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信越トレイルガイド|原生林と湿原をつなぐ110kmの道

信越トレイルは、日本初の本格ロングトレイルとして誕生した全長110kmの道。ブナ林、湿原、峠越えを歩きながら、人と自然のつながりを感じられる奥深いルートです。あまとみを歩いた人にこそ届けたい、“歩くことの意味”に出会えるトレイル。
目次
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この記事でわかること|自然の中で歩く“次の一歩”を探している人へ

あまとみを歩いて、「次はもっと自然の中へ」と思ったあなたに

信越トレイル
出典 : s-trail.net

峠道や宿場町をつなぐ“あまとみトレイル”を歩いて、ロングトレイルの魅力に目覚めた——
そんな人にこそ、次に紹介したいのが信越トレイルです。

長野県と新潟県の県境を縦走する全長110kmのこのルートは、ブナの原生林や峠、湿原、段丘集落といった、より“自然の深さ”を感じられるフィールド。
歩くスタイルも、全線スルーから2Days、日帰りまで多様に選べるので、経験値やスケジュールに合わせて無理なく楽しめます。

このガイドでわかること

  • 信越トレイル全体のルート概要と歩き方のバリエーション

  • 初心者でも楽しめるセクション3選

  • あまとみトレイルとの違いとつながり

  • アクセス、宿泊、装備などの準備情報

  • はじめての信越にぴったりな歩き方のヒント

信越トレイルは、歩く人のスタイルを選ばずに受け入れてくれる、懐の深いロングトレイルです。
「もっと自然の中に入り込んでみたい」と感じたら、その気持ちを次の一歩につなげてくれる道がここにあります。

信越トレイルってどんな道?

長野と新潟の県境をたどる、全長110kmの縦走ルート

出典 : s-trail.net

信越トレイルは、長野県の斑尾山から新潟県の天水山(苗場山の外縁)まで、約110kmにわたって続くロングトレイルです。
全体のルートは、関田山脈の尾根沿いをたどる形で設計されており、標高900〜1,200mの稜線を中心に、ブナ林・峠道・湿原・棚田の風景が次々と現れます。

「ただ自然の中を、静かに歩きたい」という人にはぴったりの道で、喧騒から離れた環境のなか、五感を開いて自然と向き合う体験ができます。

トレイルは「セクション」と呼ばれる10の区間に分かれており、フルスルーから一部区間だけのハイクまで、自分に合った歩き方を選べるのも特徴です。

地形のバリエーションと“歩きごたえ”が魅力

出典 : s-trail.net

信越トレイルの魅力は、歩くほどに風景が変化していくこと。
ある区間では森の回廊をひたすら進み、またある区間では峠の稜線を歩きながら遠くの山並みを望む。
さらに先に進むと、段丘地形や湿原、高層湿原の山岳地帯へと移り変わっていきます。

それでいて、全体的に登山道ほど急峻ではなく、トレイルとしての“歩きごたえ”と“歩きやすさ”のバランスがとれているのもポイント。
地形も整備も“過酷すぎない”ちょうどよさがあるので、初めての縦走にも選びやすいコースといえます。

どこから歩く?|全線/2Days/セクションの歩き方

フルスルーハイク(全線踏破)|6泊7日で信越を縦断

信越トレイルの魅力を丸ごと味わいたいなら、全線約110kmを歩くスルーハイクがおすすめです。
標準的な行程は6泊7日。1日あたり15〜20km前後のペースで、関田峠から天水山(または逆)へと進みます。

宿泊はテント泊・民宿・ロッジなどを組み合わせることが可能で、バックパックスタイルで歩き通す人もいれば、荷物配送サービスを活用して軽装で歩く人も
事前のルート設計と宿泊確保が重要になりますが、「自分の力で道をつないだ」という達成感は格別です。

2Daysプラン|週末で歩ける静かなセクションを選ぶ

まとまった休みが取れない人には、1泊2日で歩けるセクションハイクが最適です。
例えば「関田峠〜森宮野原」や「野々海峠〜小赤沢」などは、信越らしいブナ林や峠歩きを楽しみつつ、無理のない行程で自然と向き合えるルートです。

途中に民宿がある区間も多いため、装備も軽くできて安心。
一度に全部は歩けなくても、少しずつつないでいく楽しさがあります。
「まずは雰囲気を味わってみたい」という人にもおすすめのスタイルです。

日帰り・区間ハイク|入門編としてもおすすめ

もっと気軽に信越の空気に触れてみたい人には、日帰りで歩ける短距離区間も用意されています。
たとえば斑尾山〜万坂峠、鍋倉山周辺、野々海湿原などは、登山に近い感覚で気軽にアクセスできるルートです。

公共交通や車でのアクセスが可能なセクションもあり、時間や体力に応じたアプローチがしやすいのも魅力。
まずは1日、自然の中を歩いてみて、「ここならもう少し歩けそう」と思ったら、次の一歩につなげてみてください。

おすすめの見どころセクション3選

Section5-6|関田峠〜野々海峠:信越トレイルの“王道風景”

出典 : s-trail.net

信越トレイルのなかでも特に人気が高いのが、関田峠から野々海峠にかけての区間です。
標高1,000m前後のなだらかな尾根道が続き、深いブナ林に包まれた静かな稜線歩きを堪能できます。

起伏も少なく、足元はふかふかの落ち葉。森の音と自分の足音だけが聞こえるような、“歩くこと”そのものに集中できるトレイル体験が味わえます。
信越の雰囲気を感じるにはここ、という定番ルートです。

アクセスは関田峠に車かタクシーで入り、日帰りまたは1泊2日でのセクションハイクが可能。
ブナ林のなかで静かに深呼吸したい人におすすめです。

Section8-9|森宮野原〜小赤沢:棚田と段丘がつなぐ“里の風景”

出典 : s-trail.net

森宮野原〜小赤沢にかけてのエリアは、信越トレイルのなかでも文化や暮らしの香りが残る区間
ブナ林から一転、段丘の集落や棚田が広がる田園風景が見えてくるのがこのセクションの魅力です。

標高差があるぶんアップダウンは多めですが、山と里がつながるような風景は、歩きながらもどこかほっとするものがあります。
途中には秋山郷や小赤沢温泉などもあり、歩いたあとに“癒される”拠点が近いのもこのエリアならでは。

自然と文化のバランスが心地よく、信越トレイルのなかでも変化に富んだセクションです。

天水山〜苗場山(延伸区間)|天空の湿原をたどる“ご褒美ルート”

出典 : naeba-geo.org

信越トレイルの終点(または起点)である天水山から先、苗場山へと続く延伸ルートも見逃せません。
このエリアは標高2,000mを超える高所帯で、季節によっては高山植物が咲き、広大な湿原が空とつながるような絶景が広がります。

登山の要素が強くなりますが、歩ける人にはぜひ足を延ばしてほしいご褒美区間。
信越らしい静けさに加えて、「登った先の開放感」や「山のごちそう」的な魅力も楽しめます。

特に紅葉の時期や夏の晴天日は、ここだけを歩く日帰りプランでも満足度は抜群です。

信越とあまとみの違いをざっくり比較

自然重視の信越と、文化重視のあまとみ

出典 : s-trail.net

信越トレイルとあまとみトレイルは、どちらも“ロングトレイル”というカテゴリに属しながら、歩いて感じる風景の性格がまったく異なります。

信越は、長野と新潟の県境に沿ってブナ林や稜線を縫うように進む「自然の道」。
人里離れたエリアを長く歩くため、静けさと没入感があり、「自然とじっくり向き合いたい」という人に向いています。

一方あまとみは、峠道や古道をたどりながら、集落や宿場町、温泉地を結んでいく「暮らしの道」。
人との出会いや歴史文化に触れられる場面が多く、「文化や人とつながりながら歩きたい」人におすすめです。

難易度や装備、歩き方にも違いあり

どちらが上という話ではなく、歩くスタイルや目的に応じて選ぶと、ロングトレイルの奥行きをより深く楽しめます
両方を歩くことで、日本の道の多様性が立体的に見えてくるのも、面白いところです。

比較項目信越トレイルあまとみトレイル
メイン環境稜線、ブナ林、湿原、段丘峠道、古道、宿場町、集落、温泉
距離と構成約110km/10セクション約120km/15の峠越え+宿場町
宿泊スタイルテント泊・民宿・ロッジを組み合わせ地元宿泊施設と連携、全日宿あり
装備の違い熊鈴・防寒・水確保が重要荷物軽量化がしやすく、装備も控えめでOK
難易度中級者向け区間もあり(特に山域部)初心者〜中級者向け

歩く準備|アクセス・宿泊・装備まわりの基本

スタート地点とアクセス方法を事前にチェック

出典 : s-trail.net
斑尾高原にあるビジターセンターは信越トレイルの拠点の1つ。

信越トレイルは斑尾山または天水山を起点・終点として歩くのが一般的ですが、セクションハイクの場合は関田峠や森宮野原、野々海峠などからも入山可能です。

  • 斑尾山側:最寄は「飯山駅」。バスまたはタクシーで斑尾高原へアクセス可能。

  • 天水山側(苗場山方面):津南駅または森宮野原駅が拠点。タクシーまたは宿の送迎を利用。

  • セクション入口:関田峠、牧峠、野々海峠などは車・タクシーアクセスが基本。

全体的に公共交通だけでのアクセスはやや不便な場所も多く、事前に送迎可の宿を探しておくと安心です

宿泊と補給は「区間ごとの計画」がカギ

信越トレイルでは、テント泊と宿泊施設のミックスが一般的です。
公式ルールによりキャンプは指定地のみ可となっているため、無計画なビバークや野営はNG。

一方、民宿やロッジも各区間に点在しており、宿泊しながらセクションをつなぐスタイルも人気です。
また、補給ポイントは限られているため、飲料や行動食は基本的に事前準備が必要。自販機や売店はあまり期待できません。

連泊の場合は宿によって荷物の配送や食事提供も対応可能なので、必要に応じて事前に問い合わせておきましょう。

信越ならではの装備ポイント

出典 : bunarock.jp

信越トレイルを歩く際に特に意識したい装備は以下の通りです。

  • 熊対策グッズ(熊鈴・ベアスプレー):出没情報があるため必携。単独行や早朝行動時は特に注意を。

  • 登山靴:基本的に山道なのでスニーカーでは厳しく、ミッドカット以上の登山靴が望ましい

  • 防寒着とレインウェア:標高1,000m以上の区間が多く、夏でも朝晩冷える。天候急変への備えも必要。

  • 地図アプリ+紙地図:YAMAP対応。圏外区間もあるため、紙の地図も併用を。

  • 水の確保:水場がない区間が多く、1〜2リットルは常時携行したい。予備のボトルや浄水アイテムがあると安心。

特にスルーハイクや山岳寄りのエリアを歩く場合は、“登山装備寄りの構成”で臨む意識が重要です。
あまとみのような「町が近いトレイル」とは違い、信越では山の中に自分を置く覚悟と準備が求められます。

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信越トレイルQ&A|初心者が気になる4つの疑問

Q. 初心者でもスルーハイクできますか?

体力に自信があれば可能ですが、1日15〜20km前後を7日間歩く体力と、宿泊・装備計画の立案力が求められます。
不安がある場合は、まずは2Daysやセクションハイクから始めるのがおすすめです。実際、多くのハイカーが段階的にステップアップしています。

Q. 熊は本当に出るんですか?

はい、信越トレイル沿線ではツキノワグマの目撃情報が毎年あります
熊鈴の携行と、早朝や夕方の単独行動を避けるなど、基本的な対策は必須。
念のため、ベアスプレーや匂いの強い食材の管理にも注意しましょう。

Q. いつの時期に歩くのがベスト?

ベストシーズンは6月中旬〜10月中旬
・6〜7月:新緑と残雪のバランスが美しい
・8〜9月:高原の夏、草花も豊富
・10月:ブナの黄葉が見頃。紅葉トレイルとして人気
それ以外の時期は、残雪や積雪で一部通行不能になるリスクがあります。

Q. ソロでも歩けますか?

はい、信越トレイルはソロでも歩きやすいロングトレイルです。
道標やマップ整備がしっかりしており、GPS地図を併用すれば迷うことも少ないです。
ただし、携帯圏外の区間や人の少ないセクションもあるため、万が一に備えた行程管理と緊急連絡手段の確保は忘れずに。

まとめ|“もう一歩先のロングトレイル”を信越で体験しよう

信越トレイルは、あまとみトレイルでロングトレイルの魅力に出会った人が、次に踏み出す一本としてぴったりの道です。
全長110kmの縦走路には、ブナの森、峠、湿原、段丘といった変化に富んだ風景が続き、自然のなかを静かに歩く時間が深く残ります。

「ちょっとだけ歩いてみたい」人にも、「全線をつないでみたい」人にも、それぞれに合ったスタイルで楽しめるのが信越の良さ。
そして、どのルートを選んでも、その先にはきっと、自分の足でしかたどり着けない景色があります。

あまとみが“人と文化をつなぐ道”だとすれば、信越は“自然と自分をつなぐ道”
2本を歩いてはじめて、日本のロングトレイルの奥行きが見えてくる——
そんな体験を、次の週末からはじめてみませんか。

※このブログでは、コースの詳細や見どころをあえて控えめに紹介しています。
はじめてその景色を見たときの「わっ…!」という感動を、できるだけそのまま味わってもらいたいから。
ルートの存在だけ知って、「あとは自分の体験で完成させる」――そんな旅のきっかけになれば嬉しいです。