この記事でわかること|奥日光の絶景ループを走る魅力と準備
「いろは坂を登ったその先に、こんな世界があったなんて――」
奥日光の名所をぐるっと一周、距離約98km・獲得標高2,300m超という本格ロングライドコース。中禅寺湖・戦場ヶ原・川俣温泉・霧降高原と、標高1,000m以上の景勝地を時計回りにめぐるルートです。
紅葉で燃える山々、湿原を渡る風、どこまでも続く高原のアップダウン。
ただ走るだけで、身体が自然と“奥日光”になっていくような感覚があります。
本記事では、この奥日光周遊ルートの全体像・立ち寄りスポット・走行のコツを、公式ルートマップと実走視点をもとに紹介します。あわせてe-bike利用や初心者向けの楽しみ方も提案します。
こんな人におすすめです
中禅寺湖に一周ルートがないので、代わりに楽しめる周回コースを探している方
ヒルクライムも景色も楽しめる「旅系ロングライド」に挑戦してみたい方
都内から輪行や車載で行ける高原サイクリングスポットを探している方
自然も文化も温泉もまるごと味わえるルートで「非日常」を感じたい方
奥日光をぐるり一周!コース概要とルートの魅力
標高差がつくる、走る“旅の展開”

スタートは東武日光駅。ここから時計回りに、いろは坂、中禅寺湖、戦場ヶ原、川俣温泉、霧降高原と巡る約98kmの周回ルートが始まります。
このコースの醍醐味は、登りと下りが交互に現れる地形のドラマ性。
前半は「いろは坂」で一気に標高1,200m級の高原へ。名所・明智平からは男体山と中禅寺湖の絶景が出迎えてくれます。
そこからは戦場ヶ原や竜頭ノ滝など、比較的ゆるやかな湿原ルートを走行。景色も道も開けていて、風を感じながらのんびり走るのに最適です。
後半は霧降高原ヒルクライム!締めにふさわしい達成感

最大の難所は後半、川俣温泉を過ぎたあたりから始まる霧降高原への登り区間。
標高差400m以上を一気に登るヒルクライムは、距離こそ短いもののじわじわ脚に効いてきます。
ここを越えて標高1,300mのキスゲ平園地まで到達すれば、あとは日光市街まで一気のダウンヒル。山と山をつなぐルートのなかに、「ご褒美」のような眺望や休憩スポットが散りばめられているのが、このコースの大きな魅力です。
モデルルート紹介|絶景とヒルクライムをめぐる奥日光一周
距離98km、獲得標高2,318m。
東武日光駅を出発し、いろは坂から中禅寺湖、戦場ヶ原、川俣温泉、霧降高原を巡る奥日光一周ルート。
登りと下りが交錯するその展開は、まさに「走る冒険譚」と言ってもいいほど。
ここでは、マイマップ上の13ポイントをたどりながら、全体の走行イメージを紹介します。
私も大好きなコースで、5月の新緑の時期や10月紅葉の時期など、計3回訪れています。
スタート〜いろは坂:神橋をくぐって、峠の世界へ

出発は【①東武日光駅】。駅前にはレンタサイクルやコンビニもあって、軽食も補給もバッチリ。
準備運動がてらのんびり走り出すと、ほどなくして朱塗りの橋【②神橋】が見えてきます。
日光の玄関口ともいえるこの橋をくぐると、「いよいよ旅が始まるな…」という気分がじわじわ湧いてきます。
そんな余韻もそこそこに、次にやってくるのが【③明智平】に向かう【④第二いろは坂】。
これがまあ、いきなりキツい。
平均5〜6%、場所によっては10%近い坂が、ヘアピンカーブとともにずーっと続きます。
しかも自転車専用レーンはなし。
車道を登るしかないのですが、幸いなことにいろは坂は上りと下りが完全に分かれていて、上りは2車線あるので、思ったよりは車に追われる感じはありません。
とはいえ、キツいものはキツい。
はじめてここを走ったときの私は、早々に「これは無理」と悟り、自転車を押して歩くことにしました。
途中で止まってはハアハア、また少し押してハアハア。展望台どころか、カーブ番号を数えるだけで精一杯でした…。
でも、登るごとに木々の隙間から差し込む光とか、眼下に広がっていく日光の街並みとか、ちょっとずつ景色が変わっていく感じがたまらなくて。
ふと耳に入ってくるロープウェイのケーブル音や、山肌に響く車の音も、なんだか「高いところに来たなあ」って感じさせてくれるんですよね。
そんなこんなで、ようやくたどり着いた【③明智平】。
ここに来ると「頑張ってよかった…!」って本当に思える。
目の前には、男体山と中禅寺湖、そして華厳ノ滝がドーンと広がっていて、まさに“ご褒美”って感じです。
ここが奥日光の入口なんだな、としみじみ実感できるスポット。
少し休んだら、展望台をあとにして中禅寺湖畔へ。
道はゆるやかに下っていて、風も気持ちいい。
そのまま流れるように、日本三名瀑の【⑤華厳ノ滝】へとたどり着きます――
中禅寺湖〜戦場ヶ原〜川俣温泉:水と森の道をつなぐ

【⑤華厳ノ滝】を過ぎると、ようやく登りから解放されて、中禅寺湖の湖畔道へ。
ここはもう、景色が最高。右手にはキラキラ光る湖面、左手には森と山、空は高くて風も涼しい。
がんばって登ってきたご褒美かと思うくらい、気持ちいい区間です。
ちょっとスピードを落としてでも、のんびり走りたい場所。
湖畔に立ち寄りたくなったら、ベンチやカフェも点在しているので、軽くコーヒー休憩を挟んでも◎。
そのまま北上して【⑥竜頭ノ滝】へ。
ここは滝そのものも見応えがありますが、「竜頭之茶屋」がまた最高で。
おぞう煮、ゆば丼、名物スイーツまでそろっていて、ついつい長居してしまいます。
滝を見ながら団子を食べる――そんな贅沢な時間、ほんとにあるんですよ。
(全然関係ない話なんですが、こないだ千葉県の養老渓谷でサイクリングしたとき、滝の近くに「ワーケーションスペース」があったんですよ。
滝の音がかなりすごくて、「これオンラインミーティング大丈夫か…?」ってちょっと思いました。笑)
続いて【⑦戦場ヶ原】に入ると、雰囲気がガラッと変わります。
視界がぐっと開けて、空が広くて、草原の真ん中を一直線に伸びる道。
山岳地帯の狭さから一転、ちょっと北海道に来たような開放感すらあります。
そして【⑧西沢金山跡】あたりから、道は再び森の中へ。
一気に人里離れた雰囲気になって、「あれ、ここ本当に合ってるよね…?」とちょっと不安になるような静けさ。
でも、この区間は本当に静かで、落ち着いていて、気持ちがすごく整うんですよね。
アップダウンも少なくて、脚にもやさしい区間です。
そうこうしているうちに、ようやく【⑨川俣温泉】へ到着。
ここで温泉につかって帰りたくなる気持ちをグッと抑えつつ、温泉街のあたたかさにほっとひと息。
間欠泉が湧き上がる音や、山の斜面に並ぶ宿の建物を眺めながら、
「まだまだ旅の途中だぞ」と、自分に言い聞かせてペダルを踏み直します。
ちなみに、川俣温泉はこのルートのちょうど中間地点。
日帰りでも走れるコースではありますが、じっくり旅を味わいたい人はここで1泊して、2日間に分けて走るプランも全然アリ。
温泉につかって、美味しいごはんを食べて、翌朝リフレッシュした脚で霧降高原のヒルクライムに挑む――そんな贅沢も悪くないと思います。
瀬戸合峡〜霧降高原〜ゴール:登って下って、旅のエンディングへ

【⑨川俣温泉】を出発すると、しばらくは森の中を進みながら、緩やかに登っていきます。
じわじわと脚にくる坂を登りきると、やがて【⑩瀬戸合峡】に到着。
深く切れ込んだV字峡谷を、吊り橋から眺められるダイナミックな景観が見どころです。
日光エリアのなかでも、ここまで来ないと見られない風景なので、ぜひ立ち寄ってみてください。
そこから再び登り基調が始まり、いよいよ今回のルート最大の難関ともいえる霧降高原へ。
まずは【⑪大笹牧場】までの登り坂。距離も斜度もなかなかですが、路肩は広くて走りやすく、ところどころで牧場の風景が視界を癒してくれます。
大笹牧場のレストハウスにはトイレ・売店・レストランがあり、しっかりした補給ポイントとしておすすめです。
ここで小休止したら、次はいよいよ最後の登りへ。
【⑫キスゲ平園地】まで標高1,300mを超えるヒルクライムが続きますが、ここまで来たらゴールは目前。
気温が一気に下がるので、防寒対策もしつつ、ゆっくり着実に登っていきましょう。
霧降のピークを越えると、あとは下り基調。
【⑬霧降の滝】を通過しながら、一気に標高を下げていきます。
長いダウンヒルはブレーキをかけ続けるため、手の疲労にも注意が必要です。
そしてついに、スタート地点の【⑭東武日光駅】に帰着。
おつかれさまでした!
近くには日帰り温泉「やしおの湯」もあるので、輪行前に汗を流してさっぱりして帰るのもおすすめです。
98kmの冒険の締めくくりにふさわしい、満足感のあるラストパートです。
実走時の注意点|山岳地帯ロングライドならではのポイントをチェック
奥日光周遊ルートは、景色も走りごたえも満点なぶん、注意すべき点もいくつかあります。
とくに標高変化が大きく、補給ポイントも限られているため、計画的な走行がカギになります。
気温差・防寒対策は必須
東武日光駅(標高約540m)から霧降高原(約1,300m)まで、一日のうちに標高差700m以上を登り下りするルート。
夏でも高原地帯は肌寒く、早朝や夕方には一気に冷え込みます。
とくに霧降のダウンヒルでは風を受け続ける時間が長く、ウィンドブレーカーがないと体温を奪われやすいです。
軽量コンパクトなモデルを携行するのがおすすめです。
- フューチャーライトトレイルピークジャケット
いろは坂は、ビビらずマイペースでいこう

このルートで多くの人が事前にビビるのが、あの有名な「いろは坂」。
特に登り専用の第二いろは坂は、平均勾配5〜6%、最大で10%前後の斜度。
しかもカーブが48連続という名物ポイント付きで、見通しが悪い箇所も多く、気持ち的にちょっと圧がかかります。
とはいえ、上りは2車線で登り専用の一方通行。車が後ろから迫るストレスは少なく、実は走りやすい部類。
ただし週末は観光バスやバイクも多くなるので、早めのスタートが吉です。
それでもキツければ、押して歩けばいいんです。
サイクリングは競争じゃないですし、自分のペースで楽しめるのが一番。
足元の景色や木々の音を感じながら進めば、それすらも味わい深い体験になりますよ。
補給ポイントは少なめ。とくに「川俣温泉〜大笹牧場」は要注意

このコースでとくに補給に注意したいのが、【⑨川俣温泉】から【⑩大笹牧場】までの約20km区間です。
アップダウンが続く山道で、自販機すら見かけない“無補給修行ゾーン”になります。
この区間に入る前に、水分と補給食をしっかり確保しておくのが鉄則。
とくに夏場は、思っている以上に水を消費するので、多めに持っていて損はありません。
補給ポイントとして頼れるのは、スタート地点の日光市街地(東武日光駅周辺)。
ここにはコンビニ・スーパー・自販機がそろっているので、ここでの買い出しが最後のチャンスと思っておくと安心です。
ちなみに、【⑧戦場ヶ原】を過ぎたあと、ルートを外れて少し直進すると、「湯滝」手前にヤマザキショップ系の小さなコンビニがあります。(湯滝レストハウス内)
このあたりでは数少ない貴重な存在なので、立ち寄るのもアリかもしれません(ただし規模は小さめです)。
さらに、川俣温泉以降は電波が入りにくいエリアも多いため、
ルートマップやGPXファイルは事前にスマホへダウンロードしておきましょう。
モバイルバッテリーは必須アイテムです!
輪行・帰路も視野に入れた行動を
ゴールの東武日光駅では駅構内に広めのトイレや待合所があり、輪行準備もスムーズです。
汗を流したい場合は、駅から自走10分ほどの距離にある「やしおの湯」がおすすめ。
営業時間は事前に要チェックです(通常10:00〜21:00、火曜定休)。
よくある質問(FAQ)|奥日光サイクリング前に知っておきたいこと
Q. 奥日光一周ルートは、どれくらいの体力が必要ですか?
全長約98km・獲得標高2,300mを超える本格派ロングライドです。
ヒルクライム区間も多く、日帰りで走り切るには中級以上の体力が必要。ロードバイクや軽量のクロスバイク推奨です。
不安がある場合は、川俣温泉で1泊するなど、2日で走るプランも検討すると安心です。
Q. どの季節がベストシーズンですか?
おすすめは新緑の5月〜6月、または紅葉の10月。
真夏は標高が高いため比較的涼しく走れますが、午後の雷雨に注意が必要です。
冬〜早春は積雪や路面凍結の可能性があり、通行止めになる場合もあるため避けましょう。
Q. 交通量が多い区間はありますか?
特に注意したいのは【④いろは坂(第二いろは坂)】と【⑩霧降高原道路】です。
観光バスやバイクが多いため、早朝スタートや平日の走行を推奨。
いろは坂は登り専用の2車線道路なので、登坂中の車の追い越しにも比較的余裕があります。
Q. 輪行で行くなら、どの駅が便利?
最寄りは東武日光駅またはJR日光駅です。どちらも輪行しやすく、駅前にレンタサイクルやコンビニも充実しています。
記事内でも紹介している【①東武日光駅】を起点にすると、スムーズにスタートできます。
まとめ|いろは坂を越えて、奥日光を一周する冒険へ
いろは坂を登り切った先に広がるのは、湖や滝、湿原、高原、そして静かな温泉街。
奥日光の名所をひと筆書きでめぐるこの一周ルートは、標高1,200mを超える本格的な高原ライドでありながら、自然の変化と地形のリズムが心地よく、走るほどに没入感が増していきます。その気になれば都内から週末を使って訪れることもできる手軽さもあり、個人的にはお気に入りルートの中でもかなり上位に入っています。
もちろん、全長約98km・獲得標高2,300m超という数字だけを見ると、身構えてしまう方もいるかもしれません。でも、焦らずマイペースで進めば、誰でもきっとたどり着ける道です。体力に不安があれば、川俣温泉で1泊して2日に分けるスタイルも大いにおすすめ。旅の途中で温泉に入る贅沢を味わえるのも、このコースならではの魅力です。
山岳エリアでは補給ポイントが極端に少なく、電波の入らないエリアもあります。だからこそ、出発前にしっかりと準備を整えておくことが何より大切。GPXデータのダウンロードや補給食の携行、モバイルバッテリーの持参など、ちょっとしたひと手間が快適な旅を支えてくれます。
都市の喧騒を離れ、森と湖と風のなかを走る時間は、きっとあなたの心に残るはず。
ぜひ一度、奥日光を一周するロングライドにチャレンジしてみてください。走り終えたとき、きっと「また来よう」と思える旅になるはずです。