これから山小屋泊やテント泊を始めようと考えている方にとって、ザック選びは最も重要な装備選びのひとつです。特に1〜2泊程度の登山では、40L-60Lクラスのザックが最適な容量とされています。
しかし、いざ選ぼうとすると「どのザックが自分に合っているのか」「パッキングしやすいモデルはどれか」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。私自身、初めてのテント泊装備を詰め込んだとき、荷物の出し入れに苦労した経験があります。
本記事では、パッキングのしやすさに焦点を当て、開口部の広さやアクセスのしやすさに優れた5つのモデルを厳選しました。それぞれのスペック、価格、メリット・デメリットを比較しながら、あなたの登山スタイルに最適な一品を見つけるお手伝いをします。
山小屋泊・テント泊に最適なザックの選び方
出典:FUNQ
山小屋泊やテント泊の装備は、日帰り登山と比べて荷物の量が大幅に増えます。寝袋、マット、着替え、食料など、宿泊に必要な装備を詰め込むと、あっという間にザックがパンパンになってしまいます。
そこで重要になるのが、適切な容量選びです。1〜2泊程度のテント泊や山小屋泊であれば、40L-60Lクラスが標準的な容量となります。この範囲であれば、必要な装備をすべて収納しつつ、重量バランスも取りやすくなります。
また、ザック選びで見落としがちなのが背面長の調整機能です。自分の体型に合わないザックを選ぶと、肩や腰に負担がかかり、長時間の行動が辛くなります。可能であれば、購入前に実際に背負ってフィット感を確認することをおすすめします。
さらに、レインカバーの有無やヒップベルトポケットの大きさなど、細かな機能面もチェックしておくと、実際の山行でストレスなく使用できます。
パッキングしやすいザックの3つの条件
荷物の出し入れがスムーズなザックには、いくつかの共通した特徴があります。ここでは、パッキングしやすいザックを見分けるための3つの条件をご紹介します。
1. トップとボトムの2気室構造またはU字ジッパー開口
ザック下部の荷物にアクセスしやすいことは、パッキングの利便性を大きく左右します。2気室構造のザックは、トップとボトムが仕切られており、下部の寝袋などを取り出す際に上部の荷物を全部出す必要がありません。
また、U字型のジッパー開口を備えたモデルは、スーツケースのように大きく開くため、中身が一目で把握でき、目的の荷物をすぐに取り出せます。
2. フロントパネルアクセス機能
ザックの前面から荷室にアクセスできるフロントパネル開口は、パッキングの自由度を高めてくれます。雨具やレイヤーなど、頻繁に出し入れする装備を取り出す際に、トップから掘り起こす手間が省けます。
特にテント泊では、設営時や撤収時に多くの装備を出し入れするため、この機能があるとストレスが大幅に軽減されます。
3. 大型ヒップベルトポケットとサイドポケット
行動中に頻繁に使うアイテム——地図、行動食、スマートフォン、日焼け止めなど——は、メインの荷室に入れてしまうと取り出しが面倒です。
大型のヒップベルトポケットやサイドのストレッチポケットがあれば、ザックを下ろすことなく必要なものにアクセスできます。これにより行動のテンポが良くなり、疲労軽減にもつながります。
おすすめザック5選
ここからは、パッキングしやすさに優れた40L-60Lクラスのザックを5つ厳選してご紹介します。それぞれのモデルには個性があり、登山スタイルや体型によって最適な選択肢が異なります。スペックや特徴を比較しながら、自分にぴったりのモデルを見つけてください。
1. グレゴリー バルトロ65 ー 定番の使いやすさと大容量アクセス
出典:山と溪谷オンライン
この商品を探す
グレゴリー バルトロ65は、大型バックパックの定番中の定番として、多くの登山者に支持されているモデルです。2022年リニューアルモデルは、従来の信頼性を保ちながら、さらに使いやすさが向上しています。
スペック
- 容量:60L(Sサイズ)、65L(Mサイズ)、70L(Lサイズ)
- 重量:約2,230g(Mサイズ)
- 価格:約55,000〜57,200円(税込)※2025年10月時点
- レインカバー:付属
特徴とメリット
バルトロ65の最大の魅力は、フリーフロート・サスペンションシステムによる抜群のフィット感です。背面長を調整できるため、体型に合わせて最適なポジションに設定でき、長時間の行動でも肩や腰への負担を軽減します。
大型のU字ジッパー開口により、メイン荷室への素早いアクセスが可能。また、トップとボトムの2気室構造で、下部の寝袋やマットを取り出す際も上部の荷物を崩す必要がありません。
さらに、大型ヒップベルトポケットにはスマートフォンや行動食がしっかり収納でき、サイドポケットも豊富で小物の整理がしやすいのも高評価のポイントです。
デメリット
Mサイズで約2,230gという重量は、軽量モデルと比較するとやや重めです。また、価格帯も5万円台後半と高価なため、初めての大型ザック購入には少々ハードルが高いかもしれません。
ただし、耐久性と機能性を考えれば長く使えるモデルであり、コストパフォーマンスは決して悪くありません。
こんな人におすすめ
初心者から上級者まで幅広く対応できる万能モデル。特にフィット感と快適性を重視する方や、荷物の出し入れを頻繁に行うテント泊登山をする方に最適です。
2. オスプレー イーサー55 ー フロントパネルアクセスが便利
出典:ロストアロー公式サイト
この商品を探す
オスプレー イーサー55は、フロントパネルアクセス機能を搭載し、荷物の出し入れが非常にスムーズなモデルです。週末のテント山行から2〜3泊の山小屋泊に適応する、耐久性と軽量さを両立させたバックパックです。
スペック
- 容量:55L(S/Mサイズ)、60L(L/XLサイズ)
- 重量:約2,180g(S/Mサイズ)
- 価格:約50,600円(税込)※2025年10月時点
- 対応背面長:S/M=43〜53cm、L/XL=48〜58.5cm
- レインカバー:付属
特徴とメリット
イーサー55の最大の特徴は、大型のフロントパネルジッパーです。ザックの前面から荷室にアクセスできるため、中身を一覧しやすく、目的の装備を素早く取り出せます。
エアスケープ・バックパネルにより、背中の通気性が良好で、暑い時期の登山でも蒸れにくい設計になっています。また、ストゥーオンザゴー・トレッキングポールアタッチメントで、ザックを下ろさずにポールの着脱が可能です。
さらに、女性モデルのエーリエル55もラインナップされており、女性の体型に最適化されたフィット感を提供します。
デメリット
フロントパネルアクセスは非常に便利ですが、ジッパー部分が故障すると修理が必要になります。また、価格は5万円台とやや高価です。
バルトロと比較すると、やや容量が少なめなため、装備が多い場合は余裕が少なくなる可能性があります。
こんな人におすすめ
荷物の出し入れを頻繁に行う方、通気性を重視する方、女性で体型にフィットするモデルを探している方に最適です。
3. ドイター エアコンタクトライト 50+10 SL ー 背面システムとU字開口
出典:イワタニ・プリムス公式サイト
この商品を探す
ドイター エアコンタクトライト 50+10 SLは、ドイツの老舗ブランド・ドイターが誇る高機能モデルです。エアコンタクト背面システムにより、通気性と安定性を高次元で両立させています。
スペック
- 容量:50+10L(拡張可能)
- 重量:約1,640g(女性用SLモデル)
- 価格:メーカー希望小売価格 約35,200円(税込)※実売価格は約29,900〜29,980円(2025年10月時点)
- サイズ:H76×W30×D27cm
- レインカバー:付属
特徴とメリット
エアコンタクトライトの最大の特徴は、通気性に優れた背面システムです。背中とザックの間に空間が生まれることで、汗による不快感が軽減され、長時間の行動でも快適さを保てます。
大型のU字ジッパー開口により、メイン荷室へのアクセスも容易。さらに、容量を+10L拡張できるため、荷物が多い時や冬山装備を詰める際にも対応できます。
特筆すべきは約1,640gという軽量性。他のモデルと比較しても軽く、体力に自信のない方や軽量化を重視する方におすすめです。
デメリット
背面システムが複雑な構造のため、慣れるまで調整に時間がかかる場合があります。また、SLモデルは女性用のため、男性は別モデルを選ぶ必要があります。
価格は3万円前後と比較的リーズナブルですが、耐久性に関しては長期使用でどの程度持つか、ユーザーレビューを確認することをおすすめします。
こんな人におすすめ
軽量性と通気性を重視する方、女性で体型に合ったモデルを探している方、コストパフォーマンスを求める方に最適です。
4. カリマー クーガーエイペックス 60+ ー 拡張可能な大容量モデル
出典:カリマー公式サイト
この商品を探す
カリマー クーガーエイペックス 60+は、イギリスの老舗ブランド・カリマーが手がける、拡張可能な大容量モデルです。テント泊や長期縦走に対応する機能性を備えています。
スペック
- 容量:60+L(拡張可能)
- 重量:約2,420g
- 価格:メーカー希望小売価格 46,200円(税込)※実売価格は約32,100円〜(2025年10月時点、販売店により変動)
- サイズ:H73×W35×D26cm
- レインカバー:付属
特徴とメリット
クーガーエイペックス60+の最大の特徴は、容量拡張機能です。トップリッドを調整することで容量を増やせるため、荷物が多い時や冬山装備を積む際に柔軟に対応できます。
SA(セルフアジャスト)バックシステムにより、背面長の調整が可能で、体型に合わせたフィット感を実現。また、トップとボトムの2気室構造で、下部の荷物にも簡単にアクセスできます。
価格帯が3万円台からと、他のモデルと比較してリーズナブルな点も魅力です。初めての大型ザック購入を検討している方にも手が届きやすい価格設定です。
デメリット
約2,420gという重量は、軽量モデルと比較するとやや重めです。また、販売店によって価格差が大きいため、購入前に複数のショップで比較することをおすすめします。
デザインがやや武骨なため、見た目の洗練性を求める方には向かないかもしれません。
こんな人におすすめ
荷物が多い長期縦走を計画している方、コストパフォーマンスを重視する方、容量に余裕を持ちたい方に最適です。
5. モンベル チャチャパック45 ー 日本人体型にぴったりフィット
出典:モンベル公式サイト
この商品を探す
モンベル チャチャパック45は、日本のアウトドアブランド・モンベルが手がける、日本人の体型に最適化されたモデルです。1泊2日程度の小屋泊まり登山に適した容量です。
スペック
- 容量:45L
- 重量:約1,360g
- 価格:約29,500円(税込)※2025年10月時点
- 素材:100デニール・バリスティック・ナイロン・リップストップ(ウレタン・コーティング)
- 専用パックカバー付属
特徴とメリット
チャチャパック45の最大の魅力は、日本人の体型に合わせた設計です。海外ブランドのザックはフィットしないことが多い中、モンベルのザックは背面長や肩幅が日本人向けに調整されており、快適に背負えます。
約1,360gという軽量性も大きな魅力。今回紹介した5モデルの中で最も軽く、体力に自信のない方や軽量化を重視する方におすすめです。
3Dフィットステーにより、背中に高密着でフィット。また、ザック下部への直接アクセスが可能なU字型ジッパーを備えており、寝袋などの出し入れが容易です。内部ポケットも多数配置されており、小物の整理がしやすい設計です。
価格も3万円以下と、コストパフォーマンスに優れています。
デメリット
容量が45Lと、他のモデルと比較してやや少なめです。テント泊の装備をすべて詰め込むと、余裕がなくなる可能性があります。軽量化したパッキングを心がける必要があります。
また、耐久性については長期使用での評価が分かれるため、ハードな使用を予定している場合は注意が必要です。
こんな人におすすめ
日本人の体型にフィットするザックを探している方、軽量性を最重視する方、山小屋泊メインで装備が少なめの方に最適です。
※2025年10月時点で公式オンラインストアにて販売中ですが、店舗や時期によっては在庫状況が変動する場合があります。購入前に公式サイトで最新の在庫状況をご確認ください。
5モデル比較表
ここまで紹介した5つのモデルを、主要なスペックで比較してみましょう。自分の登山スタイルや体型、予算に合わせて最適なモデルを選んでください。
| 項目 | グレゴリー バルトロ65 |
オスプレー イーサー55 |
ドイター エアコンタクトライト50+10SL |
カリマー クーガーエイペックス60+ |
モンベル チャチャパック45 |
|---|---|---|---|---|---|
| 容量 | 60〜70L | 55〜60L | 50+10L | 60+L | 45L |
| 重量 | 約2,230g | 約2,180g | 約1,640g | 約2,420g | 約1,360g |
| 価格 | 約55,000〜57,200円 | 約50,600円 | 約29,900〜29,980円 | 約32,100〜46,200円 | 約29,500円 |
| 開口部 | U字ジッパー、2気室 | フロントパネルアクセス | U字ジッパー | 2気室 | ボトムアクセス |
| レインカバー | 付属 | 付属 | 付属 | 付属 | 付属 |
| 特徴 | 抜群のフィット感、定番モデル | 通気性良好、女性モデルあり | 軽量、通気性抜群 | 拡張可能、コスパ良好 | 日本人体型、軽量 |
| おすすめ用途 | テント泊、長期縦走 | テント泊、山小屋泊 | 軽量テント泊、女性登山者 | 長期縦走、荷物多め | 山小屋泊、軽量テント泊 |
※価格は2025年10月時点の情報です。販売店やセール時期により変動する場合があります。購入前に公式サイトや販売店で最新の価格をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
40L-60Lのザックは日帰り登山でも使えますか?
使用は可能ですが、容量が大きすぎて荷物が偏ったり、重心が不安定になる可能性があります。日帰り登山には20L-30Lクラスのザックが最適です。ただし、冬山装備や撮影機材など荷物が多い場合は、40L前後のザックも選択肢になります。
テント泊と山小屋泊では必要な容量が違いますか?
はい、異なります。テント泊の場合、テント・寝袋・マット・調理器具などを持参するため、50L-60L以上が推奨されます。一方、山小屋泊であれば寝具や食事が提供されるため、40L-50L程度でも十分な場合が多いです。ただし、季節や個人の装備量によって変動します。
背面長の調整機能は本当に必要ですか?
非常に重要です。背面長が合わないザックは、肩や腰に負担がかかり、長時間の行動が辛くなります。特に大型ザックでは重量があるため、体型に合ったフィッティングが快適性を大きく左右します。可能であれば、購入前に実際に背負って調整することを強くおすすめします。
レインカバーは必須ですか?付属していない場合は購入すべきですか?
レインカバーは強くおすすめします。山の天気は変わりやすく、突然の雨に見舞われることも少なくありません。ザック内の装備が濡れると、寝袋や着替えが使えなくなり、低体温症のリスクも高まります。付属していないモデルの場合は、別途購入することをおすすめします。
軽量モデルと重量モデル、どちらを選ぶべきですか?
登山スタイルと体力によって異なります。軽量モデル(1,400g前後)は体への負担が少なく、長距離縦走や体力に自信のない方におすすめです。一方、重量モデル(2,200g前後)は耐久性とフィット機能に優れ、荷物が多い場合や長期使用を想定する方に向いています。自分の登山頻度と目的に合わせて選びましょう。
海外ブランドと国内ブランド、どちらが良いですか?
一概にどちらが良いとは言えませんが、体型にフィットするかが重要なポイントです。海外ブランド(グレゴリー、オスプレー、ドイター、カリマー)は機能性が高い一方、日本人の体型に合わない場合もあります。モンベルなどの国内ブランドは日本人の体型に最適化されており、フィット感に優れています。購入前に試着することを強くおすすめします。
まとめ
山小屋泊やテント泊用のザック選びは、登山の快適性を大きく左右する重要な要素です。今回紹介した5つのモデルは、いずれもパッキングのしやすさに優れており、それぞれに個性的な特徴があります。
- グレゴリー バルトロ65:定番の安心感と抜群のフィット感を求める方に
- オスプレー イーサー55:フロントパネルアクセスと通気性を重視する方に
- ドイター エアコンタクトライト 50+10 SL:軽量性と通気性、コスパを求める方に
- カリマー クーガーエイペックス 60+:拡張機能と大容量を求める方に
- モンベル チャチャパック45:日本人体型へのフィットと軽量性を求める方に
最適なザックを選ぶためには、自分の登山スタイル、体型、予算を明確にすることが大切です。可能であれば、購入前に実際に背負ってフィット感を確認することを強くおすすめします。
適切なザックを選ぶことで、荷物の出し入れがスムーズになり、行動中のストレスが大幅に軽減されます。これから始まる山小屋泊・テント泊の登山が、より快適で楽しいものになることを願っています。
※製品仕様は予告なく変更される場合があります。
※価格は変動する可能性があります。購入前に公式サイトでご確認ください。
※掲載情報は2025年10月時点のものです。