトダウンジャケット
出典:モンベル公式サイト
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モンベル EXライトダウンジャケットは、900フィルパワーの高品質EXグースダウンを使用した薄手ダウンジャケットです。平均重量は約145〜150gと驚異的な軽さで、収納サイズは直径10×15cmとコンパクト。ザックに常備しても負担になりません。
素材には7デニールのバリスティックエアライトナイロン・リップストップを採用し、超軽量ながら耐久性も確保。価格は約17,800円(税別)※モデルにより変動。春秋の冷え込む朝晩や、夏の高山での休憩時に重宝します。
メリット:超軽量コンパクト・高い保温性・コスパ抜群
デメリット:濡れに弱い・行動中の着用には不向き
おすすめシーン:休憩時の防寒、山小屋泊、緊急時の保温着
ファイントラック ドラウトソルジャケット
出典:ファイントラック公式サイト
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ファイントラック ドラウトソルジャケット(FMM1211)は、圧倒的な速乾性を備えたソフトシェルタイプのミドルレイヤーです。繊維一本一本を立ち上げる「立毛」により、スムーズな吸水・拡散を実現した独自素材ドラウト®ソルを採用。
平均重量は約410gで、ポリエステル100%の素材を使用。価格は約24,860円(税込)※2025年10月時点。発汗量の多い登山でも肌をドライに保ち、蒸れを一気に開放できるリンクベントを装備しています。
メリット:速乾性が非常に高い・行動中でも蒸れにくい・保温性も十分
デメリット:価格が高い・やや厚手で収納性は控えめ
おすすめシーン:秋の縦走登山、冬の低山ハイキング、雪山入門
マムート アルティメットV SOフーデッドジャケット
出典:マムート公式サイト
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マムート アルティメットV SOフーデッドジャケットは、全方向に伸びる4WAYストレッチ素材を使用したソフトシェルジャケットです。平均重量は約440gで、表地と裏打ちには100%リサイクルポリエステルを使用しています。
価格は約30,000〜35,000円前後※モデルにより変動。補強ひさしと内側に2点調整システムが付いたフード、Athletic Fitで動きやすく、アルパインクライミングやスピード登山にも対応できる本格派モデルです。
メリット:ストレッチ性抜群・動きやすい・防風性と撥水性に優れる
デメリット:価格が高い・通気性はフリースに劣る
おすすめシーン:秋のアルパインクライミング、スピード登山、縦走
シーン別ミドルレイヤーの使い分け
| シーン | 季節 | おすすめタイプ | 具体的なモデル例 |
|---|---|---|---|
| 春の低山ハイキング | 3月〜5月 | 薄手フリース | モンベル クリマプラス100、マウンテンバーサマイクロ |
| 夏の高山登山 | 7月〜8月 | 薄手フリース、薄手ダウン | R1エア、EXライトダウン |
| 秋の稜線縦走 | 9月〜11月 | 中厚手フリース、ソフトシェル | コバートフーディ、ドラウトソル、アルティメットV SO |
| 休憩時・山小屋泊 | 通年 | 薄手ダウン、化繊インサレーション | EXライトダウン |
| トレイルランニング | 春〜秋 | 超軽量フリース | R1エア |
上記の表を参考に、行動スタイルと季節に合わせてミドルレイヤーを選びましょう。一着で全てのシーンをカバーするのは難しいため、まずは最もよく行く山や季節に合わせて選び、徐々にラインナップを増やしていくのが賢明です。
例えば、春秋の低山メインなら薄手フリース、夏の高山メインなら薄手フリース+薄手ダウンの組み合わせ、秋の稜線縦走ならソフトシェルや中厚手フリースがおすすめです。
ミドルレイヤーのお手入れと保管方法
ミドルレイヤーを長く愛用するためには、適切なお手入れと保管が重要です。素材別に注意点を押さえましょう。
フリースのお手入れ:フリースは基本的に洗濯機で洗えますが、ネット使用・弱水流・中性洗剤を守りましょう。柔軟剤は撥水性を損なうため避けてください。乾燥機は使わず、陰干しで自然乾燥させます。毛玉が気になる場合は、毛玉取り器で優しく処理しましょう。
ダウンのお手入れ:ダウンは専用洗剤を使用し、手洗いまたはダウン対応の洗濯機で洗います。脱水は軽めにし、乾燥機の低温設定で十分に乾燥させることが重要。不十分な乾燥はカビや臭いの原因になります。保管時は圧縮せず、通気性の良い場所で吊るして保管しましょう。
ソフトシェルのお手入れ:ソフトシェルは撥水加工の維持がポイント。洗濯後は低温でアイロンをかけるか、乾燥機で熱を加えることで撥水性が復活します。定期的に撥水スプレーで手入れすることで、機能を長持ちさせられます。
すべてのミドルレイヤーに共通するのは、使用後は速やかに乾燥させること、直射日光を避けて保管すること、そして定期的にメンテナンスすることです。これらを守ることで、数年〜10年以上愛用できるでしょう。
よくある質問(FAQ)
ミドルレイヤーは何枚持っていれば良いですか?
初心者の方は、まず薄手フリース1枚から始めるのがおすすめです。慣れてきたら、休憩時や緊急時用に薄手ダウン1枚を追加すると安心。最終的には、季節や山行スタイルに応じて2〜3枚をローテーションするのが理想的です。
フリースとダウン、どちらを先に買うべきですか?
フリースを先に購入することをおすすめします。フリースは行動中に着用でき、汎用性が高いため、初心者でも扱いやすいからです。ダウンは休憩時専用になるため、2着目以降で検討しましょう。
サイズ選びのポイントは?
ミドルレイヤーはベースレイヤーの上に着ることを想定してサイズを選びましょう。試着時は、実際に登山で着用するベースレイヤーを着た状態で確認するのがベスト。腕を上げたり前屈したりして、動きやすさを必ずチェックしてください。
夏の登山にもミドルレイヤーは必要ですか?
夏の高山登山では必須です。標高が高いと気温は低く、特に朝晩や悪天候時には10℃以下になることも。また、山小屋泊では夜間の冷え込み対策として薄手ダウンが活躍します。低山の日帰りハイキングなら不要な場合もありますが、念のため携行すると安心です。
ミドルレイヤーの寿命はどのくらいですか?
適切に手入れすれば、フリースは5〜10年以上、ダウンは10年以上使用できます。ただし、使用頻度や保管状態によって大きく変わります。毛玉や擦れ、ダウンのロフト低下が目立ってきたら、買い替えを検討しましょう。
雨の日にミドルレイヤーは着るべきですか?
雨の日は基本的にミドルレイヤーは着ません。レインウェアの下にミドルレイヤーを着ると蒸れやすく、不快になります。ただし、気温が低い場合は、薄手フリースやソフトシェルをレインウェアの下に着用することもあります。ダウンは濡れると保温性が失われるため、雨天時の着用は避けましょう。
春夏秋の登山におけるミドルレイヤーは、