初詣といえば、混雑した神社に長い行列を作って参拝するイメージがあります。しかし近年、自然の中でゆったりと新年を迎える「アウトドア初詣」が注目を集めています。
朝焼けに染まる空の下、自分の足で山頂や海辺を目指し、初日の出を拝んでから神社に参拝する。都会の喧騒から離れ、澄んだ空気の中で心静かに新しい一年の始まりを感じられる時間は、何物にも代えがたい体験となるでしょう。
本記事では、関東近郊で初日の出鑑賞と初詣を組み合わせて楽しめるスポットを5つ厳選してご紹介します。登山初心者でも挑戦しやすいコースから、ロープウェイで気軽にアクセスできる場所まで、それぞれの特徴や防寒対策、アクセス情報を詳しく解説していきます。
①高尾山(東京都)|夜明けとともに参拝できる関東屈指の人気スポット

出典:三井のカーシェアーズ
標高599mの高尾山は、都心から約1時間というアクセスの良さと、整備された登山道で初心者にも人気の山です。元旦には、高尾山薬王院で行われる「迎光祭」に合わせて、多くの登山者が山頂を目指します。
初日の出の時刻は午前6時53分頃。天候に恵まれれば、山頂から霊峰富士を背景に昇る太陽を拝むことができます。山頂到着後は、薬王院へ下山して初詣を済ませるのが定番のルートです。
アクセスと登山ルート
元旦はケーブルカーが終夜運転を実施します。大晦日の深夜から運行が始まり、始発は15分間隔(混雑時は7分間隔)で運行されます。リフトは元旦午前5時から営業開始です。
登山道は1号路のみ夜間通行が可能で、それ以外のルートは安全のため通行規制が行われます。徒歩で登る場合は清滝駅から山頂まで約90分を見込んでください。ヘッドライトは必携です。
【注意点】元旦の高尾山は非常に混雑します。午前2時頃までに登山を開始すると、比較的余裕を持って山頂に到着できます。気温は市街地より5〜10℃低くなるため、防寒着・手袋・帽子の準備を忘れずに。
薬王院での初詣
高尾山薬王院は、真言宗智山派の大本山として約1,300年の歴史を持つ寺院です。元旦0時からは「新春特別開帳大護摩供」が行われ、新年の安全と開運を祈願できます。
山頂での初日の出鑑賞後、薬王院へ向かうルートは約30分の下り道。境内では温かい甘酒の振る舞いが行われることもあります(年により異なります)。
項目 | 詳細 |
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初日の出時刻 | 午前6時53分頃 |
標高 | 599m |
アクセス | 京王線高尾山口駅から徒歩5分で清滝駅(ケーブルカー乗り場) |
登山時間 | 清滝駅から山頂まで徒歩約90分(1号路) |
ケーブルカー | 元旦は終夜運転実施 |
②犬吠埼(千葉県)|日本一早い初日の出を拝む絶景岬

出典:千葉県公式観光サイト ちば観光ナビ
千葉県銚子市の関東最東端に位置する犬吠埼は、山頂・離島を除き日本で一番早く初日の出を見ることができるスポットとして知られています。2025年の初日の出時刻は午前6時46分頃です。
白亜の犬吠埼灯台を背景に、太平洋の水平線から昇る朝日は圧巻の美しさ。荒磯に打ち寄せる波の音とともに新年の訪れを感じられる、海好きにはたまらないロケーションです。
アクセスと観覧スポット
最寄り駅は銚子電鉄の「犬吠駅」で、駅から犬吠埼灯台まで徒歩約10分です。JR銚子駅から銚子電鉄に乗り換えて約20分でアクセスできます。
元旦の未明から初日の出にかけて、周辺道路では交通規制が実施されます。車でアクセスする場合は、事前に銚子市の公式情報を確認し、余裕を持って現地に到着することをおすすめします。
おすすめの観覧スポットは、犬吠埼灯台前園地と君ヶ浜しおさい公園です。どちらも海岸線に面しており、遮るものなく初日の出を眺めることができます。
【防寒対策】海辺は風が強く、体感温度がかなり下がります。防風性の高いアウター、ネックウォーマー、耳当てなど、風対策を万全にしてお出かけください。
周辺の初詣スポット
犬吠埼周辺には、渡海神社や愛宕神社など、歴史ある神社が点在しています。初日の出鑑賞後に徒歩圏内で初詣を済ませることができます。
また、銚子駅周辺には飯沼観音(飯沼山円福寺)があり、関東最東端の観音霊場として多くの初詣客が訪れます。銚子電鉄で移動すれば、観光と初詣を組み合わせた充実した元旦を過ごせるでしょう。
項目 | 詳細 |
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初日の出時刻 | 午前6時46分頃(平地で日本一早い) |
アクセス | 銚子電鉄「犬吠駅」から徒歩約10分 |
観覧スポット | 犬吠埼灯台前園地、君ヶ浜しおさい公園 |
注意事項 | 元旦は交通規制あり、強風・防寒対策必須 |
③三浦富士〜武山ハイク(神奈川県)|海越しの初日の出と山頂神社参拝

出典:三浦半島日和
三浦半島の丘陵地帯に位置する三浦富士(標高183m)と武山(標高200m)を巡るハイキングコースは、海と山の両方を楽しめる初日の出スポットです。
三浦富士の山頂には浅間神社奥宮が、武山の山頂には武山不動が祀られており、初日の出鑑賞と初詣を一度に叶えることができます。東京湾、相模湾、房総半島、そして天候が良ければ富士山まで見渡せる大パノラマが魅力です。
ハイキングルートとタイムスケジュール
一般的なコースは、京急長沢駅または津久井浜駅をスタート地点とし、三浦富士→砲台山→武山と巡る約5〜6kmのルートです。登山道は整備されており、初心者でも歩きやすいコースとなっています。
元旦に初日の出を見る場合、日の出時刻は午前6時50分頃。登山口から三浦富士山頂までは約40分かかるため、午前5時30分頃までに登山を開始するのが理想的です。
夜間登山となるため、ヘッドライトは必携。登山道は明瞭ですが、念のため事前に地図アプリなどでルートを確認しておくと安心です。
山頂での初詣
三浦富士山頂の浅間神社奥宮は、富士山信仰に基づく神社で、古くから地域の人々に親しまれてきました。山頂の小さな祠ですが、初日の出とともに参拝すれば、清々しい気持ちで新年を迎えられるでしょう。
武山山頂の武山不動は、展望台のある広々とした山頂に位置し、初詣の参拝者で賑わいます。山頂には水道施設やトイレもあるため、休憩しながらゆっくりと景色を楽しめます。
項目 | 詳細 |
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初日の出時刻 | 午前6時50分頃 |
標高 | 三浦富士183m、武山200m |
アクセス | 京急長沢駅または津久井浜駅から登山口まで徒歩約5〜15分 |
登山時間 | 登山口から三浦富士山頂まで約40分、三浦富士から武山まで約30分 |
難易度 | 初心者向け(登山道整備済み) |
④筑波山(茨城県)|ロープウェイ利用で安心の夜明け登山

出典:Mount Tsukuba
「西の富士、東の筑波」と称される筑波山(標高877m)は、関東平野を一望できる人気の山です。元旦には関東平野で最も早い初日の出を見ることができ、その時刻は午前6時44分頃とされています。
筑波山の大きな魅力は、元旦の早朝からケーブルカーとロープウェイが特別運行されること。登山に自信がない方や、小さなお子様連れでも気軽に山頂からの初日の出を楽しむことができます。
早朝運行と山頂へのアクセス
2025年元旦のケーブルカー・ロープウェイは、午前4時30分が始発です。初日の出のピークまでは臨時便も含めて10〜20分間隔で運行されるため、比較的スムーズに山頂へアクセスできます。
男体山頂へはケーブルカー、女体山頂へはロープウェイでアクセス可能。どちらの山頂からも素晴らしい初日の出を眺めることができますが、女体山頂の方がやや標高が高く、より広い視界が得られます。
【混雑対策】元旦の筑波山は大変混雑します。ケーブルカー・ロープウェイに乗るために長時間待つ可能性があるため、午前3時台には現地に到着しておくことをおすすめします。駐車場も早朝から満車になりやすいため、公共交通機関の利用も検討してください。
筑波山神社での初詣
筑波山の麓には、筑波山神社が鎮座しています。男体山と女体山をご神体とする古社で、縁結び、夫婦和合、家内安全のご利益があるとされています。
初日の出鑑賞後、ケーブルカー・ロープウェイで下山し、神社で初詣を済ませるのが定番のコースです。境内には樹齢800年を超える杉の巨木もあり、厳かな雰囲気の中で新年の祈りを捧げることができます。
項目 | 詳細 |
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初日の出時刻 | 午前6時44分頃(関東平野で最速) |
標高 | 男体山871m、女体山877m |
アクセス | つくばエクスプレス「つくば駅」からシャトルバス約40分 |
ケーブルカー・ロープウェイ | 元旦は午前4時30分から早朝運行 |
片道料金 | 大人750円、小児380円(往復料金もあり) |
⑤榛名神社(群馬県)|雪景色の神域で心静かに初詣

出典:アソビュー!
群馬県高崎市の榛名山中腹に鎮座する榛名神社は、1,400年以上の歴史を持つ関東屈指のパワースポットです。冬季は境内が雪に覆われることも多く、神秘的な雰囲気の中で初詣を楽しむことができます。
初日の出スポットとしてではなく、静寂な冬の神域でゆっくりと参拝したい方におすすめの場所です。元旦の早朝から参拝可能で、厳かな空気の中で新年の祈りを捧げることができます。
榛名神社の見どころ
参道入口の随神門から本殿まで、巨岩や奇岩に囲まれた約700mの参道が続きます。みそぎ橋、三重塔、神門、双龍門と、見どころが点在し、歩くだけでも心が洗われるような体験ができるでしょう。
本殿は巨大な御姿岩に接するように建てられており、その圧倒的な存在感は一見の価値があります。火産霊神(ほむすびのかみ)と埴山姫神(はにやまひめのかみ)を祀り、鎮火、開運、五穀豊穣、商売繁盛のご利益があるとされています。
アクセスと冬季の注意点
JR高崎駅西口から群馬バス「榛名湖行き」に乗車し、「榛名神社前」で下車(所要約70分)。バス停から徒歩約15分で随神門に到着します。車の場合は、関越自動車道高崎ICまたは前橋ICから約60分です。
冬季は積雪や凍結の可能性があるため、スタッドレスタイヤやチェーンの装着が必要です。参道も滑りやすくなるため、防滑性のある靴を履き、足元に十分注意して歩いてください。
【服装のポイント】榛名山中腹に位置するため、高崎市街地よりも気温が低くなります。厚手のダウンジャケット、帽子、手袋、カイロなど、万全の防寒対策で参拝しましょう。参道は自然の中を歩くため、トレッキングシューズやスノーブーツが理想的です。
項目 | 詳細 |
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所在地 | 群馬県高崎市榛名山町849 |
アクセス | JR高崎駅からバス約70分「榛名神社前」下車徒歩15分 |
車でのアクセス | 関越道高崎IC・前橋ICから約60分 |
参道距離 | 随神門から本殿まで約700m |
冬季の注意 | 積雪・凍結の可能性あり、防寒・防滑対策必須 |
自然の中で迎える新年の清々しさ
混雑した都会の神社から少し足を伸ばせば、自然の中で静かに新年を迎えられるスポットが関東近郊にはたくさんあります。冷たく澄んだ空気、朝日に照らされる山並み、波の音とともに昇る太陽――。そうした自然の営みに身を置くことで、日常では得られない清々しさや感動を味わうことができるでしょう。
今回ご紹介した5つのスポットは、それぞれに異なる魅力を持っています。登山やハイキングが好きな方には高尾山や三浦富士、気軽にアクセスしたい方には筑波山や犬吠埼、神秘的な雰囲気を求める方には榛名神社がおすすめです。
防寒対策と事前のリサーチをしっかり行い、安全第一で新年のスタートを切ってください。アウトドア初詣という新しいスタイルで、特別な元旦をお過ごしください。
よくある質問(FAQ)
元旦の初日の出登山で必要な装備は何ですか?
夜間登山となるため、ヘッドライトは必携です。防寒着(ダウンジャケット、フリース)、手袋、帽子、ネックウォーマーなどの防寒具も必須です。靴は防滑性のあるトレッキングシューズを選び、カイロや温かい飲み物も持参すると良いでしょう。また、スマートフォンの予備バッテリーも忘れずに。
混雑を避けて初日の出を見るにはどうすればいいですか?
高尾山や筑波山などの人気スポットは、日の出の1〜2時間前には山頂が混雑します。午前2〜3時台には登山を開始するか、現地に到着しておくことをおすすめします。また、三浦富士〜武山のような比較的知名度の低いスポットを選ぶのも一つの方法です。
初日の出登山に登山初心者が挑戦しても大丈夫ですか?
高尾山や三浦富士は登山道が整備されており、初心者でも挑戦しやすいコースです。ただし、夜間登山は昼間とは異なるリスクがあるため、可能であれば経験者と一緒に登ることをおすすめします。筑波山はケーブルカー・ロープウェイを利用すれば登山不要で山頂にアクセスできるため、登山に不安がある方に最適です。
犬吠埼は登山なしで初日の出を見られますか?
はい、犬吠埼は平地のため登山の必要がありません。銚子電鉄「犬吠駅」から徒歩約10分で犬吠埼灯台に到着できます。ただし、海辺は風が非常に強いため、防風性の高いアウターや耳当てなどの防寒対策をしっかり行ってください。
元旦の公共交通機関は動いていますか?
多くの路線で元旦も運行していますが、通常とダイヤが異なる場合があります。高尾山へのケーブルカーや筑波山のロープウェイは元旦の早朝運行を実施しますが、鉄道やバスは事前に各交通機関の公式サイトで時刻表を確認してください。特に深夜〜早朝の時間帯は本数が少ないため、余裕を持った計画を立てましょう。
雪が降った場合、登山は中止すべきですか?
積雪や凍結が予想される場合、アイゼン(簡易軽アイゼンでも可)の装着を検討してください。特に榛名神社や筑波山は標高が高く、積雪の可能性があります。天候が荒れている場合や視界不良の場合は、無理をせず中止する判断も大切です。安全第一で行動しましょう。