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関東で楽しむサイクルトレイン:初心者におすすめの路線ガイド

関東エリアでは、自転車を列車にそのまま持ち込める「サイクルトレイン」のサービスが充実してきています。「サイクルトレイン」とは、自転車を折りたたんだり分解したりすることなく鉄道車両にそのまま持ち込めるサービスのことで​、サイクリング初心者でも気軽に遠方のサイクリングスポットへアクセスできると人気です。ここでは関東の代表的なサイクルトレイン対応路線を紹介します。小湊鐵道や秩父鉄道といったローカル線の魅力と、自転車持ち込み方法、沿線のおすすめスポット、初心者向けアドバイスを路線ごとにまとめました。休日のプチ旅行やアウトドア計画の参考にしてみてください。
目次

秩父鉄道:荒川渓谷と長瀞を巡る山間部ローカル線

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秩父鉄道

埼玉県の秩父鉄道は、羽生駅(埼玉県北部)から秩父市の三峰口駅まで全長71.7kmを結ぶ私鉄路線です。秩父盆地を東西に横断し、沿線には自然豊かな荒川渓谷や歴史ある秩父の街並みが広がります。秩父鉄道では埼玉県と協力して「ちちてつサイクルトレイン」というサービスを実施しており、自転車を解体せずそのまま電車に持ち込めるのが大きな特長です。特別なイベント列車ではなく定期列車で実施されており、事前申込や追加料金も不要です。

自転車の持ち込み方法

秩父鉄道サイクルトレインは通年利用可能(除外日あり)で、平日と土日祝で利用可能区間が異なります

  • 平日:波久礼駅~三峰口駅間

  • 土日祝:御花畑駅~三峰口駅間(長瀞駅や親鼻駅など一部除外)

利用可能時間帯も設定されており、日中の限られた時間のみ自転車の持ち込みが可能です。自転車は先頭車両の指定エリアに乗せ、係員の案内に従います。持込料金は無料(乗車券のみでOK)で、1人1台まで。なお、SLパレオエクスプレスや急行電車では利用できない点に注意しましょう。長瀞駅や三峰口駅にはフロアポンプが設置されており、万が一の空気不足にも対応できます。

沿線のおすすめスポット

秩父鉄道沿線は見どころ満載。特に人気なのが長瀞エリアです。岩畳と呼ばれる特別天然記念物の岩盤は、雄大な渓谷とセットで楽しめる絶景スポット。春の桜や秋の紅葉など、四季折々の風景も魅力です。ライン下りも体験でき、日常を離れた癒しの時間を過ごせます。

終点の三峰口駅からは、バスで三峯神社へアクセス可能。途中の浦山口駅では、浦山ダムとその周辺の自然を楽しむサイクリングもおすすめです。御花畑駅周辺には秩父神社や温泉施設「祭の湯」があり、観光とリラックスの両方を満喫できます。

グルメも豊富で、わらじカツ丼やみそポテトなど秩父名物がサイクリストの胃袋を満たしてくれます。長瀞では天然氷のかき氷や川沿いの蕎麦も人気です。

初心者向けアドバイス

初めて利用する際は、対応区間の確認を忘れずに。サイクルトレインは駅によって対応状況が異なるため、事前に公式サイトで確認すると安心です。

秩父地域は山がちで、ルートによってはアップダウンが激しいことも。初心者は、荒川沿いの比較的平坦なコースや、交通量の少ない道を選ぶのが安心です。長瀞から親鼻あたりはゆったりとした川沿いの道で、初心者でも楽しめます。一方、三峰口方面に向かう国道140号はトンネルのある山道なので、電車での移動と組み合わせて無理のない旅程を。

秩父は都心よりも気温が低くなる日もあるため、防寒具や雨具の準備も忘れずに。サイクルトレインは途中下車・再乗車も可能なので、状況に応じて走る区間を調整しながら、安全で快適なライドを楽しんでください。

関東鉄道:茨城の平野を走るローカル線でサイクリング

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関東鉄道

茨城県の関東鉄道は、首都圏近郊を走るローカル私鉄で、常総線と竜ヶ崎線の2路線を有しています。どちらもサイクルトレインサービスを提供しており、自転車を解体せずにそのまま持ち込めるのが特長です。常総線では水海道〜大田郷間の各駅で、平日9:30〜14:30に利用可能。竜ヶ崎線は全線で設定時間帯に持ち込みできます。追加料金不要・一人1台までOKとあって、筑波山や霞ヶ浦周辺へのサイクリング拠点としても活用できます。

自転車の持ち込み方法

常総線のサイクルトレインを利用するには、水海道〜大田郷間の中間駅からの乗車が必要です。取手駅や下館駅からは直接利用できないため、輪行で水海道まで移動後、そこで袋から出して乗車というスタイルになります。

竜ヶ崎線はJR佐貫駅に接続する短い2駅の路線ですが、全線で自転車持ち込み可能。どちらの路線も予約不要・無料で、気軽に利用できますが、混雑時には持ち込みを断られる場合もあるため注意が必要です。車内では**「自転車優先区域」に停める決まり**があり、乗務員の指示に従って安全に利用しましょう。車内やホームで自転車にまたがらない、手でしっかり支えるなど、基本マナーも大切です。

沿線のおすすめスポット

常総線沿線は、筑波山や利根川水系の河川に囲まれたのどかな関東平野の風景が広がります。なかでも人気なのが、下妻市付近から取手方面へと続く小貝川サイクリングロード。全長約40km、高低差がほとんどないフラットなコースで、初心者にも安心です。春には土手沿いに菜の花や桜が咲き、景色も爽快。途中の「小貝川ふれあい公園」ではトイレや水道、自販機もあり、休憩にも最適です。

筑西市・下館駅周辺は、レトロな商店街や地元グルメが楽しめるスポット。しもだて銘菓や梨・メロンなどのフルーツが名産で、サイクリングの合間に街歩きもおすすめです。

一方、竜ヶ崎線の終点・竜ヶ崎駅周辺は昭和レトロな駅舎と鰻の名店が魅力。ふっくらと香ばしい鰻重は、サイクリング後のご褒美にぴったりです。また、JR佐貫駅周辺の牛久沼や牛久大仏も有名。文化と自然の両方が楽しめるエリアです。

常総線・竜ヶ崎線ともに、首都圏から1時間ほどでアクセスできる穴場サイクリングエリアとして注目されています。

初心者向けアドバイス

関東鉄道のサイクルトレインを活用する際は、行きと帰りのルート設計を工夫しましょう。車でのアクセスが可能なら、ゴール地点に車をデポしてスタート地点まで自転車で戻る方法も便利です。車がない場合でも、片道サイクルトレイン+片道サイクリングというプランで楽しめます。

たとえば朝に下妻駅まで向かい、そこから常総線に乗って水海道駅へ。そこから小貝川沿いをゆったり下妻方面へサイクリングすれば、景色も楽しめて負担も軽減されます。常総線の利用時間帯(9:30〜14:30)を超えると持ち込み不可になるため、復路は輪行袋の準備を忘れずに。

また、長距離になると疲労も蓄積します。こまめな休憩、水分補給、そして夏場の日焼け対策も大切です。途中にある道の駅や直売所で特産のジェラートや地元野菜を楽しむのも、旅の醍醐味。無理なく、自分のペースで、茨城の広大な自然と空の下でのんびりサイクリングを楽しんでください。

JR東日本「常磐線サイクルトレイン」(上野~土浦):都心から湖畔のサイクリングへ

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土浦駅

JR東日本では近年、首都圏発着のサイクルトレインサービスを積極的に展開しています。中でも注目を集めているのが、常磐線サイクルトレインです。2024年6月から本格導入され、東京の上野駅と茨城県土浦駅を結ぶ特定列車で、自転車を解体せずにそのまま持ち込めるようになりました。「輪行のハードルが下がる」として、多くのサイクリストから支持を集めています。

自転車の持ち込み方法

常磐線サイクルトレインは土休日限定で運行されており、対象は上下各2本の指定普通列車です。

  • 下り:上野発7:02・7:53(土浦行き)

  • 上り:土浦発17:00・17:28(上野行き)

途中駅での乗降はできず、上野駅と土浦駅の間のみ利用可能です。
事前予約が必要で、JR東日本の専用サイトから申し込みます。追加料金は不要で、運賃のみで利用可能ですが、車両は14号車・15号車に限定され、1車両につき最大5台までという制限があります。

自転車は車内のベルトなどで乗客自身が固定する仕組み。朝早くに東京を出発し、夕方に戻るダイヤ構成なので、日帰りサイクリングに最適です。

沿線のおすすめスポット

土浦駅に到着したら、まず立ち寄りたいのが駅直結の「PLAYatre(プレイアトレ)土浦」。レンタサイクル、シャワー、更衣室、カフェがそろった日本最大級のサイクリング拠点施設です。東京からたった49分でアクセスでき、出発・帰着の拠点として非常に便利です。

ここから向かうのは、「つくば霞ヶ浦りんりんロード」。霞ヶ浦湖畔には、一周約90kmのサイクリングコースが整備されています。風が穏やかな日は、湖面が鏡のように美しく、筑波山や夕焼けが映り込む絶景が楽しめます。

湖の半周(約50km)コースや、霞ヶ浦総合公園周辺をゆるく巡るプランもおすすめ。道の駅では、レンコンカレーやレンコンサブレなどのご当地グルメも味わえます。

さらに体力に余裕があるなら、旧筑波鉄道跡を走るサイクリングロードを北上し、筑波山麓まで足を伸ばすのも良いでしょう。信号が少なく走りやすく、終点からは登山やロープウェイ利用も可能です。平坦ルートからヒルクライムまで自由に組めるのが土浦エリアの魅力です。

初心者向けアドバイス

このサイクルトレインを利用する際は、指定列車の本数が少ないため時間厳守が大切です。朝の上野発列車は早めの時間設定なので、駅には余裕を持って到着しましょう。上野駅では、14号車・15号車付近からの乗車になるため、事前に乗車位置も確認しておくと安心です。

帰りも時間が決まっているため、無理のないルート設計を心がけましょう。乗り遅れた場合は輪行袋での帰路となるため、輪行袋の携帯もおすすめです。

また、初めて霞ヶ浦を走るなら、風向きにも注意を。湖は開けた地形のため、追い風と向かい風では体力の消耗に大きな差が出ます。出発前に風予報をチェックし、追い風を活かしたルート設定も一つのテクニックです。

最後に、ヘルメット着用・ライトや反射材の装備といった安全対策も忘れずに。電車で気軽にアクセスできる土浦発のサイクリング旅、ぜひ思いきり楽しんでください。

JR東日本「B.B.BASE」:房総エリア専用サイクルトレイン

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B.B.BASEは見た目もかっこいい

JR東日本が週末限定で運行する「B.B.BASE(ビー・ビー・ベース)」は、自転車旅専用に改造された特別列車で、千葉県の房総エリア各地へアクセスできます。列車内にはサイクルラックが備えられており、自転車を固定したまま座席に座って移動できるのが大きな特長です。まさに「走る自転車基地(Bicycle Base)」という名にふさわしいサービスで、2018年にデビューしました。出発駅は東京都の両国駅で、コース別に館山・鴨川・銚子・鹿島方面などへ向かいます。

自転車の持ち込み方法

B.B.BASEは全席指定の臨時列車として、週末や連休を中心に運行されます(季節により運休あり)。予約はJRの公式サイトや旅行会社を通じて行い、指定席券(840円・自転車持ち込み込み)を購入します。出発駅の両国駅では、通常閉鎖されている3番線ホームからの乗車になるため、当日は時間に余裕をもって行動しましょう。

運行ルートは複数あり、たとえば以下のようなコースが人気です:

  • 内房コース(館山方面)

  • 外房コース(鴨川方面)

  • 銚子コース

  • 佐原・鹿島コース

いずれも朝に出発し、夕方に折り返す日帰り行程。車内では自転車をラックに掛け、スタッフの案内に従って安全に固定します。6両編成すべてがサイクリスト向けの設計になっており、床は滑りにくく、座席もグループ向けに会話しやすいレイアウトです。2025年春には暖房設備の修繕を終え、再び運行が再開予定です。

沿線のおすすめスポット

B.B.BASEの魅力は、目的地での多彩なサイクリング体験にあります。たとえば、館山方面へ向かう内房コースでは、フラワーラインを南下しながら野島埼灯台や沖ノ島などの絶景スポットを巡るのが人気。真冬でも温暖で、1〜3月は菜の花畑が春の景色を演出します。

外房コースでは、太平洋の海岸線を走りながら鴨川シーワールドや鯛の浦などを訪れることができます。坂道はありますが、高台からのオーシャンビューが爽快です。

佐原・鹿島コースは、小江戸の街並みや香取神宮参拝など歴史を感じるコース。利根川沿いの桜並木や鹿島神宮の神秘的な森も見どころです。

銚子方面では、関東最東端の犬吠埼灯台へ。99段の階段を登ると、大海原を一望できる絶景が待っています。周辺には醤油工場見学や温泉もあり、タイミングが合えば銚子電鉄のサイクルトレインイベントにも参加可能です。

初心者向けアドバイス

房総半島は広く、無理のない距離でルートを計画することが大切です。目安としては、初心者は50km以内、中級者でも100km以内が理想。午前中にサイクリング、午後は早めに観光や温泉でゆったり、というプランなら余裕を持って楽しめます。

また、B.B.BASEは日帰り前提の列車なので、天気予報の確認は必須。悪天候時は無理せずキャンセルする判断も大切です(予約券は払い戻し可能な場合あり)。輪行袋を携帯するのもおすすめで、万が一B.B.BASEに乗れなかった場合に備えておくと安心です。

実際に利用した人からは、「同じ趣味の人と会話がはずむ」「列車内でサイクル情報を交換できる」といった声も。B.B.BASEは移動そのものがイベントのような体験になる特別な列車です。事前にコース情報や立ち寄りスポットを調べておけば、充実した房総サイクルトレインの旅が待っています。

小湊鐵道:里山を走るローカル線で房総を満喫

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小湊鐵道は昭和な感じ

小湊鐵道(こみなとてつどう)は、千葉県市原市の五井駅から夷隅郡大多喜町の上総中野駅までを結ぶ全長39.1kmのレトロなローカル鉄道です。ディーゼルカーがのんびりと里山を走り抜け、田園風景や四季折々の自然美を楽しめます。春には菜の花、秋には紅葉と、沿線には写真映えする風景が広がり、カメラ片手に訪れる鉄道ファンも多数。

なかでも飯給駅(いたぶえき)は、ガラス張りの「世界一広いトイレ」があることで有名。桜と菜の花が駅を彩る季節には、ローカル線と里山の絶景が調和した風景を楽しめます。終点の上総中野駅では、いすみ鉄道に接続しており、ルートを延ばせば房総半島を横断するサイクリング旅も可能です。

自転車の持ち込み方法

小湊鐵道は専用のサイクルトレインサービスは実施していませんが、輪行(自転車を解体して袋に収納)すれば通常列車に持ち込み可能です。本数は1時間に1本程度と少なめなので、混雑を避けた平日日中や休日の午前中がおすすめ。

起点の五井駅はJR内房線と直結しており、輪行袋に収めておけばスムーズな乗り換えが可能です。ローカル線ゆえに駅ホームが狭い箇所もあるため、ホーム上では袋を開けずに安全に移動しましょう。

沿線のおすすめスポット

自然と歴史が楽しめる小湊鐵道沿線。なかでも人気なのは養老渓谷(ようろうけいこく)。紅葉の名所として知られ、滝や温泉も楽しめる景勝地です。上総大久保駅〜養老渓谷駅付近には、明治時代の素掘りトンネルが点在しており、岩肌むき出しのトンネルを抜ける冒険気分のサイクリングが味わえます。

飯給駅では前述のトイレを訪れてみるのも一興。さらに、上総中野駅からいすみ鉄道で大多喜方面へ足を伸ばせば、大多喜城(本多忠勝の居城跡)などの史跡散策も楽しめます。

グルメ面では、養老渓谷名産のゆば料理や、大多喜名物のタケノコ料理といった、里山ならではの味覚もサイクリストに人気。自然と文化、食が調和するのが小湊鐵道の魅力です。

初心者向けアドバイス

サイクル旅を計画する際は、列車の本数に要注意です。とくに帰りの便は夕方以降に本数が減るため、あらかじめ時刻表をチェックしておきましょう。駅間を移動しても電車が無い…という事態を防ぐためにも、余裕をもったスケジューリングがおすすめです。

また、沿線エリアはコンビニや飲食店が少ないため、出発前に飲料や補給食を用意しておくと安心です。道中は起伏こそあるものの、急な坂道は少なく、交通量も少なめ。田園や森林の中を走る県道は、初心者でも快適に走れるコースです。

心地よい里山の風景の中、自分のペースでのんびり楽しむサイクリング旅。小湊鐵道は、そんな一日を過ごすのにぴったりな鉄道です。

まとめ

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電車にそのまま乗せられる

関東のサイクルトレイン対応路線を中心に5つご紹介しました。どの路線も鉄道の旅とサイクリングの良いとこ取りができるプランばかりです。自転車を担いで遠出するのはハードルが高い…と感じていた初心者の方も、サイクルトレインを活用すれば快適かつ効率的にサイクリングスポットへアクセスできます。まずは日帰りで気になる路線を試してみて、景色やグルメを楽しみながら走る喜びを体験してみてください。旅先での新しい発見や出会いが、きっとあなたのサイクリングライフを豊かにしてくれるはずです。各鉄道会社の公式サイトで最新情報を確認しつつ、安全第一でサイクルトレインの旅を満喫しましょう。