初めてのSPDペダル、失敗しないための基礎知識
クロスバイクやロードバイクに慣れてくると、「もっと楽に、遠くまで走りたい」と思うようになるはずです。そんな時に導入を検討したいのが、ペダルとシューズを固定するビンディングペダルです。
中でも初心者におすすめなのが、SPD(シマノ・ペダリング・ダイナミクス)という規格です。もともとマウンテンバイク(MTB)向けに開発されましたが、ロードバイクでも幅広く使われており、通勤・ツーリング・街乗りに最適です。ロードレース用の「SPD-SL」とは異なり、以下の特徴があります。
- 歩きやすい:金具(クリート)が靴底に埋め込まれているため、カチカチ音がしにくく普通に歩けます。
- 外しやすい:固定力が適度で、とっさの時に足を着きやすい設計です。
- 両面キャッチ:多くのモデルが両面で固定できるため、足元を見なくてもペダルを捉えやすいです。
特に通勤や街乗り、グルメライドなど「自転車を降りて歩く時間」がある場合、SPDは最強の選択肢となります。まずは、自分のスタイルに合わせて「片面フラット」「両面SPD」「クリッカー」の3種類から選ぶのが基本です。
あなたはどっち?片面フラットvs両面SPDの選び方
SPDペダル選びで最も重要なのは、「普段靴(スニーカー)でも自転車に乗るか?」という点です。ここを間違えると、せっかく買ったペダルが使いにくくなってしまいます。
片面フラット(PD-EH500型)が向いている人
ペダルの片面がビンディング、もう片面が普通の平らなペダル(フラット)になっているタイプです。通勤・通学では革靴やスニーカーで乗り、週末はビンディングシューズでサイクリング、といった使い分けをしたい人に最適です。
両面SPD(PD-M520型)が向いている人
表も裏もビンディングになっているタイプです。ペダルの向きを気にせず、適当に足を乗せれば「カチャッ」とはまるのが最大のメリット。信号待ちからの発進が非常にスムーズです。「自転車に乗る時は必ず専用シューズを履く」という人には、こちらが圧倒的に楽です。
| タイプ | 片面フラット | 両面SPD | クリッカー |
|---|---|---|---|
| 代表モデル | PD-EH500 | PD-M520 | PD-T421 |
| メリット | スニーカーでも乗れる | キャッチしやすい | 軽い力で外れる |
| デメリット | キャッチ面を探す必要あり | 普通の靴だと踏みにくい | 固定力が弱い |
| おすすめ | 通勤・街乗り | ツーリング・運動 | 立ちごけが怖い人 |
【初心者の最適解】おすすめSPDペダル7選
ここからは、数あるSPDペダルの中から、初心者でも扱いやすく失敗のない7モデルを厳選してご紹介します。
1. シマノ PD-EH500:迷ったらこれ!片面フラットの決定版
シマノ PD-EH500 の価格を比較する
「初めてのSPDペダル、どれを買えばいいか分からない」という方に、まずおすすめしたいのがシマノ PD-EH500です。片面はピン付きのフラット面になっており、スニーカーでも滑りにくくしっかりと漕ぐことができます。
もう片面は「ライトアクション」という仕様のSPDになっており、通常のSPDペダルよりも軽い力で着脱が可能です。重量も383gと比較的軽量で、見た目もシンプル。ロードバイクにつけても違和感がありません。通勤からロングライドまで1台でこなしたい人の最適解です。
初心者に優しいマルチモードクリート(SM-SH56)が付属しているため、別途クリートを購入する必要がなく、届いたその日から使い始められます。
2. シマノ PD-T421(CLICK'R):立ちごけが怖い人の救世主
シマノ PD-T421 の価格を比較する
ビンディングペダル最大の恐怖である「立ちごけ」を防ぐために開発されたのが、シマノの「CLICK'R(クリッカー)」シリーズです。PD-T421は、通常のSPDペダルよりも約60%軽い力でステップイン(装着)でき、約62%軽い力でステップアウト(解除)できます。
ポップアップ機構によりペダルが靴を迎えに行くような動きをするため、はめるのも簡単。さらにリフレクター(反射板)が標準装備されており、夜間の通勤・通学でも安心です。「とにかく怖い、でも試してみたい」という慎重派の方にはこれ一択です。
マルチモードクリート(SM-SH56)が付属しており、多方向への動きで外せるため、立ちごけリスクを大幅に軽減できます。
3. シマノ PD-M520:コスパ最強の両面SPD

私が「今日は走るぞ!」という日に使っているのがこのM520です。両面キャッチがとにかく楽で、信号待ちからの再スタートでペダルの裏表を気にしなくていいのが大きいですね。普段使いのEH500(片面フラット)も便利ですが、長距離ライドでは両面SPDの方が疲れません。価格も手頃で、耐久性も抜群。最初の両面SPDに最適ですよ。
シマノ PD-M520 の価格を比較する
「スニーカーでは乗らない、サイクリング専用」と割り切れるなら、シマノ PD-M520がコストパフォーマンス最強です。実売価格で約5,000〜6,000円前後(※価格は変動します)と手頃ながら、耐久性は抜群。泥詰まりにも強い設計です。
両面がキャッチできるため、発進時にペダルの裏表を確認する必要がなく、足元のストレスが激減します。重量も380gとPD-EH500よりわずかに軽量。メンテナンスフリーで長く使えるため、世界中のサイクリストに愛用されている名品です。
※標準付属はシングルモードクリート(SM-SH51)です。初心者の方や立ちごけが不安な方は、マルチモードクリート(SM-SH56)への交換をおすすめします(別売り)。
4. シマノ PD-ME700:ワイドで安定、ケージ付きモデル
シマノ PD-ME700 の価格を比較する
SPDペダルの欠点である「踏み面の小ささ」を解消したのがシマノ PD-ME700です。ペダルの周りに「ケージ」と呼ばれる枠がついているため、シューズとペダルの接触面積が広く、パワーが逃げにくいのが特徴です。
もしクリートをはめ損ねても、ケージ部分に足を乗せて漕ぎ進めることができるため、オフロードや砂利道(グラベル)でも安心感があります。重量は540gと少し重くなりますが、足裏の安定感を重視したい方におすすめです。
※付属クリートはシングルモード(SM-SH51)です。不安な方はマルチモード(SM-SH56)への交換をご検討ください。
5. LOOK X-TRACK:シマノ以外の選択肢、プロ仕様
LOOK X-TRACK の価格を比較する
ビンディングペダルの生みの親であるフランスのLOOK(ルック)社が手掛けるSPDペダルです。LOOK X-TRACKはシマノSPDと互換性があり、シマノ用のクリートでも使用可能です(※専用クリート推奨)。
最大の特徴は、同クラスのシマノ製品よりも踏み面(シューズとの接触面積)が広いこと。これにより力が伝わりやすく、ロードバイクでのロングライドにも適しています。重量は約390g(両側)。片側あたり195gと軽量です。「シマノ以外のブランドで、ちょっと通な選択をしたい」という方にぴったりです。
※LOOK専用クリートが付属しますが、シマノSPDクリート(SM-SH51)も使用可能です。
6. Crankbrothers Double Shot 1:軽量&泥に強い
Crankbrothers Double Shot 1 の価格を比較する
アメリカのブランド、クランクブラザーズのDouble Shot 1は、デザインと機能性を両立させたモデルです。片面フラット・片面ビンディング(専用クリート)のハイブリッド仕様ながら、重量はペアで331gと、今回紹介する中で最も軽量です。
独自のビンディング構造により泥詰まりに圧倒的に強いため、雨上がりのサイクリングやキャンプツーリングでも快適に使えます。樹脂製ボディでカラーバリエーションも豊富。愛車のアクセントとして色遊びを楽しみたい方にもおすすめです。
※重要:ビンディング面はクランクブラザーズ独自規格で、シマノSPDクリートとの互換性はありません。付属の専用クリート(10°イージーリリース)を使用します。シマノSPDシューズをお持ちの方は、別途クリート交換が必要です。
Crankbrothers Double Shot 1 公式ページ
7. MKS US-S:あえての日本製、滑らかな回転性能
MKS US-S の価格を比較する
「ペダルは回転が命」と考えるサイクリストから絶大な信頼を得ているのが、日本の三ヶ島製作所(MKS)です。US-Sは独自の「分割型ビンディングシステム」を採用しており、ペダルを固定する力はしっかりしているのに、外す時の力は半分で済むという画期的な構造を持っています。
両面SPD仕様で、重量は432g。何よりベアリングの回転が非常に滑らかで、ペダルがスルスルと回ります。日本製の精密な作りと耐久性は、長く愛用する道具として所有欲を満たしてくれます。
※MKS専用クリートが付属しますが、シマノSPDクリート(SM-SH51推奨)も使用可能です。
SPDペダルを選ぶ前に知っておきたいポイント
SPDペダルを導入するには、ペダルだけでなく「シューズ」と「クリート」が必要です。失敗しないために、以下のポイントを押さえておきましょう。
クリートの種類:シングルかマルチか
シマノのSPDクリートには2種類あります。
- シングルモード(SM-SH51):かかとを外側にひねった時だけ外れます。不意に外れることが少なく、慣れた人向け。多くのペダルに標準付属しています。
- マルチモード(SM-SH56):かかとを外側、斜め上、上など多方向に動かすと外れます。立ちごけが怖い初心者にはこちらがおすすめです。別売りで購入が必要な場合があります。
シューズは「2穴」対応を選ぶ
ビンディングシューズには「2穴タイプ(SPD用)」と「3穴タイプ(SPD-SL用)」があります。今回紹介したペダルを使うには、靴底にネジ穴が2つ並んでいる2穴タイプを選んでください。「歩けるビンディングシューズ」として売られているもののほとんどがこのタイプです。

クリート選びはショップ店員さんに相談するのが一番です。私も最初は「シングルモード(SM-SH51)とマルチモード(SM-SH56)って何?」とネットで調べましたが、種類が多すぎていまいちよくわからず…。店員さんに「初心者はSM-SH56が外しやすくて安全ですよ」と教えてもらい、今もそれを使っています。登山用具同様、始めはショップ店員に頼るのが一番良いですね。
おすすめSPDペダル7選 比較表
各製品のスペックと特徴を一覧で比較できます。用途や予算に合わせて最適な一台を見つけてください。
| 製品名 | 特徴・評価 | 価格 | タイプ | 重量 | 付属クリート | 推奨用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|
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シマノ PD-EH500
| 迷ったらこれ!片面フラットの決定版 ★★★★★ | 約10,000円〜13,000円 | 片面フラット 片面SPD | 383g (両側) | ✓ SM-SH56 (マルチ)付属 | 通勤・街乗り 初心者向け |
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シマノ PD-T421 (CLICK'R)
| 立ちごけが怖い人の救世主 ★★★★★ | 約6,000円〜8,000円 | 片面クリッカー 片面フラット | 418g (両側) | ✓ SM-SH56 (マルチ)付属 | 立ちごけ不安 初心者最適 |
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シマノ PD-M520
| コスパ最強の両面SPD ★★★★★ | 約5,000円〜6,000円 | 両面SPD | 380g (両側) | SM-SH51 ※SH56推奨 | ツーリング コスパ重視 |
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シマノ PD-ME700
| ワイドで安定、ケージ付き ★★★★☆ | 約12,000円〜15,000円 | 両面SPD ケージ付き | 540g (両側) | SM-SH51 ※SH56推奨 | グラベル 安定感重視 |
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LOOK X-TRACK
| シマノ以外の選択肢、プロ仕様 ★★★★☆ | 約12,000円〜14,000円 | 両面SPD | 390g (両側) | LOOK専用 SPD互換○ | ロードバイク 通な選択 |
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Crankbrothers Double Shot 1
| 軽量&泥に強い ★★★★☆ | 約10,000円〜12,000円 | 片面フラット 片面専用 | 331g (最軽量) | 専用クリート SPD互換✕ | グラベル 軽量重視 |
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MKS US-S
| あえての日本製、滑らかな回転 ★★★★★ | 約8,000円〜10,000円 | 両面SPD | 432g (両側) | MKS専用 SPD互換○ | こだわり派 日本製 |
よくある質問(FAQ)
片面と両面、どっちが初心者向けですか?
用途によります。「スニーカーでコンビニに行きたい」「通勤でも使う」なら片面フラット(PD-EH500)が断然便利です。「サイクリング専用」なら、足元を見ずにハメられる両面SPD(PD-M520)の方が操作は簡単で初心者向けと言えます。
立ちごけしない方法はありますか?
まずは「マルチモードクリート(SM-SH56)」を使うこと、そしてペダルのバネ調整ネジを回して「最弱」の設定にすることです。また、停車する時は「左足を外す」と決めておき、ブレーキをかける前に早めに外す癖をつけるのがコツです。
クリートはどれくらいで交換すべきですか?
歩く頻度にもよりますが、週1回の使用で1年〜2年程度が目安です。「ハメにくくなった」「勝手に外れるようになった」と感じたら交換時期です。すり減ると固定力が不安定になり危険です。
ペダル交換は自分でできますか?
アーレンキー(六角レンチ)1本あれば自宅で簡単にできます。ペダルの裏側に六角穴があり、そこに工具を差し込んで回すだけです。右ペダルは時計回りで締まり、左ペダルは反時計回りで締まる「逆ネジ」なので注意してください。慣れれば5分程度で交換できます。
ペダルとシューズ、どっちを先に買うべき?
ペダルとシューズは同時購入がおすすめですが、予算の都合で片方ずつなら「ペダル→シューズ」の順が良いでしょう。片面フラット(PD-EH500)やクリッカー(PD-T421)を先に買えば、手持ちのスニーカーでも乗れるため、シューズ選びを焦らずじっくり検討できます。逆にシューズを先に買っても、ペダルがなければ使えません。
まとめ:用途別おすすめSPDペダル
初めてのSPDペダル選び、正解はあなたの「走り方」によって決まります。最後に改めて、用途別のおすすめを整理しました。
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通勤・通学、街乗りメインなら
→ シマノ PD-EH500 または PD-T421(クリッカー) - 週末のツーリング、コスパ重視なら
→ シマノ PD-M520 または MKS US-S -
グラベル、MTB、安定感重視なら
→ シマノ PD-ME700 または Crankbrothers Double Shot 1 - ロードバイクでスマートに使いたいなら
→ LOOK X-TRACK
迷ったら、まずは「片面フラット(PD-EH500)」から始めるのが最もリスクの少ない選択です。スニーカーでも乗れる安心感は、初心者の大きな味方になります。ビンディングペダルで、ペダルと足が一体になる感動をぜひ味わってみてください。

ペダル交換は、アーレンキー(六角レンチ)1本あれば自宅で簡単にできます。私も最初は不安でしたが、今では「明日は通勤だからフラット面があるEH500」「週末はロングライドだから軽量M520」といった具合に、マリオカートのキャラ変感覚(笑)でカスタムを楽しんでいます。ぜひ皆さんも、自分のスタイルに合う「最高の相棒」を見つけてください!







最初はSPD-SLで立ちごけしまくりでしたが、ショップで「初心者はSPD」と勧められ、クリッカー(PD-T421)に変えてから世界が変わりました。「かかとを上げれば外れる」安心感は絶大!今は慣れてきたので、シーンに合わせてペダルを交換して楽しんでいます。